第15話 サテュロス

(何あれ……誘ってるのかしら?)


 私はその青年の腰から下がヤギでなのを見て、そんなことを考えた。


 ヤギ。


 この愛らしい生物は見た目とは裏腹に、キリスト教圏では往々にして色欲や悪魔のシンボルとされている。


 ヤギは性欲が強いという認識が広まっているからかもしれない。


 オスは基本的に年中交尾可能であり、メスも種によっては特定の発情期を持たず通年交配可能なものが多い。


 キリスト教圏でなくとも、沖縄のようにヤギ肉を精力増強剤のように認識している地域は結構ある。


 その青年は半人半ヤギの体を持つ『サテュロス』という種族だった。頭にもヤギ特有の巻いた角が生えている。


 下半身がヤギということは、きっとアッチの方もよほどお盛んなのだろう。


 そう思うと、この下半身はもはやメスを誘っているとしか思えない。


「ねぇねぇそこのカワイイ子!キミだよキ・ミ☆いま目があったよね?ってことは、これはもう運命じゃないの〜?」


 その青年はウインクとともに軽い口調でそう言ってきた。


 ドキドキしていた私のテンションが一気に下がる。


(チャ、チャラい……これが世にいうパリピか)


 パリピ。


 地味に真面目に生きてきた私にとっては宇宙人のようなものだ。未知との遭遇に体が固まる。


 しかし青年はそんなこと一向に気にした様子もなかった。


「ウェ〜イ」


 と、手に持ったビールジョッキを掲げながらグイグイと距離を詰めてくる。


「ボクと一緒に一杯やろうよ☆それから二人でしっぽりと出かけよ……っ痛い!」


 ゴッ、という音がして、サテュロスの青年が頭を押さえた。


 その頭上にはアステリオスさんの大きな拳が握られている。


「パーン、店ん中で気持ちの悪いナンパしてんじゃねぇよ。酔って笛吹くくらいなら許してやるが、他の客に絡んで迷惑かけるのは許さねぇぞ」


 アステリオスさんはパーンと呼ばれたサテュロスの青年を見下ろしながら鼻を鳴らした。


 確かに目が合っただけでナンパされては客も店も迷惑だろう。


「ご、誤解だって。ボクはただ、一緒に依頼を受けてくれる仲間を探してただけなんだよん☆」


 パーンさんはまたウインクをしつつ、目元ピースでペロッと舌を出してみせた。


 再びゴッ、という音がして、パーンさんの頭を拳骨が襲う。


 今度は不幸にも軽く舌を噛んでしまったらしい。


「アガガガ……」


「クウ。パーンはこんな気色の悪いやつだが、悪人じゃあねぇよ。本当に仕事の話なら聞くだけ聞いてやってもいいかもしれん」


 私はアステリオスさんにそう言われ、あらためてパーンさんを見た。


 一見するとただのチャライケメンだが、どこか憎めない感じがある。アステリオスさんがそう言うなら悪い人ではないのだろう。


「召喚士のクウです。検討しているのはどんな依頼ですか?」


 幸い舌の傷はさほどでもなかったらしく、パーンさんは普通に喋ることができた。


「クウちゃん?名前もカワイイね☆僕が受けようとしているのはコレだよ」


 パーンさんの指さした依頼書を見ると、


『ハイランド・アルミラージの毛の採取』


と書かれている。


 アルミラージならこれまでに私もたくさん倒してきた。ダンジョンにたくさんいた一角ウサギのモンスターだ。


「ハイランド・アルミラージって、普通のアルミラージと違うんですか?」


 その質問にはアステリオスさんが答えてくれた。


「その名の通り、高地に住むアルミラージだ。この辺りなら北の山岳地帯に多いな。標高の高い寒冷地に適応した結果、防寒性に優れた毛を生やしている。その毛が高性能な衣類の素材になるんだ。高級品だから結構な値段で売れるぞ」


「しかも今回は急ぎの需要みたいだから、いつもより単価が高いみたいだね。ラッキー☆」


 パーンさんがまたウインクしてくる。二度もアステリオスさんにぶたれたのに懲りない人だな。


「一人じゃ難しそうな依頼なんですか?」


 わざわざ仲間を募るということは、そういう事なのだろうと私は思った。


「ハイランド・アルミラージの捕獲自体はボク一人で十分なんだけどね。ほら、ボクって見ての通り平和主義者じゃない?だから道中とか毛刈り中とかに他の強いモンスターが出てきたら、ちょっと困るっていうかさ〜」


