第7話 プティア東ダンジョン2

(何あれ……誘ってるのかしら?)


 私は数百体のモンスターに囲まれながら、場違いなことを考えていた。


 今の自分が危機的な状況にあることは分かっている。


 しかしそれでもなお、私はこの部屋の中心に据えられた物体から目が離せなかった。


(あれだ……このダンジョンを初めて見た時に感じた『誘われてる』って感覚は、あれから来てる)


 私たちが今いる空間は、落ちてくる前と同様に小さな野球場くらいの広さがある。


 落ちてくる前と違うのはその天井が少し高くなったことと、数百体のモンスターがいること、そして部屋の中心に高さ三メートルほどの台座が置かれていることだ。


 台座の上には何か筒状の物体が浮いていた。


 遠目にはよく分からないが、なんとなくフレイさんから支給された格納筒のようにも見える。ただ、自分の持っている地味な茶色の筒とは違い、七色に輝いていた。


 私はその虹のような美しい筒に、明確に誘われていると感じた。


 その感覚が不思議なほど当たり前に頭の中に入ってくるものだから、私は周りにモンスターたちがいるのを忘れてフラフラと歩み寄ろうとしてしまった。


「危ない!」


 サスケが私の襟首を掴んで引っ張った。


 目と鼻の先で、動く石像ガーゴイルの持った石の剣が振り下ろされる。


(あ、危なかった!)


 私は間一髪助かったと思った。が、実はそうではない。


 私自身は無事だったのだが、私をかばうようにして抱き込んだサスケの右腕が、ガーゴイルの一閃で斬り落とされてしまった。


 腕が床にぶつかるショッキングな音に、私はパニックになった。


「え……イヤアァアッ!!」


 私の悲鳴に誘われるようにして、部屋中のモンスターたちが一斉にこちらを向いた。


 そして近いものから次々に襲いかかってくる。


 私は混乱しながらも、自分がもうすぐ死ぬのだということは理解できた。


 数があまりにも多すぎる。もし私が落ち着いていたとしても、この数に同時にかかられては捌ききれるはずがない。


 死の恐怖が私のパニックを助長した。


 が、サスケは腕を斬り落とされながらも冷静だった。


 残った左腕を素早くカバンに入れ、そこから取り出した瓶を地面に叩きつける。


 その瞬間、瓶の割れた地点から半径三メートルほどの床が円状に淡く光り始めた。それと同時に、光る円の内にいたモンスターたちが弾き飛ばされる。


 それからサスケは片腕で私の肩を掴んで揺すった。


「クウ、落ち着いて!僕はスライム族だから腕はまた生やせる!」


(え?スライムってそうなの?)


 私はその事実に驚きながらも、なんとかパニックを脱した。スライムってすごい。


「それと、聖域の効果があるスライムローションを使ったから三分間はほとんどのモンスターが入ってこれない」


 そ、そんな便利なローションが。


 おかげで私たちはなんとか命拾いをした。


(いや。命拾いっていうか、命が延びただけかもしれないけど……)


 三分経てば聖域の効果は消えるということだ。


 その間になんとかなるだろうか?


 かなり難しい気がするし、そう時間に追われてはまともに思考することもできない。


 しかし、こちらにはありがたい事にケンタウロスの賢者がいる。


 ケイロンさんがすぐに方策を立ててくれた。


「出口は塞がれていますから、聖域の効果が切れるまでに敵を倒し切るしかありません。幸いこちらの攻撃は飛び道具のようなものですから、聖域内から攻撃できます」


 確かにスライム三匹衆の攻撃は弾丸のようなものだし、ケイロンさんの武器は弓矢だ。聖域との相性は良い。


「それと、敵は多い分ある程度固まっていますから貫通する攻撃が効果的です。魔素消費が多くても複数体を貫ける程度の攻撃をスライムに命じてください。私の矢もそのようにします。サスケ君、聖域のローションはもうありませんか?」


