03-04  そういえば気が付いてますか? 実はコメディタグが随分前から消し飛んでるんですよ

「えっとだな、ピリカと結婚するために色々あーだこーだやってたら横槍が入って魔力根こそぎ持ってかれて人生が詰みかけてるんだぜ」

「もちょっと説明頑張ってくれんか?」

「うっす!! 頑張りますっ!! ……って言ってもどこから話せばいいのか……」


 なんやかんやで食事を済ませたわしらは、話が話なので一度宿に向かいグレイスの話を聞くことになった。……と、いうかそうせざるを得なかったのじゃ。

 話を聞く以前にグレイスの体がかなり不味い状態になっておって説明どころじゃなかったのじゃ。魔族は魔力が枯渇すると石化し休眠状態に入るのじゃが、それが起きる一歩手前だったのじゃ。よほど何も食べていなかったのだろう、グレイスは麦粥を食べるので精一杯だったことを考えるとこれはわしらが思っている百倍やばいかもしれないのう! なんでこうなったんかのう!?

 賢者とセルバの魔力の施しによってなんとか持ち直したグレイスは笑っておるものの、空気感とは裏腹に“それそのノリでいっていいほど気軽じゃねえよなぁ!?”という空気が濃くなる。

 ともかく事情を知らなければ始まらない。話を聞くとしよう、とクリスが一番根本的な疑問を投げかけた。

 

「そもそもなんでピリカ様だったんだ?」

「運命の出会い……ってトコロかな……!」


 それはそれとしてこいつなんか腹立つのう!!!!!


『パスカル王、終わったらお気に入りのジャム出しますから。ほら、深呼吸深呼吸』

「うぐぐ……う、うむ、よい、よい。わしは大丈夫じゃから詳しく申せ、な?」


 わかる……わかるぞ……とセルバちゃんに背中をヨシヨシされる、セルバちゃんも殴り飛ばしたいのを我慢しておるのじゃ。わしも堪えねば。

 一方、グレイスは時折咳き込みながらも目を輝かせてピリカとの出会いの話をし始める。その思い出はグレイスにとって本当に大切なのじゃろう、その様子はさながら宝物を親に自慢する幼い子供のようじゃった。

 

「数年前、魔界から抜け出してこっちに遊びに来たら迷子になっちまったことがあってさ。人間には悲鳴あげられるし、場所全然わかんないしで一人での垂れ死ぬかも……って思ったその時に声をかけてくれたのがピリカだったんだ」

「やっぱりそういう人なのか、ピリカ様って」

『あの方生き方そのものがかっこいいところありますからね、パスカルからダメな部分全部取っ払って良い部分極振りしたかのような方ですから。うぅん、解釈一致です』

「賢者の言い方はともかく、まぁ、そういうことならまぁ、わからなくはないがのう……それで、その、お主とピリカちゃんは縁があったのじゃな」

「あぁ、めちゃくちゃな人だったけどかっこよくてさぁ! なんていうか、キラキラしてるっていうか……とにかく綺麗でカッコよくて可愛くて!」

『惚れちゃったんですね』

「そう! 実家まで送ってくれて、それからもたまに遊びに来てくれててさ〜色んなこと教えてくれて、そっからどんどん好きになっちゃって……えへへへ」


 頬を赤らめて恥ずかしがるグレイスの愛らしさはともかく、ピリカの行動に関しては確かにそれらしい覚えがあった。ピリカはとにかくお転婆で、プルガリオの騎士姫と呼ばれるほど多くの武勇を立ててきた。じゃからまぁ、実際のところお城でお淑やかに慎ましく……というタイプではないのじゃわしの娘は。そんなあの子は城を抜け出すのも日常的じゃったし、なんやかんやであの子が外から持ち帰る冒険譚を楽しみにしているわしも確かにいたからのう。

 そのピリカが語った話の中に、確か“魔族の小さな女の子を助けた”というものを聞いたことがあったのを思い出す。りんごのように真っ赤な髪で、わしらに似て星色の目をした愛らしい女の子を家まで送ってきたのじゃと。友達になったから、“たまに遊びに行ってもいいか?“と聞かれてその時のわしはそれくらいなら……と深く考えずに“いいぞ”と答えたのじゃったか。

 しかし待て、女の子って話じゃなかったか? あれ? わしの覚え間違い?