「ハッキリと己の戦闘力が低いと言え、ハッキリと」


 アステリオスさんがパーンさんの頭をクシャクシャにしながら突っ込んだ。


「ちょっと〜、髪の毛はやめてよ。毎朝どれだけ時間かけてると思ってるの」


 あぁ、やっぱりこのチャライケメンはそうなんだ。お洒落を頑張るのは悪いことじゃないんだろうけど。


 しかし牛頭のミノタウロスには全く価値の分からない話だろう。


「そんなモンに時間をかけてる暇があったら体を鍛えろ」


「いやいやいや、見た目は自信につながるんだよ?ボクみたいなシャイボーイにとって、身だしなみは重要なのさ☆」


 それを聞いたアステリオスさんは鼻で笑った。


「フン、シャイボーイ?チェリーボーイの間違いだろうが」


 その一言で、うざいほど饒舌じょうぜつだったパーンさんは急に口をつぐんでしまった。


 うつむいて、別人のように黙りこくる。


(……パリピなのにチェリーなんだ)


 耳まで赤くなったその可愛い顔は、確かにシャイボーイではあるようだった。



****************



「わぁ、可愛い!!」


 私がハイランド・アルミラージを見た第一印象はそれだった。


 ただのアルミラージも角以外はウサギに近いので十分可愛いが、ハイランド・アルミラージはそれがさらにモフモフになっている。


 触りたい。撫でて、抱きしめて、思う存分モフモフしたい。


 そのモフモフたちが崖の切り立った斜面に数匹いるのが見えた。


「クウちゃんの方が断然カワイイよ☆」


 パーンさんはバチン☆とウインクを決めて親指を立てた。


 アステリオスさんの店ではちょっと大人しくなっていたが、北の山岳地帯に来るまでの間に完全に立ち直っている。


「でもマジ気をつけてね。ハイランド・アルミラージはあの角で人間を串刺しにしちゃうこともあるから」


「そ、そうですよね……モンスターですもんね」


 いくらチャラくてもこういう所はちゃんと注意してくれる。


 話してると、ふと実は真面目な人なんじゃないかと思うことがあった。チェリーだし。


「えっと、私は周りを警戒してればいいんですっけ?」


「そうだよ、毛刈りはボクに任せて☆ここまでもありがとう」


 私の仕事は道中と毛刈り中の安全確保だ。


 レッド、ブルー、イエローの三体を出して周囲を警戒させている。


 ここまでも何体かモンスターを倒してきたが、今のところそれほど強い敵には出会っていない。ただ、それでもパーンさんはほぼ戦力にはならなかった。


(アルミラージは任せて大丈夫なのかな?危険なモンスターって言ってたけど)


 私が心配していると、パーンさんはカバンから笛を取り出した。


 そしておもむろに吹き始める。


 不思議な音色だった。


 音楽は普通、和音で構成されているものだ。意図的に外すこともあるだろうが、和音でなければ異音なわけで、曲としては成り立たない。


 しかしパーンさんの奏でているのは明らかに和音ではなかった。


 ただ不思議なことに、それでもハッキリと曲だと感じるのだ。なにか人間の感覚の外にあるような音楽だった。


「……え?たくさん出てきた」


 私は目を疑った。


 先ほどまで数匹だったのに、気づけば斜面のあちこちにハイランド・アルミラージたちが現れている。数十匹はいるだろう。


 おそらく切り立った斜面に穴を掘って巣にしているのだと思われた。


 私が驚いていると、パーンさんは笛の曲調を変えた。


 すると急にハイランド・アルミラージたちはウトウトし始めて、一匹・二匹と倒れ始めた。


 どうやら眠っているようだ。


「すごい……笛でモンスターを呼び出したり、眠らせたりできるんですね」


「そうだよ、サテュロスは酒と音楽を愛する種族なんだ。だから音楽に魔素をのせて色々な効果を発揮させることができる。いつかクウちゃんにもボクの愛のメロディをお届けしちゃうよ〜ん☆」


