第4話 ウェアウルフ
(何あれ……誘ってるのかしら?)
私はそのワイルドな金色の瞳を見つめながら、そんなことを考えた。
あれは獲物を狙う目だ。そして今夜の獲物は私かもしれない。
瞳だけではない。鋭い牙も、少し逆立った毛並みも、ワイルドという表現がピタリとハマる。
この野性味あふれる魅惑的な容姿は、もはやメスを誘っているとしか思えない。
(男はみんな狼なのよ……っていうか、本当に狼男なんだけどね)
そう、私の目の前にいるのは狼男だった。この世界では『ウェアウルフ』と呼ばれる種族だ。
狼を二足歩行にしてゴツくしたような姿で、やや背が丸くなっている。
「おはようございます、クウさん。昨夜はよく眠れましたか?」
「おはようございます、ネウロイさん。快適なお部屋で、おかげさまでぐっすりでした」
私の妄想とは反し、ウェアウルフのネウロイさんはとても穏やかな宿屋の主人だ。
私とスライムのサスケは昨夜、ここに宿をとることにした。
十室ほどの部屋がある二階建ての宿屋で、ネウロイさんが奥さんと二人で切り盛りしている。私たちが今いる一階部分は食堂になっており、宿泊者はそこで食事を食べることもできた。
多少年季の入った建物ではあるが、きれいに手入れをされているのでむしろビンテージ感がお洒落に感じられる。
「それは良かった。よろしければ、長期滞在の契約に切り替えさせてもらいますよ」
ネウロイさんの宿屋では、十日以上泊まる場合には長期滞在の契約にして割引を受けられる。
そういった事もあり、ケイロンさんの薦めでとりあえずお試しに一泊してみることになった。
ちなみにケイロンさんはこの街に住んでいるので、家族の待つ自宅へと帰って行った。
「私はそうしたいんですが、サスケに聞いてみないと……」
私は相変わらずの無一文なので、宿代はサスケが立て替えてくれている。銭がなければ当然決定権もない。
「僕もそれでいいよ。しばらくお世話になろう」
声のした方を見ると、サスケが階段を降りてくるところだった。
「おはよう、ネウロイさん。とりあえず三十日の契約でお願いできるかな。それくらいはいそうだから」
「ありがとうございます。ではそのように」
「これ、前金ね」
サスケは部屋を出る時からそのつもりだったようで、初めからお金を握っていた。
「確かに受け取りました。ちょっとうるさくて申し訳ないのですが……」
ネウロイさんの言う通り、一階は食堂なので夜でも賑やかな声が部屋まで届く。
「僕は全然平気だよ。クウもきっと、あんまり細かいことは気にしないタイプだよね?」
その言い方だと私が大雑把なズボラ女子みたいな感じがするが、正直な所うるさいのがありがたいぐらいだった。
(その方がこっちの音も漏れにくいもんね……)
私は昨夜のことを思い出して、顔が熱くなるのを感じた。
私はこの世界に来てからというもの、ちょっとしたことですぐに発情してしまう体質に悩まされている。先ほどもネウロイさんのワイルドな姿を見ただけでドキドキしてしまった。
なんとかそれを鎮めないといけないし、そもそもそのままではムラムラして眠れたものではない。
それで元の世界でもそうしていたように、思いっきりセルフケアに励むことにした。
ただ、この世界でブーストされた発情体質は並ではない。自分でも驚くほどに盛り上がって乱れてしまった。
(隣りの部屋にサスケがいるのにあんな……)
今考えれば、声も物音も静かな夜であれば隣室まで聞こえていたかもしれない。
しかし食堂から響いてくる喧騒のおかげで恐らく聞こえはしなかっただろう。
(初めに二人で宿をとるって話になった時、同室だったらどうしようってドキドキしちゃったけど……別室で本当によかった)
同室では思い切りセルフケアなどできるはずもない。
サスケが当たり前のように二部屋注文しているのを見て肩透かしを食らったような気もしたが、大人女子としてはそれで本当によかった。
「私も全然大丈夫です。うるさいくらいの方が落ち着いていたせますので」
なにか妙な言い方をしてしまったが、二人とも気にした様子はなかった。
「ではお二人とも、よろしくお願いします。サスケさんとクウさんは本日はどちらへ?」
「今日はね、クウの使役するモンスターを確保しに行く予定なんだ」
「使役?クウさんは召喚士なんですか」
ネウロイさんは金色の目を丸くして私を見た。やはり召喚士というのは珍しいらしい。
「一応そうみたいです。って言っても駆け出しで、一人と契約してる以外には使役しているモンスターもいないんですが……」
「だから、まずは街の周辺にいる弱いモンスターから隷属させていこうと思ってるんだ。とりあえずスライムとかだね」
それを聞いたネウロイさんはニコリと笑った。ウェアウルフの頭はほぼ狼だが、笑うととても優しい顔になる。