「あれ一本50万円だよ?あんな高いの何本もないって。さっきのがとっておきの一本」


「……でしょうね。クウさん、魔素の補充薬は?」


「まだ少し……」


 私は腰に手をやって、初めてその事に気づいた。


 落ちた拍子に革袋が破れてしまったようで、補充薬は全て流れ出ていた。


 カバンに入れていた予備もすでに使い切ってしまっている。


「……ごめんなさい、ゼロです。全然ありません」


「!!……それが一番きついですね。クウさんの魔素がもつかどうか勝負の分かれ目です。気張ってください」


「は、はいっ」


「では、いきますよ」


 ケイロンさんは弓に矢をつがえた。三本同時だ。


 私もレッド、ブルー、イエローに魔素を集中させる。ケイロンさんの言った事を念話で伝えると、三人はすぐに理解してくれた。


 私は具体的な戦闘はスライムたちに任せ、要求されるままに魔素を込めることだけに集中した。


 そしてケイロンさんの矢がきらめき、スライムたちが弾丸となって飛び回る。


 モンスターたちは貫かれ、焼かれ、凍らされ、感電させられ、次々に倒れていった。


 サスケも全体の様子を見ながら、その都度効果的なスライムローションを片腕で投げつけている。


 ケイロンさんの攻撃もスライムたちの攻撃も、その威力はすでに実証済みだ。


 どうやら極端に強いモンスターはいないようで、時間さえかければこの数の敵もこなせそうではあった。


 ただし、『私の魔素がもてば』という条件付きだ。


 モンスターたちが倒されるに従って、私は精神的な疲弊を強く感じて眠気を増していった。


 そして同時に、まためっちゃムラムラしてくる。


(必死に戦うサスケとケイロンさん、すごくカッコいいな……)


 私は二人の勇姿にドキドキしつつ、それをしっかりと脳裏に刻みこんだ。


 モンスターたちはどんどん減っていく。


 部屋中にごった返すようにいたので、ケイロンさんの指示した貫通攻撃の効率が良いのだ。


(……もう八割、いや九割は倒したんじゃないかな?)


 私がそう思った時、ケイロンさんの体が薄っすらと透け始めた。


 だんだんとその向こう側が見えてくる。


「まずい……召喚が解除されます!」


 ケイロンさんの悲痛な声が上がった。


 その時には私の疲弊も極限に達しており、まともに答えることもできなかった。


「くっ……私がプティアに帰ったらすぐに応援を呼んで来ます!ですからそれまで時間を……」


 ケイロンさんの声はそこで途切れてしまった。召喚が解除され、元いたプティアの街まで戻ったはずだ。


 スライムたちも攻撃出来るだけの魔素がなくなり、ぴょんぴょんと跳ねて戻ってきた。


 スライムたちの方がケイロンさんより燃費が良いので、三匹の召喚は解除されなかったようだ。


 そしてさらに悪いことが続く。


 サスケは苦渋を滲ませた声で叫んだ。


「聖域が……切れる!」


 私たちを守っていた淡い光が、ついに消えてしまった。


 敵は九割減っても、まだ数十匹はいる。まともに戦えない私と片腕のサスケで勝てるとは思えなかった。


 そして逃げようにも、その場所もない。


 一体のアルミラージが勢いをつけ、私に向かって跳ねた。


 その鋭い角の先が私の胸へ吸い込まれるように飛んでくる。


「クウ!」


 角が突き刺さる直前、サスケが横からアルミラージに体当りしてくれた。


 間一髪、それで角は私から逸れた。


 が、すぐに体勢を整え直したアルミラージは今度はサスケに目標を定めた。


 距離が近かったため、刺すのではなく角で横殴りにする。


 その一撃を側頭部にまともに食らったサスケは仰向けに倒れて気を失ってしまった。


 私はそれを見て、どうしようもなく悲しい気持ちになった。


(私はサスケに助けられてばっかりで、何もしてあげられてない……)


 出会った時からサスケはずっと私のことを助けてくれてきた。


 今だってそうだし、さっき右腕を斬り落とされた時だってそうだ。


 その右腕が私の目の前に落ちている。


(そういえばこの右腕で、この世界初めての昇天をさせられたんだったな……)


 私は魔素切れのムラムラもあって、場違いにもそんなことを思い出していた。


 でもあれは本当にヤバかった。耳と首筋をヌルヌルされて、すごくゾクゾクした。


(……ん?もしかして)


 私はふと、その事を思いついた。もしかしたら、この方法ならイケるかもしれない。


「レッド、ブルー、イエロー!私たちの周りを跳ねて、時間を稼いで!」


 私は最後の魔素を振り絞り、三匹にそう命じた。


 攻撃するだけの力はもうないが、相手の周りをウロチョロして邪魔をするくらいはできるだろう。


 三匹はすぐに命じられた通り跳ね始める。


 それで気を逸らされたモンスターたちは、私への攻撃を遅らせた。


「サスケ、ちょっと手を貸してね」


 私は落ちているサスケの右腕を掴み上げた。


 それは体から離れてもまだローションに覆われ、ぬるぬるしている。


 それを耳と首筋に当てた。


「ひゃあぁん」


 私はあの時と全く同じ声を上げた。やっぱりこれヤバい。すごくゾクゾクする。


 魔素切れで発情がさらにブーストされているとはいえ、この右手は相当なはかどりアイテムだ。


(さっき、食べるのが好きな人は食事で魔素が回復することがあるって言ってた。なら私はこれで……)


