No.8 ティターノ様はコワモテ、お顔の傷治さなくてよろしいのですか?


統治者ティターノの城に侵入したアギ―達、彼女達は二手に分かれて統治者に挑んだ。


フラマーラ、アウレンデントは陽動役として派手に戦闘を繰り広げていた。

炎を操り空を飛ぶ統治者の幹部、そして魔物と呼ばれる怪物が現れる。


熊のような外見をした魔物は、炎を纏って二人に襲い掛かる。


「なんだぁ、そのしょっぺぇ炎は!」

フラマーラはそう言って襲い掛かってきた熊型の魔物を片手で抑えた。


「この世界には随分と趣味の悪い奴がいるみたいだな」

彼女は指先から火の玉を複数発放つ。


弾丸のように放たれた火球は魔物の体を貫く。


すると魔物が纏っていた炎は消え、魔物はその場に倒れてしまう。


「さて、次はテメェだ。こんなしょーもないもの出しやがって。覚悟しろよ」

「ねぇ、フラマーちゃん、これ何かしら」

兵士に向かおうとするフラマーラをアウレンデントが呼び止める。


アウレンデントは倒れた魔物に指さした。


魔物は全身が結晶のように硬く無機質な物質に変化していた。


「ッ!!そいつから離れろっ!!」

兵士が飛び出す。


彼は倒れた魔物と二人の間に立って盾を構えた。


その直後、魔物の体が光を放って大爆発を起こす。




一方その頃、グレイシモンド、テネバイサス、そしてアギ―は書類や本が大量に保管されている大部屋をみつけ、そこを調べていた。


「なんとか騒ぎを起こさずここまで来れましたね。さっきから外は凄い騒ぎですね」


グレイシモンドとテネバイサスは、遭遇した敵を全て凍らせるか煙に沈め意識を奪うかで、無力化してきた。それにより誰も中央に報告が出来ないでいたのだ。


「だがこれもいつまで続くか。我々の人数は相手に知られている、外の二人が陽動なのはすぐに気付くだろう。それまでの間に情報と統治者を見つけねばな」


「情報は統治者さんとお話してからでも良いのではないですか?」


「お話か……そう穏便にすむとは思えんがな。情報を先に集めているのは戦闘が起きた際に、資料などが失われるのを避けるためだ」

書類の棚をざっと見てまわるグレイシモンドはそう答えた。


「城の外観からして腕力しか取り柄の無い蛮族を想像していたが、ふうむ、思いのほか読書家のようだ」

彼は本棚にも目を向ける。


「武術に兵法、戦闘に関するものが多いが確かに蔵書量は大したもんだ」

テネバイサスも壁一面にならぶ本をみてそう言った。


すると本棚の中から一際古い本を見つけ、テネバイサスは取り出した。


鍵が取り付けられている本、表紙に文字はない。

彼は鍵穴に煙を流し鍵を開けた。


「これは……」



「みつけたぞ!侵入者だ!」

「ティターノ様が仰った通り通信できないようにしていたのかッ!!」

兵士たちが部屋の入り口に現れる。


「もうバレたか」

テネバイサスは咄嗟にアギ―達の元へ移動する。


「仕方あるまいッ!」

グレイシモンドは兵士たちを凍らせ、3人は部屋を出る。


するとそこには大剣を担いだ大男が立っていた。

ティターノだ。


「見つけたぞ侵入者めッ!よくも兵士たちをっ!」

相手が怒りの声を上げた瞬間。


「ぬぅっ!?氷かッ!」

彼の両足をグレイシモンドが瞬時に凍らせる。


「出会い頭に失礼、貴様がここの統治者か?」


「そうだッ!侵入者よ、俺こそがこの城の主、ティター……」

ティターノはグレイシモンドを睨みつけ、名乗ろうとした。


「うわぁぁ!見て下さいテネバイサスさん!あのお方、お体もお持ちの武器もめっちゃ大きいです!」

しかし部屋から出て来たアギ―によってそれはかき消される。


「それにお顔が傷だらけ!!早くあのお方の治療をしないと!」


「おい、小娘ッ!!今我がこの野蛮人と話をしていた所だ、横槍を入れるな!それと顔や体の傷は古傷だッ治療の必要はない!!!」

ティターノがアギ―に怒鳴る。


「横槍?槍なんて持ってないですよ?」

「会話に割って入るなって話だ。いいから下がっていろ」

アギ―を後ろに引っ張るテネバイサス。


「なんだその娘は?そんな子どもを連れて我らが城を落としに来たというのか!侮辱するのもいい加減にするんだな!」


「すまんな、あれは置いてこれんのだ。そんな事より自身の心配をしたらどうだ?」

頭に手を当てグレイシモンドはそう言った。


ティターノは自分の氷漬けされた足をみて鼻で笑う。


「ふん!この程度の氷で俺を拘束できたと思うなよ!」

足の氷は一瞬にして蒸発した。


「ちっ!」

グレイシモンドは再び氷を放つ。


「ははははッ!!涼しいだけだぞ」

左手にもった大剣を振り回し、ティターノはグレイシモンドに迫る。


剣を避けるグレイシモンド、しかし

「剣に気を取られ過ぎだッ!!」


ティターノは空いている右拳をグレイシモンドに叩き込んだ。


「ぐッ!!」

彼に触れた瞬間、拳は爆発を起こす。

壁を突き破り、彼は城の中央広場まで吹き飛ばされる。


「我が名はティターノ!誇り高き巨人族の末裔!この武力の国を統治する者ッ!!」



(魔力の扱いこそ粗いが単純な破壊力では我々以上!予想よりも我々は力を抜き取られているようだな)

広場で起き上がるグレイシモンド。


そこにティターノが剣を振り下ろして来た。

グレイシモンドは咄嗟にそれを回避する。


「見事に飛ばされたな」

テネバイサスも広場に降りグレイシモンドの側まで行く。


「アギ―は上に残して来た」

「正解だな」

二人はそう言ってティターノの方を向く。


「はははッ!!良いだろう!二人まとめて相手してやるぞッ!!」


「爆炎刃ッ!!」

ティターノは剣に炎を纏わせ、炎の斬撃を飛ばして来た。


その斬撃をテネバイサスは煙で受け止める。


「お返しするぞ」

煙に飲み込まれた斬撃は、紫の炎となって再び煙から出現。

ティターノ目掛け飛んでいく。


それに対しティターノは同じ技を放って相殺させる。


(ふむ、氷に妙な煙か。氷は溶かせる、問題はない。しかしあの煙は煩わしいな俺の技を呑み込まれ、返されるか)


今度は足から爆炎を放ち高くジャンプするティターノ。


「そらあああッ!!」

二人目掛け剣を振り下ろす。


剣が地面に触れると爆発が、そして彼はその場で剣を振り回すと幾つもの炎を纏った斬撃が繰り出される。


「まったく、煙に熱、これだから炎はッ!!」

「くっ!なんて威力だ」


二人は攻撃を逸らし、躱し、この攻撃をしのぐ、しかしそれ以上の事が出来ない。


(まずいな、防戦一方だ。おれの煙でなんとか吸収できるが、煙の量もそう多くはだせん。相手はまだ全力ではない、本気を出されたら煙だけでは対処できない)

テネバイサスは煙で相手の攻撃を防ぎながらそう考えた。


その時、空から怒鳴り声が。


「テメェかッ!!人様の炎でイキってる勘違い野郎はッ!!」

広場にいた者全員が空を見上げる。


そこにいたのはフラマーラだった。

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