「私も今日は街の周辺で山菜を集めるつもりだったんですよ。よかったらご一緒しましょう。これでもウェアウルフですから、それなりに戦えますよ」
ネウロイさんの申し出はとてもありがたかった。
それほど危険なところには行かないとはいえ、相手は人間の命を奪うこともあるモンスターだ。戦える人が同行してくれるのは心強い。
「本当に助かります。よろしくお願いします」
私がそう言って頭を下げている時、厨房の方で声が上がった。
「あなた〜ちょっと手伝って〜」
見ると、ネウロイさんよりもやや小柄なウェアウルフが背伸びをして高い棚へと手を伸ばしている。
ネウロイさんの奥さんである、ルーさんだ。高い所に置いてある鍋を取ろうとしているらしい。
「あああ、危ないからちょっと待ちなさい」
ネウロイさんはルーさんの所へ小走りに掛けて行った。
二人は本物の狼がそうであるように、夫婦仲がとても良い。私は昨晩食堂で夕食をとりながら、睦まじく働く二人を見てそう感じた。
男は狼だなんて事をよく言うが、実は狼なら奥さんを大事にしなければならないのだ。
(いいな……あんな優しい旦那さんが欲しいな)
私はそう思いつつ、自分が男性に対していやらしい事ばかり考えているわけではない事に安堵した。
発情はあくまで発情で、体質の問題だ。
(よし。私の心は完璧な清純派女子だぞ)
自分に言い聞かせるようにしてそう満足した時、ルーさんの悲鳴が上がった。
「キャアっ」
「危ない!」
無理して鍋を落としかけたルーさんと、それを受け止めようとするネウロイさんが絡み合うようにして倒れた。
「いたたたた……」
「大丈夫かい?無理しちゃだめだよ」
ルーさんが四つん這いになり、ネウロイさんがその後ろから覆いかぶさるような形で膝立ちになっている。
私はその体勢を見て、とある英語単語が脳裏をよぎった。
(あれは……ドギースタイル!)
doggystyle
四つん這いになった状態で後ろから責められるアレだ。バックとか、ワンワンスタイルともいう。
元の世界でもそういうことに興味津々だった私は、やたらと辞書などでその手の単語を調べまくっていた。
証拠を残さぬために赤線を引いたりはしなかったが、頭の辞書にはしっかりと赤線引いてある。
(ドギーは『犬の』って意味だけど……ウェアウルフがやってるとリアル・ドギースタイルだわ)
私はそのことに感動を覚えながら、目の前の夫婦の情事を想像して一人吐息を熱くした。
それが清純派女子として正しいことなのかどうかは脳裏をよぎりもしなかった。
***************
「行ったよクウ!」
サスケの鋭い声に緊張して、私は身を固くした。手に持った棍棒を強く握り、地面を跳ねてくるスライムに目を凝らす。
(これ、当てるの難しくない!?)
ごく平凡な運動能力しか持ち合わせていない私にとって、重い棍棒をスライムに当てるのはなかなか難易度が高そうだった。
スライムは地面を跳ねて移動する。サッカーやバスケなどの球技でこぼれ球になったパスボールのようなものだ。
それが自ら動力を持って素早く動いていた。
「えいっ!」
私は頑張って棍棒を振ったが、むなしく空を切った。追い込んでくれたサスケに申し訳がない。
モンスターを使役するには、まずは私がその対象を屈服させる必要があるらしい。
だから私が倒さなければならないので、サスケが追い込み私が叩くということになっていた。
(でも、そんなに簡単じゃないな。一日かかっても倒せるかどうか……)
私が逃げて行くスライムの背中に絶望を感じていると、その前に大きな影が立ちはだかった。ネウロイさんだ。
ネウロイさんはウェアウルフらしく低い声でグルグルと唸った。
歯を剥き、鋭い犬歯を強調して相手を威嚇する。正直、私もすごく怖い。
スライムは驚いたのか恐怖したのか、いったん動きを止めた。
しかし次の瞬間には体を縮め、その反動でネウロイさんへと体当たりをかました。勇敢なスライムだ。
ネウロイさんは両腕をクロスさせてそれを防いだ。
私も一度経験したが、スライムの体当たりは重い。大柄なウェアウルフの体が一歩下がった。
スライムの方もその反動で後ろに弾かれた。そして私の目の前に落ちてくる。
「「今だ!!」」
サスケとネウロイさんの声が重なった。私もスライムがこちらに飛んできている時点で棍棒を振り上げていた。
スライムは体当たりを繰り出している時に攻撃してもほとんど効かないらしい。魔素で体を強化した状態でぶつかるからだそうだ。
しかし、魔素による強化をしていない時にはそれほど強い肉体ではない。
私はあらかじめそこを狙うように言われていたが、攻撃後で力の抜けたこの瞬間はまたとない絶好のチャンスだった。
「やぁっ!」
↓挿絵です↓