「あ、俺生まれの性別は女の子だったんだぜ。だからピリカが遊びにきてくれてた時はまだ女の子だったぜ!」

「そうかそうか、うん???? え??? わしの耳壊れたかのう」

「いやセルバにも女の子だと聞こえたぞ」「僕も同じく」

「「「……????????」」」

『あぁよくあることですよ。魔族に厳密な性別はありませんし、魔力ですぐに変化できますからね。毎日気分で変わる方も多いんですよ』

「魔族ってなんでもありなんだな……。それで、グレイスは……その、ピリカ様と結婚したくて男の姿になった、ってことでいいのか?」

「そうだぜ!! 女の姿でもいいかなって思ったんだけど、せっかくならピリカが言ってた王子様にお姫様抱っこされるっていう夢を叶えたかったんだ」

「それは、……あぁ、……悔しいがわかるのだ。ピリカよ、わかるぞ……それは確かにわかる……」

 

 あ、本格的にわしこの子のこと怒れなくなってきたかもしれん……え、お前……もしかしていい子……!?

 いや、いやいや実際誘拐した疑惑はあるしあんな手紙はよこすしもう少しよく聞くのじゃパスカル、落ち着くのじゃパスカル。

 

「それで、今年になって正式に魔王の玉座を引き継いだから魔力で体をいじって男になったんだ。これで次城にピリカが遊びに来たところで告白しよう……っ! ……って思っていたんだけどな、」


 目に見えてわかるほど肩を窄めてグレイスは顔を俯かせた。言葉からは塩のような悔しさが滲み、ぎゅっと小さな両の手を握る。その仕草だけで彼/彼女は本気だったことが窺えた、遊びや勢いではなかったのじゃろう。ピリカが、というところには親としては不服ではあったがそれでも胸が痛んだ。この子はこの子なりにピリカのことを想っているのだろう、その尺度が在り方が人間のそれとは感覚が違うだけで方角は同じ場所を向いている。

 

「ピリカが城に遊びに来て、いざ話をしよう! って時に何かが城に侵入してきて……」


 あっという間だった、と彼/彼女は語る。

 瞬きの間に全てが切り伏せられ、次に息を吸う頃には片腕が吹き飛んでいたと。


「黒い騎士みたいなやつだった」

『侵入者は一人だったのですか?』 

「あぁ。俺だって目を疑ったさ」


 死に物狂いで戦った。

 そうしなければみんな死んでしまう、それだけは本能がわかっていた。

 

「全然ダメだったんだけどな。歯が立たなかったとか、そういうんじゃなくて。……俺多分何やってもこいつに勝てねーなって、そういう、ほら、あるだろ? あれだったんだ」


 きつかったなぁ、とグレイスは消えいる声でため息をつく。想像を絶する相手だったのだろう、吐息からは感情がまぜこぜになったかのような湿気りがあった。しかしそれは圧倒的な力に潰された無力さや絶望からくるものではなく、おそらくは……。


「頭が潰される寸前のところでさ。ピリカが、……自分を差し出したんだ」

「っ……!」


 ……あぁ、あのバカ娘。

 やっぱりやりおったか。

 

「あのひと本当、そういうとこあるよな。そういうことさせたくなくて、そばに居たかったのにさ。本当にさ……めちゃくちゃだよな……」


 魔王城を襲った黒い騎士は、ピリカの行動にようやく剣を収めたのだという。そうしてグレイスは気を失い、意識が戻った頃には生き残った魔族たちの手によって魔王城から連れ出されていたらしい。

 魔王として引き継いだはずの魔力は根こそぎ奪われ、守るべき人に守られる形で彼は首の皮一枚の状態で生き延びた。

 

「本当は俺が頑張らなきゃいけなかったのに、気がついたらこれだ。魔王の魔力もぶん取られて魔王の座も奪われちまった、しかも城の魔力からもパスが切れちまってる。今の俺は……なんでもないただの出涸らしの魔族だ」


 悔しくてたまらないのだろう。

 守れなかったことも、庇われたことも、生き延びたことも。あぁ、どうりでそこまでギラついているわけだ。

 お前、

 