 私の突然のセルフケアは、その一縷の望みにかけてのことだった。


 正直うまくいくかどうかは分からないが、うまくいかなければ死ぬだけだ。それ以外にサスケを守る方法を思いつけない。


 私は一心不乱に擦り続けた。


↓挿絵です↓

https://kakuyomu.jp/users/bokushou/news/16817139557391293708


 サスケの右手とスライムたちのサポートのおかげで、私の神経は順調にたかぶっていった。


 そしてついにその時を迎える。


「っくぅぅぅ……!!」


 この世界での私の名前になった声を上げながら、ごく短時間で昇天にたどり着くことができた。


 それと同時に、自分の中に急激に魔素が戻ってくるのを感じる。


(……やった!成功だ!)


 魔素は半分くらいは回復しただろうか。


(っていうか、満タンにはならないのか……)


 この世界に来て貪欲になった私の性欲はもう一回戦を要求していたが、そんな余裕はあるはずもない。急いでスライムたちに魔素を込めた。


 その途端、それまで逃げ回るだけだったスライムたちは、まるでカードを裏返したかのように狩る側の表情を見せた。


 レッドは高熱で大気を歪め、ブルーは冷気でダイヤモンドダストを発生させる。イエローはバチバチと死の音を鳴らした。


「……思いっきりやっちゃいなさいっ!!」


 私は全力でモンスターたちを倒すよう命じた。


 残り数十匹で魔素が半分あるなら、余裕で殲滅できるはずだ。


 レッドは隕石のように敵を燃やしながら蹴散らしていく。


 ブルーに触れた敵は凍りつき、体を砕かれていった。


 イエローは瞬時に敵の神経を破壊してその命を奪う。


 三匹はそれまでの鬱憤を晴らすかのように暴れまわり、敵は轟音とともになぎ倒されていった。気持ちがいいぐらいの圧倒だ。


 そしてしばらくすると、この空間で立っているのは私だけになっていた。


「た、助かった……」


 その私もようやく緊張の糸が緩み、その場にへたり込んだ。


 それから目の前に横たわるサスケの頬を撫でる。


 起きはしなかったがちゃんと反応があり、ただ気を失っているだけだと思われた。


「ありがとね、サスケ……」


 サスケにはずっとお世話になりっぱなしだった。


 今度は私が助けてあげられて、本当に良かったと思う。


「……右手君も、ありがとね」


 私はそばに落ちていた捗り右手君にもそうお礼を言った。


 それからふと何を思ったのか、その右手に向かってあの呪文を口にしてしまった。


「セルウス・リートゥス」


 使役魔法だ。私もなぜそれを口にしたのかよく分からない。気づけばそうしていた。


 この右手は私が切り落としたわけでもないし、そもそもモンスターでもない。隷属魔法が成立するとは思えなかった。


 しかし私の青く光った指先は、サスケの右手になんの抵抗もなく入っていった。


 そして右手は一度光ってから、その表面に植物の蔦のような紋様を浮かび上がらせた。


 隷属魔法が成功した証だ。


(え?え?なんで?)


 私は自分でそうしておきながら焦った。


 親友の切り落とされた腕を使役するなんて、ちょっとヤバい人間のしそうなことだ。


 サスケが起きる前に隠さなければいけないと思い、私は格納筒にそれを入れようとした。


 が、この時初めて気づいたが、落下の衝撃で格納筒も壊れてしまっていた。


「まいったな……これ、あんまりない物らしいのに」


 私はそれで、部屋の中央の台座に浮いていた七色に輝く筒のことを思い出した。


(そういえばあれも格納筒に見えたな)