 よ〜ん☆て。


 ウインクをされても苦笑いしかできないが、それにしてもこれはすごい。


 しかも音楽が魔法になるなんて、なんか素敵だ。


「でもこれ……どうやって登るんですか?」


 ハイランド・アルミラージたちがいるのは崖と表現するのが正しいような急勾配だ。


 そこに点々とある小さな足場で眠っている。


 人間が上がろうと思えば、ロッククライミングに近い技術が必要そうだった。


「大丈ブイ☆ヤギの中にはこんな斜面に住むやつもいるんだよ」


 Vサインを作りながらの大丈ブイは、もはやパリピっていうか時代的にいかがなものか。


 ただし、パーンさんのその後の動きには目を見張るものがあった。


 そのヤギの下半身には見事な跳躍力と平衡感覚が備わっているようで、軽やかに崖を登っていく。


 少なくとも下半身は結構な運動能力だ。


(すごい。確かにすごいけど、それだけ動けるならもっと戦えたんじゃ……)


 道中ほとんど戦おうとしなかったパーンさんに少しばかりの不満は感じたが、確かに私だけではこの崖を前に途方に暮れただろう。


 分業万歳だ。


 パーンさんはバリカンを取り出し、次から次へとアルミラージの毛を刈り取っていく。


 刈られた毛は袋に詰められ、いっぱいになったものは下に落とされた。私はそれを回収していく。


 ちなみにハイランド・アルミラージはプティアの法律で、自衛目的以外での殺傷を禁止されているという話だった。


 理由はごく経済的なもので、殺してしまうと毛の採取量が減ってしまうからだ。だから殺して毛皮を取るようなことはせず、毛刈りをすることになる。


 順調に採取が進み、八割くらいが終わっところで斜面の一部にヒビが入った。


 その部分が盛り上がり、ボコボコと音を立てる。


「パーンさん、気をつけてください!何が出てきます!」


 パーンさんはかなり高い所にいたので距離はあったが、私は念のために注意の声を上げた。


 土を押しのけて出てきたのは、大きな岩のモンスター、ボールダーだ。


「ボールダーでした!倒しますちゃいますね!」


「クウちゃん頼りになるぅ☆ヨロシク☆」


 この人はウインクしないと応援もできないんだろうか。


 ボールダーは砕けばその破片が鉱物として良い素材になる。私はサイクロプスの鍛冶職人、ブロンテスさんに持って行ってあげようと思った。


 ボールダーはその頑丈さと重量で体当たりをかましてくるモンスターだ。


 すぐに私に向かって転がって来た。


「スケさん、カクさん、出ておいで!」


 私はスライムとドラゴンのハンズであるスケさん、カクさんを召喚した。


 魔素を込めながら聞いてみる。


「どうかな、いけそう?」


 二匹は私の確認を念話で肯定した。


 そしてスケさんは宙に浮き上がり、カクさんは握り拳を作る。


 私はさらに魔素を送った。これで二匹の力と強度はかなり強化されたはずだ。


 スケさんがボールダーに向かって飛んでいき、手を添えてその動きを押さえた。完全には止まらないが、ある程度狙いを定めやくすなればそれで大丈夫だ。


 カクさんの方は軽く後ろに引いて反動をつけ、ボールダーに向かって思い切り突っ込んだ。ハンズは手だけのモンスターとはいえ、これはドラゴンの拳骨だ。


 轟音と共にボールダーのど真ん中にぶつかったカクさんは、そのまま突き抜けて向こう側に出た。


 当然ボールダーは粉々に砕け散る。


 私はその威力に大満足した。


「スケさん、カクさん、もういいでしょう」


 ドヤ顔でその台詞を口にした。もういいも何も完全に粉々なのだが、これだけは絶対に言ってみたかったのだ。


 が、この攻撃で想定外のことが起こった。眠っていたハイランド・アルミラージたちが目覚めてしまったのだ。


 そりゃ大岩が砕けるような轟音が響けば、いくら魔法で寝かされていても起きるだろう。


 ハイランド・アルミラージたちは一斉に巣穴へと避難してしまった。


「あぁ……ごめんなさい……」


 巣穴に入ったアルミラージは捕獲困難だと聞いている。穴の中へ手を伸ばすと角で突かれるからだ。


 私は想像力の足りなかった自分を責めた。私のせいで収量が減ってしまったのだ。


 しかし、パーンさんはウインク一つで私の失敗を軽く流してくれた。


「オッケーオッケー☆もうほとんど終わってたしさ、持ってきてた袋もいっぱいだからちょうど良かったよ」


 普段はウザくても、今はこの軽さがありがたかった。しかも袋は確かもう一つあったはずだ。


(パーンさん、優しい嘘がつける人だな……)


 ちょっぴり胸がジーンとした。


「ありがとうござい……パーンさん後ろ!!」


 私はお礼を途中で止め、警告の声を上げた。


 パーンさんの背後に一匹のハイランド・アルミラージが迫っていたからだ。しかもやたら大きく、威圧感すらあるほどの個体だった。


(何あれ、他の倍くらいある!しかも全然こっちを怖がってない!)