「それから魔界から脱出した時にみんな散り散りになっちまって、色んなところを転々としてさ。そしたら今度は魔の針たちがおかしなことし始めてるって話を聞いたんだ」

「花嫁に送るためのアクセサリー作りのこと、だよな」

「あぁ。魔の針たち俺、っていうか魔王族専属の職人軍団なんだけど……でも俺はそんなこと頼んでない、絶対だ。っていうか人の命絞ってできた素材とか宝石とかピリカが絶対嫌がるだろ!? なんであんな気持ち悪いもの発注してんだよなんで魔の針もノリノリで作ってんのさ!! 俺だって頼まれてもつけないぜ!? 俺が変とか、そういうんじゃないよな……?」

「いやうん至極真っ当だと思うよ、僕もやだよ。その感性大事にしてね」

「だよなぁ!! だよなぁ!!?」


 つまり。

 魔の針がいう魔王は、今目の前にいるグレイスではなく恐らくその黒い騎士を指しているということになる。そしてあの発端となった招待状は黒騎士がグレイスのふりをして出したものだろう、なぜそんな風にこちらを挑発するような真似をしたのかは分からないが現状を鑑みてもそう単純な話ではなさそうだ。

 

「ってことは、今の魔王は別人で魔の針はそれに気がついていないっていう話になるのか。そんなことあるのか……? 上司間違えるか?」

「……あり得る、と思うのだ。魔力の恩恵を強く受ける種族は魔力の質で人を判断する、魔力を奪われたとなれば質も上書きされている可能性が高いのだ。誤認するのもおかしくはないのだ」

『セルバ様のいう通りあり得ますね。特に魔族はその最たる存在、気分で姿を変えられる存在だからこそ魔力の質を重要視します。魔力の強奪による成り上がりやなり代わりはそう珍しい話ではありません、それが魔王で起きたというのは珍しいことですが……えぇ、通りますねこれは』


 そうか、とセルバは考えているようじゃった。気持ちはわかる、事情が見えてくると視界がどんどん広がって自分の気持ちとは別に理性が問題を見ようとする。自分の気持ちと、現状の問題と。なすべき事の焦点が合わさっていくにつれ、一度噴き出た怒りのやり場が確かな方角へと向いていく。


「止めようとはしたんだぜ。でも、俺じゃ歯が立たなかった。残ってた魔力もどんどんなくなって、結局ここまで体が縮んじまった。……んでも勝てないからって諦めるわけにはいかないだろ? ここに友達がいること噂を聞いて高空域……“スカイブルーマウンテン“を調査してたんだ」

『ここ最近話題に上がっている高空域の浮遊島ですね、あーなるほどそういうことですか』

「友達って、どんな子なんだ?」

「【メルク】。まぁメルクって俺が名付けたんだけど、魔の針で手芸を担当してるやつなんだ。魔の針の中でも一番なかよくてさ、いかれた連中ばっかだけどあいつはまともだよ。……あいつなら、話を聞いてくれるんじゃねえかって思ってたんだ」

「でも結果は違ったんだな」

「……あぁ。なんか普通に負けたわ! まぁ、俺がこんな状態だったのもあるけどよ。あんな強かったかなぁ……!?」


 メルクを説得しようにも、スカイブルーマウンテン空域に自生する空の魚に襲い掛かられて話どころではなかったらしい。


「それで魚に食われて? あの広場に落ちてきたと」

「はい……本当情けないばかりで……すんません……」

「……まぁ、うん、生きててよかったね」


 クリスが思わずといった様子でグレイスの肩に手を乗せる。そこだけギャグみたいなこと起きとるが、実際体がミンチになってもおかしくはなかったわけじゃしな。しかしふとグレイスはクリスの顔を見て、何か違和感を感じたのか不思議そうに首を傾げておった。


「……あれ? ……ちょ、っといいか? ……」

「ん、僕の顔がどうしたんだよ」

「いや、気のせいか……。わりいなんでもない」


 煮え切らない様子でグレイスはかぶりを降ると、「ともかく長くなったけどこんな感じなんだ」と向き直る。

 