 誘われるようにして、そちらへ歩いていく。


 そして台座の前に立つと、虹色の筒は私の方へフワリと飛んで来た。


「……え?私に持っててほしいの?」


 不思議なことに、筒がそう言っているように感じられた。だから私は躊躇なくそれを手に取った。


 その瞬間、広い部屋中からその筒に向かって多くのものが吸い込まれていった。


 私は初めそれが何か分からなかったのだが、吸い込みが終わってから部屋を見回して理解した。


 吸い込まれたのは、モンスターたちの死骸だった。


「な、なんでモンスターたちを……?」


 驚きながらあらためて筒を見ると、不思議なことに七色に輝いていた筒は光を失っていた。


 今の色は吸い込まれるような漆黒へと変化している。


 そして表面には私が持っていた格納筒と似たような紋様が見てとれた。


「何だったんだろう……?これ、やっぱり見た目は格納筒みたいだけど」


 そう思いサスケの右手に向けると、案の定吸い込まれて中に入っていった。


 そしてポンポンと叩くと、また出てくる。


「ちゃんと機能するな……」


 私はまた右手をしまいながら首を傾げた。よく分からないが、こうなると普通の格納筒に見える。


 そうこうしていると、急に部屋全体が揺れ始めた。


「わ、わ、なに?」


「う、う〜ん……」


 揺れでサスケが目を覚ました。


「あれ……モンスターは?クウ、倒せたの?」


 私は必死に頭を回転させた。


 まさかサスケの右手でセルフケアして解決したとは、口が裂けても言えない。


「えっと……そう、魔素補充薬が少し袋に残っててね。それを飲んで回復できたんだ」


 我ながらよくできた回答だ。


 サスケも簡単に納得してくれた。


「そっか、よかった……って言っても、この揺れは何かマズイのかな?」


「それが私にもさっぱり分からなくて……」


「もしかしたら、ダンジョンを攻略できたってことなのかも知れないよ。最深部のモンスターを全部倒したわけだし」


 なるほど、そういう攻略条件のダンジョンもあるわけだ。


「ダンジョンって攻略されたら消滅しちゃうんだよね?中にいる人はどうなるの?」


 私は不安になって尋ねた。一緒に消滅してしまうようなら洒落にならない。


 しかし、サスケは私を安心させるように笑って答えた。


「あぁ、それは心配いらないよ。攻略するとね、中にいる人は……」


 サスケがそこまで言ったところで私たちの視界が歪んだ。


 世界全体がグニャリと捻じれ、そしてそれが元に戻った時には、私たちは森の中にいた。


 どうやらそこは、ダンジョンの入り口があった場所の森のようだった。


「……こうやって、空間転移で外に放り出されるんだ。帰り道は歩かないで済んだね。ラッキー♪」



***************



「私も今回ばかりは本当に肝が冷えましたよ。二人とも無事で、本当に良かった」


 ケイロンさんは前を向いたままため息をついた。安堵のため息だが、もう何度ついたか分からない。


 私もその都度、同じことを口にしていた。ケイロンさんの背中にまたそれを言う。


「ごめんなさい、心配かけて」


 私はケイロンさんに乗せてもらい、プティアの街へと帰還する途中だった。


 サスケはその横を徒歩でついて来ている。


 私も自分で歩けばいいのだが、魔素の消費でまた疲弊していたのでケイロンさんが乗せてくれた。


「しかもダンジョンを攻略してしまうとは……フレイさんも驚いていましたよ」


 まだ私たちはダンジョンから帰る途中だったが、街の評議長であるエルフのフレイさんへは攻略完了の旨を連絡済みだった。


 召喚で行ったり来たりしたケイロンさんが報告してくれたのだ。


 私とサスケはダンジョンを出てから、とりあえずケイロンさんを召喚することにした。ケイロンさんは消える直前に応援を呼んで来ると言っていたので、まずはそれを止めておかないと迷惑がかかる。


 ケイロンさんは召喚され、事情を聞いてから驚き、そしてそれを街の方へ伝えるためにいったん召喚を解除されて戻ってから、また召喚された。


(召喚魔法って、喚ぶ時にも結構魔素使うんだよね……)


 私は今回の件で魔素の消費についてずいぶん経験できたので、体感的にそれが分かった。


 いったんセルフケアで魔素が回復したとはいえ、その後スライムたちを思いきり暴れさせた上にケイロンさんを喚んだり戻したりしたのだ。


 魔素はまただいぶ減ってしまった。


(おかげてまたムラムラしちゃって……ケイロンさんの振動がヤバい)