 どうやらこの個体だけは巣穴へ逃げなかったらしい。


 パーンさんはすばやくジャンプして距離を取った。


 しかしハイランド・アルミラージもパーンさんを追う。追いながら角の攻撃を繰り出してきた。


 しかも普通の攻撃ではない。アルミラージの角攻撃は体ごとぶつかって来るのが普通だが、この個体は角が伸縮自在のようだった。


 体が追いつかなくても、角だけが伸びてきてパーンさんを襲う。


「だ、大丈夫ですか!?」


「ちょっと大丈夫じゃないかも!」


 パーンさんは器用に斜面を跳ねてかわしているが、鋭利な角の攻撃は矢継ぎ早に繰り出されてきた。


 しかも角が当たった部分の斜面はどういう作用か、そこを中心に一メートルくらいの範囲がボロボロと崩壊していた。


 普通ではない破壊力があるようだ。


「ブルー、行って!」


 私は一番近かったブルーを飛ばした。これまでの経験上、余裕でアルミラージを倒せる程度の魔素を込めたはずだ。


 が、ハイランド・アルミラージはさらにもう一つの特殊能力を見せた。


 ブルーがぶつかる直前、そのモフモフの毛が大増殖して体を覆ったのだ。


 モフモフのマリのようになったハイランド・アルミラージにブルーが激突する。


 しかしその衝撃は毛で緩和され、凍結の方もあまり効いていないようだった。


(魔素で角と毛を伸縮させられるんだ!)


 大体のことは理解できた。


「レッド!!」


 私は即座にレッドを飛ばした。ハイランド・アルミラージの毛は防寒性が高いという話だった。ならば熱で対処するのが良さそうだ。


 レッドが高熱を帯びた弾丸となり、モフモフの中心に激突する。


 しかし期待に反し、レッドの攻撃もブルーと同じようにあまり効いてないようだった。


「熱いのも効かないの!?」


 私はこれからの展開に悩んだ。


 魔素を強くして思い切りぶつかれば倒せるかもしれないが、崖も結構壊すことになりそうだ。


 ハイランド・アルミラージは良質な資源だし、その生息地は荒らさないようにしなければならない。


「電気ならいけるかな……」


 私がイエローを飛ばそうとした時、パーンさんが角の一撃をかわしながら教えてくれた。


「この子たちの毛はほとんどの属性を緩和しちゃうよ!強度も高いしね!だから高級素材なの☆」


 ウインクのせいで視野が狭くなったのか、台詞の終わりに繰り出された一撃は紙一重のスレスレになっていた。それでもウインクしないといけない理由ってなんだ?