「あの黒騎士、偽魔王を倒してくれとまでは言わねえ。ピリカを助けるのに手を貸してくれ! 全部終わったら俺を殺してくれて構わない、だけどあの人だけは何がなんでも助けなきゃいけないんだ。頼む……っ!」


 命を捧げる、と迷いなくグレイスは告げた。その重さは言葉だけでは収まらない、こんなに幼い姿であっても彼は確かに魔王なのだ。それが自分の命を捧げて、本来敵対しなければならない勇者に向けて頭を下げた。なりふり構わない態度にパスカルは目を見開いた。彼の態度はそれほどに重く、決してうわ辺だけの行動ではなかったのだ。

 ――本気だ、こいつは本気でピリカのためになんだってする。

 冷や汗が背を叩く、彼が真っ当な感性の持ち主でよかった。もしそうでなかったら本気でこの世界が危ういぞ……!!


「正気か?」


 そう、クリスが問いかけるほどに。

 

「魔王/俺にそれを聞くか?」

「……、そう、だったな」


 重苦しい沈黙が流れる。同じ方角は確かに向いている、パスカルだってピリカを助けるためにこの姿になったのだ。クリスも勇者として選出された、何かしら事情を抱えているようだが魔王を倒すための意志は確かにある。セルバは黒騎士の魔王によって森を潰されかけ大切な親友を失った、その報復のために立ち上がった。確かに方角は同じだ。目的は一致している、だが。


 彼の命を捧げる覚悟を、受け止める覚悟がこちらにあるか?

 本当に?


 重い。喉が潰されるほど重い沈黙、……それを破ったのは意外なことにセルバだった。


「――あぁ〜〜〜〜もう!! もう! そういうのはやめるのだっ! 命を軽率にかけるなこのおばかっ!」

「うええ!? だ、だって本当に何も持ってないんだぜ!? 資産とか金とか今マジでなんもねえし、っていうか無一文だし! 一番価値あるものっていたら俺の首だろ……?」

「そういう問題じゃないのだっ、もう、もう!! 命を粗末にするなっ!! ピリカが大事ならそんな怖いことするもんじゃないのだっ!! 仮に偽魔王を討ち取ったとしてもお前が死んでたらピリカは、きっと、悲しむぞ……っ」


 そうだ。既に親友に命懸けで守られてここにいるセルバが、彼がしようとしていることを許すわけがない。グレイスがしようとしているのは、フォスキスと同等のことだ。命を捧げられた側であるセルバは、その重さに耐えきれないほどよくその痛みを理解している。

 そう言われてしまえばさすがにグレイスは考えが至ったのだろう、ぎらついていた星色の瞳が迷いを見せた。

 

「うぐ、それは、そう、だけど。でも、俺魔王だからよ、これぐらいのことやんないとあんたたちに頼み事なんてできないっていうか……筋が通らないっていうか……」


 立場と状況を考えれば必然的にそうなるのは仕方がない。彼は玉座を追われた今でも魔王として責任を取りながら敵対するはずの存在と手を組もうとしているのだ、彼個人の話で済む話ではない。こういう時王というものはとんでもなく厄介じゃの、わかるぞ。わかる、わしだって嫌というほどそういうことは経験してきた。

 ふ、と。

 クリスが何か、糸口を見つけたように顔を上げた。

 

「グレイス」

「はいぃっ」

「ん、」

「……手?」

「握手。いいからとれよ」

「お、おう?」


 徐に差し出されたクリスの右手を、不思議そうな顔をしたグレイスの右手が握る。するとクリスは“よし”と言わんばかりの微笑みでこう言い放った。

 

「はい、これで僕とお前友達な」

「おうっ、え!? いや待て待て待てさっきの話聞いてたか!? 俺は、」

「い、い、な?」

「あっはい」


 ギチィと音がするほど強く握られた握手にグレイスが困惑しながらも頷く。

 友達。

 その単語にピンときた、あぁそういう抜け道なら仕方ないのう! 他の国なら文句は出ようが元々今回の魔王討伐のお触れと勇者の募集はプルガリオ王国としてわしが出したお触れじゃ、プルガリオならばそれで通せる! プルガリオ王国じゃからの!