 ケイロンさんは今日も鞍を着けていない。


 その肉感的な感触と歩く振動とが股間を襲い、私は一人吐息を熱くしている。


 自分の上でそんな事になっているとはまさか思わないケイロンさんは、私たちを気づかって声をかけてくれた。


「二人とも怪我はないんですよね?」


 サスケは自分の右腕を眺めた。前腕の部分がまるっと無い。


「まぁ、僕らスライムにとっては怪我って感じじゃないかな」


「ああ、そういえばサスケ君はそうでしたね。辛かったりはしないのですか?」


「痛くもないし、生やそうと思ったらすぐにでも生やせるんだけど……しっかり食べられる状態でないとちょっとキツイんだ。だから街に帰ってから生やすよ」


 そうなんだ。スライムの体、ホント便利。


「斬り落とされた右手があったらくっつける事ができて楽だったんだけどね。今頃はダンジョンと一緒に異次元の彼方かな」


 私はその言葉に冷や汗をかきながらうつむいた。


 まさか捗りアイテムとして使った上に隷属魔法をかけて所持しているとは絶対に言えない。完全にヤバイ人だ。


「クウさんも大丈夫ですか?」


「わ、私は怪我はありません。あえて言うなら、右足にちょっと靴ずれができてるくらいで……」


 カドゥケウスさんのお店でもらった靴はやや大きかったので、ダンジョン探索のように長い距離を歩くと痛みが出てきた。


 絆創膏でもあれば貼っておきたいところだ。


 それを聞いたサスケが片手で器用に私の靴を脱がした。


「早く言ってくれればいいのに。靴ずれくらいならすぐに治すよ」


「え?ちょ、ちょっと待って。本当に大したことないから……」


「僕のローションで治すのだって大した手間じゃないよ。いいからそのままにしてて」


 サスケは有無を言わさず、靴下もスルスルと脱がした。


 それをカバンに放り込み、私の足を掴む。


「どこだろ……まぁいっか。疲れてるだろうし、全体をマッサージしてあげる」


 そう言ってヌルヌルとローションで擦り上げてきた。


「ひゃんっ」


「初めはくすぐったいかもしれないけど、すぐに気持ちよくなるよ。僕んちの家族は皆マッサージが得意なんだ」


 いえいえ、初めっからめっちゃ気持ちいいのです。だから困るのですよ。


(なんか……前にもほぼ同じ状況になったような気が……)


 私は二人と初めて会った日のことを思い出していた。


 今もその時と同じように、ケイロンさんの振動に股間を責められ、サスケのローションで足を責められている。


 魔素不足で強く発情した私の体は、そんな猛攻にそう長く耐えられるわけがなかった。すぐに神経の昂ぶりが臨界を迎える。


 私は頑張って声を上げずに昇天し、また魔素が回復していくのを感じていた。



***************



☆元ネタ&雑学コーナー☆


 ここから先は筆者が話の元ネタなどを気の向くままに書き記しているコーナーです。


 本編のストーリーとは関係ないので興味ない方は読み飛ばしてください。



〈ダンジョンの本来の意味〉


 みんな大好きダンジョンですが、本来は迷宮などを意味する単語ではありません。


 お城の地下牢などを指す単語なのだそうです。


 しかし現代の日本人が暗いだけで何もない地下牢に連れて来られて、


「ダンジョンだよ」


って言われても、納得できる人はいないと思います。


「モンスターは!?ボスは!?宝箱は!?罠は!?謎解きは!?分岐道すらないの!?」


 ってツッコみますよね。


 ダンジョンと言うならワクワクがないと。


 ちなみにゲームで迷宮のことをダンジョンと表記し始めたのは、


『古い城の地下には怪物とか財宝とかいそう』


っていうイメージかららしいです。


 素直に『ラビリンス』でも良かったような気が……


 

〈巨大昆虫〉


 本作には大型の蜂モンスター、キラービーというのを登場させましたが、現実世界では『そんなデカイ虫いねぇよ』って思いますよね?


 でもいたんですよ、全長60センチオーバーのトンボが。


 と言っても、もちろん現代の地球ではありません。二億九千万年前の地球の話です。


 『メガネウラ』という古代生物で、化石を見ると現代のトンボとほとんど変わらない容姿をしています。


 しかもこいつが肉食性だったっていうからマジでヤバいですよね。


 もはや完全なリアルモンスターです。


 現代にも蘇って欲しいような、欲しくないような……



***************



お読みいただき、ありがとうございました。

気が向いたらブクマ、評価、レビュー、感想等よろしくお願いします。

それと誤字脱字など指摘してくださる方々、めっちゃ助かってます。m(_ _)m

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