 私は手持ちの使役モンスターを頭に浮かべ、一瞬の思考の後に作戦を決めた。


「レント、お願い!」


 木のモンスター、トレントのレントを召喚する。そしてすぐに念話で命令を発した。


「細くだよ!!」


 レントは私の指示通り、先を細くした枝をハイランド・アルミラージに向かって伸ばした。


 枝の先は細い蔓程度の太さになっている。それがモフモフの毛の中へと入っていった。


 いくら衝撃や熱に強いといっても、毛は毛なのだ。細いものならその隙間に侵入することができる。


 モフモフの中に入ってしまえばこちらのものだ。レントは細い枝を何重にも首に巻き付けて、キュッ締めた。


 脳は酸素の供給が止まるとほんの数秒で意識を失う。


 大した力を入れることもなく、ハイランド・アルミラージを昏倒させることに成功した。


 気を失って崖を転がり落ちてきたハイランド・アルミラージの角と毛は、ごく普通の長さに戻っていた。


 私は急いでそこへ駆けていく。


「セルウス・リートゥス」


 すぐ隷属魔法の呪文を唱え、青い指を挿し込んだ。死ぬほどは締めていないはずだ。


 そしてハイランド・アルミラージの体が青く光り、蔦のような紋様が現れて隷属魔法が成立した。


「やったぁ!!モフモフ、ゲット〜♪」


 私は初見からずっとモフモフしたいと思っていたモフモフを手に入れた。


 殺傷は禁止されているが、使役するのは禁じられていないはずだ。


 ハイランド・アルミラージがムクリと起き上がってこちらを向く。


 驚くことに、尖っていたはずの角の先が丸くなっていた。モフモフするのにこの突起物が危ないと思っていたのだが、伸縮だけでなく先端の形状まで自由にできるのか。


「よーし、君の名前は……モフーだ!よろしくね、モフー」


 私はそう言ってモフー抱きしめた。


 それはもう想像以上のモフモフで、あまりの心地よさにモフモフモフモフやりまくった。


「気持ちいい〜♪」


↓挿絵です↓

https://kakuyomu.jp/users/bokushou/news/16817139557797907946


 モフーも嬉しそうに私に体を擦り寄せる。


 その角が私の耳に触れた瞬間、電気が走ったような刺激を受けた。


「ひゃんっ……え?震えてる?」


 どうやらその角は微妙に振動しているようだった。


 そこにパーンさんが斜面から降りてきた。


「そうだよ。強いアルミラージの角は超振動で敵を破壊しちゃうんだ☆さっきも当たった崖が崩れてたでしょ?」


「そ、そうなんですね」


 もちろん今はじゃれているだけなので痛いような振動ではない。


 というか、絶妙に気持ちがいい振動だ。


 そしてモフーは私が気持ちいいと思ったのを敏感に感じ取ったようで、その振動を体の他の部分にもあてがってきた。


 首筋から胸、脇、脇腹、太ももと、あちこにちに絶妙な刺激が加えられる。


「ちょ、ちょっと」


「カワイイ子じゃない☆ボクもこの子みたいにキミと仲良く……」


「あっ、あっ、あっ、あっ」


「…………」


 私はその振動に背筋をゾクゾクとさせながら、吐息を熱くした。変な声が止まらない。


 なぜかそれとは反対に、パーンさんは急に口をつぐんでしまった。


 調子に乗ったモフーは、果ては股間へとそのバイブレーション・ホーンを押し付けてきた。


「ちょ、ちょっと待っ……あぁあぁぁ……」


「…………」


 私の痴態を目にしたチェリーさんは帰り道、妙に口数が少なかった。



***************



☆元ネタ&雑学コーナー☆


 ここから先は筆者が話の元ネタなどを気の向くままに書き記しているコーナーです。


 本編のストーリーとは関係ないので興味ない方は読み飛ばしてください。



《サテュロスとパーン》


 サテュロスはギリシア神話やローマ神話に出てくる種族です。


 パーンはサテュロスと同一視されることが多い神様ですが、細かいことを言うとサテュロスの方は神様ではなく、ちゃんと年を取って死にます。


 ただこの二者は同一視されているだけあってよく似ていて、


『半人半ヤギ』『音楽好き』『性欲旺盛』


という特徴が重なっています。


 ちなみに昔はその性欲という点の描写が露骨なので、よく男性のアレが大きくなっている姿で描かれていたようです。


 本編にも書きましたが、やはり生物としてのヤギとその性のイメージから来たものではないかと思われます。


 ただ、それを言うと人間なんて年中交配可能な上に、性産業を生きる糧にしている個体も多い生物なんですよね。


 そう思うと、人間自身ほど性のシンボルに相応しい生物もいない気がします。



〈チェリー〉


 チェリーボーイというと童貞を意味しますが、なぜ『チェリー』なのでしょうか?


 調べてみると、処女を失った時に出る血の淡い色がさくらんぼに似ているから、というのが語源らしいです。


 そう、童貞のイメージが強いチェリーですが、元の英語では処女も表すんですね。


 日本語とはイメージが違うようなので、使う時は注意が必要そうです。



〈パリピ〉


 今回出てきたパリピチェリー、書いててめっちゃ楽しいんです。


 でも筆者は主人公と同じように地味に生きてきたので、パリピという生物をよく知りません。


 なのでパリピの描写はひどいものになってると思います。


 ごめんなさい。


 っていうか、雑学コーナーなのに『よく知りません』で終わってごめんなさい。



***************



お読みいただき、ありがとうございました。

気が向いたらブクマ、評価、レビュー、感想等よろしくお願いします。

それと誤字脱字など指摘してくださる方々、めっちゃ助かってます。m(_ _)m

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