No.7 統治者さんのお城はアツアツでした。は!グレイシモンドさんが溶けちゃいます!


火山を削りだしたような城の中。


その最上階にこの土地の統治者はいた。


「貴様だったな、連中が来るのは翌日、早くとも半日だと言ったのは」

城と同様に黒々と鈍く光る玉座に腰をかける大男、この男こそがこの領地の統治者ティターノだ。


彼は声こそ荒げなかったがその目を見ればどれだけの怒りを抱いているかは分かる。


「申し訳ございません、侵入者は異能を使用する者達でして……」


「おい」

兵士の首を掴み上げる。


「だれが言い訳を述べろと許可した?貴様らが甘い予測を立てたせいで、我が同胞達が被害を受けたのだぞ!」


「も、もじわげありまぜん!!」

ティターノは掴んだ手を放す。


「戦闘準備ッ!兵士、兵器、その全てをもってこの侵入者を迎え撃つのだ!あれも用意しておくのだ。ここで必ず食い止める、俺も前線に赴く、いざという時は巻き込まれぬようにな」


「はっ!仰せの通りに!」

兵士たちはビシッと敬礼をする。


彼は玉座から立ち上がる、そして壁へと向かう。

壁には彼の巨体よりも更に強大な剣が立てられかけていた。


「異界からやってきた侵入者どもめ、これ以上好き勝手やらせんぞッ!」

剣を担ぎ兵士たちを率いて玉座の間から出て行くティターノ。




一行は城が見える所まで近くに来ていた。

城は火山を切り崩したような黒々としており、正面には髑髏の彫刻がされていた。所々から溶岩が流れ出ている溶岩がより一層荒々しい外装を演出している。


「アツアツで溶けそうです……は!グレイシモンドさんが溶けちゃう!」

「溶けるか、たわけ。とはいえ酷い暑さだな」

「それにあの城のデザイン、暑苦しい上にセンスが悪いわね」

うなだれる三人に対し、フラマーラは意気揚々と先を行く。


「うーん。暑さはまあこんなもんとして、デザインは……ねぇなガイコツつけるなら実際に狩った竜とかの頭をつけるとか、炎やマグマでドクロっぽく見せるとかじゃないとなぁ。面白くねぇ」

城を見てコメントを言うフラマーラ。


「意外と辛口ね」

「貴様は燃えてれば何でも良い燃えバカかと思っていたが」

「溶かすぞてめぇ」

「どうでも良いから足止めるな」


そんな一行が来たことを城壁から監視していた兵士が他の兵に伝える。


「来たぞ!投爆機、放てーーーッ!」

号令に合わせ、岩程の大きさの爆弾が放たれた。


「ん?何か飛んできましたよ?」

アギ―が飛んで来る爆弾に向かって指を指す。


「お前ら下がってな!」


フラマーラが飛び出しその爆弾に突っ込む。

爆発し、炎と煙が周囲に広がる。すると爆炎はすぐに広がるのを止め、中心へと集まっていく。どうやらフラマーラが爆炎を吸い込んでいるみたいだ。


吸い込んだ炎に自身の魔力を乗せて、彼女は火球を口から放つ。


「ッ!!?退避ッ!!退避ッ!!」

兵士が叫ぶ。


城壁の一部が吹き飛ばされる。


「ガハハハッ!お返しだッ!じゃあ行くぜ!」

フラマーラが炎と共に飛びあがり城壁目掛け飛んでいく。


「それじゃあ私も。また後でね、みんな」

アウレンデントも同様に稲光となって城壁へ飛んで行った。


「陽動はあちらに任せ、我らは統治者を探すぞ」

「離れないように付いてこい」

「はい!」

グレイシモンド、テネバイサス、そしてアギ―は城門へと向かう。



「そらそらッ!!!」

フラマーラは空を飛び、空中から火球を放つ。


「クソッ!早く撃ち落とすんだ!!」

兵士たちが弓を構える。


「フラマーちゃんにばっかり、ちょっと嫉妬しちゃうわ♡」

アウレンデントが兵士たちの隣に立つ。


「ちょっと失礼♡」

彼女の指先から放たれる雷撃が兵士達を貫く。



城壁に配備された兵士たちと戦闘を繰り広げていると

「ん、なんか来るな?」

空を飛び回るフラマーラは城の方をみる。


すると凄まじい勢いで何か飛んできた。


「幹部様方だ!」

兵士たちはその飛来してきたものを見て声を上げる。


「そこまでだ!侵入者!」

そう言った相手は他の兵士よりも重厚な鎧を身に着け、槍と盾を構えていた。そして足から炎を放ち空に浮いている。


「フラマーちゃんこの人達の炎って」

「ああそうだな!クソッ!他所様の炎を我が物顔で使いやがって!」

そう言ってフラマーラは幹部に向かって突撃。


「うおお!!」

空を飛ぶ兵士が槍を振るう。


フラマーラは相手の攻撃を避け、蹴りを放った。

「とろい火使い方してんじゃねぇよッ!」

「グウっ!!」


蹴られた相手は城壁に叩きつけられる。


「く、ティターノ様が仰る通りの力……ならば」


「魔物を解き放て!その後は迅速に退避せよ!」

幹部は兵に向かってそう命令した。


すると間もなく、どこからか大きな物音と共に獣の咆哮が轟く。


現れたのは熊のような外見をした生物だった。


「辺境の地でしか見つからない希少な生物、我軍の新戦力、魔物だ!行け!」

幹部が合図すると魔物は口から火球を放つ。


その火球を避けるフラマーラとアウレンデント。


「フラマーちゃんこれも貴女の炎よね」

「ああ、イラつくぜッ!どいつもこいつも!」



戦闘が始まり、ティターノは侵入者の元へ向かっていた。


「先ほど城壁で侵入者との戦闘を始めたと報告が!」

「全員か」

「いえ、2名のみです。炎と雷を扱うものとの事で」

走りながら部下から報告を聞くティターノ。


「ならばそいつらは陽動だな。他に報告は?」

「現時点で侵入者に関する報告はこれのみです」

その事を聞いてティターノのは眉間に皺を寄せる。


「今すぐ他の全部隊に連絡を取れ。非戦闘員は既に退去させていたな、ならばその場所に行って確認するんだ。異変があればすぐに知らせろッ!」

「ハッ!仰せのままに!」

兵士はすぐに行動にうつる。


「ひっひっひ、忙しそうだなティターノ?」

「ふん、なんのようだ、例え暇であっても貴様に割いてやる時間はない」

彼の持つ通信用の水晶玉に何者かから連絡が入る。


「魔王様が言うにはあの祠から解き放たれた者たちらしいぞ」

「分かっておるわ!いちいちそんな話をする為に連絡をくれたのか?」

明らかな嫌悪を相手に向けるティターノ。


「ひっひっひ、随分とあたりが強いじゃないか。いやなに、必要なら俺の兵器を貸してやろうかと思ってな」


「断る!魔王からの要望で無ければあの魔獣も本来なら願い下げだったのだ」


「まあいい、俺はデータが取れればそれで良いんだ。この戦いも良いデータが取れる事だろうな。それじゃあな」

相手はそう言って通信をきった。


「ふんッ!相変わらず話していると気分が悪くなる奴だッ!待っていろ侵入者!もろとも討ち取ってくれるわッ!!!」


ティターノはそう勇んで前進していく。

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