 

「勇者と魔王が意図的に手を組むのはまずいだろうけど、これならいいだろ。……いい、よな?」

「色々むしゃくしゃしなくはないのだが今回ばかりは良い!! 許す!! その代わりそいつには今の悪い魔王をしばくのを手伝ってもらうのだっ! 玉座を奪われたとはいえ魔の針を含む魔族の暴走の責任は負ってもらうから覚悟するのだぞ、グレイス!」

『妥協点としてはそこが適切ですね。何はともあれ魔王が守るべき玉座を奪われたこと自体は彼の問題ですし、責任を取らせるという意味ではなんら問題ないかと。それにほら、クリスくんのお友達が困っているということですからね』

「うむ、そうじゃな。結婚しようとした云々は後々話し合いをするとして、友達を助けたいとくれば放っておく理由がないからの」 


 思わぬ展開じゃったろう、グレイスはきょとんとしておる。

 まぁ言ってしまえば簡単なことじゃ。今回の件は何があろうとも政治や国は関係なく、ただの個人的なプライベートとして取り掛かろうというもの。友達だから助ける、だからお互い命を賭けるわけじゃない。ちょっとその辺の喧嘩をこらこらダメだぞと軽く諌めるだけのこと、そこには理由はない。ただ人として当たり前のことをしただけだ。

 ――だから、今回の魔王討伐の件を含めて今回の旅の功績は表に出さない。これまでのことやここからのことも最終的に闇に葬るということになる。クリスはそれでも構わないということなのじゃろう、お主本当に覚悟の決め方が強い通り越してえげつないのう!! そういうところ好きじゃぞ!! まぁ表に出さないとはいえ賢者がしっかり記録取るじゃろうし、きっちり報酬も褒章も用意するからの!!

 

「いい、のか? 俺、無茶苦茶言ってるよな。本当にいいのか?」

「いいよ。みんな助けてやる、あぁでもお前の首も心臓もいらないからな。セルバが言った通り責任は負ってもらう。だからそのかわり僕たちの旅に最後まで付き合えよ、倒せるかはさておいて戦後処理まで全部付き合ってもらうからな」

「っ、……あぁ! あぁ! 俺にできることならいくらでも付き合う! ありがとう、……本当にありがとう……! あんたたちが勇者で本当によかった……っ」


 と、いうわけで。

 ピリカちゃんを助けるため、クリスの友達のグレイスが仲間に加わることになったのじゃった! こっちだって元魔王の賢者がおるしの!! 


『ではこれからの行動方針も少々修正が必要ですね。魔の針を抑えつつ、魔王城に向かうことになるでしょう。件のベンタバール氏とは連絡をつけてあります、彼と協力しまずはスカイブルーマウンテンを目指し、グレイスくんの友人であり魔の針のメルクくんとの接触と説得、情報収集を行う。と直近の予定はこういった形でいかがでしょうか?』

「それで問題ないと思うよ、っていうかいつの間にべンタバールさん見つけてたんだ」

「野暮用すませる時にサクッとの。どうにも飛空艇乗りでもあるらしくての、目的地まで乗せてくれることになったんじゃ。明日顔合わせするから詳しい話はそこでするぞ。そうじゃ、買い物の方はうまくいったかの?」

「ばっちりなのだ! ドタバタして報告が遅れていたが必須のものは全部予算内に収めたぞ、褒めるのだ」

「おぉよくやったのじゃ! いやもしかしたら足らないかな……っと心配しとたんじゃが、さすがじゃのう!」

 

 目的が定まればなんてことはない、最終目的地がどれほど過酷なものであろうとも旅の間は楽しくありたいというのはみんな同じなのだ。


「なぁ勇者……」

「クリスでいいよ。どうかしたか」

「お、おう。クリス、いやあのみんなすげえしっかりしてるなって……七、八歳ぐらいの見た目なのに、ああうんパスカルは十歳ぐらいだけど、なんか鳥先輩もいるけど、えーと」

「あぁ、うん。大丈夫、みんな中身大人だから」

「そっかぁ、中身大人かぁ……え゛え゛!? パスカルだけじゃなくてセルバさんもそういう感じなのか!? じゃ、じゃああんたも!?」

「あ〜〜〜〜〜〜、後でちゃんと説明するから。うん、とりあえずお前は体ちゃんと治そうな」

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