https://kakuyomu.jp/users/bokushou/news/16817139557391243231
私は着地したスライムを後ろから思い切り叩いた。
愛らしい容姿をしているから少しかわいそうな気もしたが、私はすでにこの同族から怪我を負わされている。
クリクリの瞳に似合わず危険生物だということが分かっているので、容赦はしなかった。
スライムは棍棒の形にグニャリと歪み、それから力を失って地面に平たく伸びた。
「や、やった……」
私は肩で息をしながら、ぐったりとしたスライムを見下ろした。
サスケとネウロイさんも駆け寄ってくる。
「やったね!」
「見事な会心の一撃でした。しかもちょうどいい具合に、気を失っているだけで死んではいないようです」
ネウロイさんの言う通り、スライムの体は平たくなっているものの、微妙に揺れ動いているように見える。
「二人ともありがとう。でもこのスライム……なんだか赤くない?」
そう、私が倒したスライムの体は赤かった。
先日私を襲ったスライムもサスケも、色は薄い水色だ。だからスライムは水色が普通なのだと思っていた。
「赤いスライムも普通にいるの?」
サスケが少し首を傾げながら答えてくれた。
「いるにはいるけど……レッドスライムはこの辺にはあんまり生息してないはずなんだ。ネウロイさん、見たことある?」
「いえ、ほとんど目にしませんね。かなりのレアケースだと思います」
そうなんだ。レアモンスター、ゲットだぜ。
「赤いと何か違うの?」
私の質問に、サスケは指でスライムにつついた。
「こうすると分かるよ」
言われて私も同じようにしてみる。
「……熱い?」
指先がじんわりと温まる感じがした。
「そう、レッドスライムのローションは『温度上昇』の効果があるものが多いんだ。個体差はあるけどね」
「カイロみたい。寒い日なんかは良さそうだね」
「カイロどころか、強い個体なら普通に火がつくよ」
「えっ!?」
「こいつでもまともに攻撃食らったら熱湯浴びたぐらいにはなるんじゃないかな。ネウロイさん、熱かったでしょ」
サスケはネウロイさんの腕に自分のローションをぬるぬると塗りたくった。私もお世話になったが、回復の効果がある。
「大したことはありません。ウェアウルフの毛皮は丈夫ですし、ちゃんと魔素を込めてガードしましたから」
なるほど、魔素はとにかく便利だということが分かった。
しかし私はさすがに申し訳ない気持ちになった。ネウロイさんはあくまで好意で手伝ってくれているだけなのだ。
「ごめんなさい、怪我させてしまって……」
ネウロイさんはワイルドな口を大きく開けて笑ってくれた。
「ハッハッハ。こんなのは怪我のうちにも入りませんよ。それより、こいつが目を覚まさないうちに隷属の魔法をかけてください」
そうだ、早くやらないと目を覚ましてしまうかもしれない。
隷属魔法は相手を屈服させて状態で使う。
屈服がどのような状態を指すかはケースバイケースらしいが、少なくとも攻撃して気絶させている状態なら大丈夫だろうと物識りのケイロンさんが言っていた。
そのケイロンさんから教えてもらった呪文を口にした。
「えっと……セルウス・リートゥス?」
それを言い終わるのと同時に、私の右手の人差し指が青く光りだした。
妙に落ち着く青で、ラピスラズリを思わせるような色だった。
「この指をモンスターに……」
私は光る指でレッドスライムを突いた。
すると不思議なことに、指はレッドスライムに触れてからも全く抵抗なく奥まで入っていった。レッドスライムの体も変形していない。
「わ……わ……わ……」
私がその光景にあたふたしていると、今度はレッドスライムが青く光り始めた。
それはすぐに目を開けていられないほどの眩しさになり、私たちは目を閉じた。
少しして目を開けるとレッドスライムの光はおさまっており、代わりにスライムの表面には蔓のような紋様が浮かび上がっていた。
それを見た私はポツリとつぶやいた。
「成功……したのかな?」
「そうじゃない?その紋様、たまに見かけるよ」
サスケの言う通り、私も街に来た当日に同じ紋様の入ったモンスターを見た記憶がある。それも街中で。
召喚士に隷属させられたモンスターには必ずこの紋様が入るという話だった。
そのため、これが見えるところにあれば街中でモンスターを連れていても咎められることはないらしい。
(なんか実感ないけど……)
そう思った時、伸びて平たくなっていたレッドスライムがむくりと起き上がった。そしてクルリとこちらを向く。
その瞬間、頭の中に抽象的な思考が浮かび上がった。
ただ思考と言っても、それは私のものではない。目の前のレッドスライムのものだ。
(なんていうか……好奇心と不安って感じかな?ご主人様になったのがどんな人間か気にしてるみたい)
どうやら召喚士は隷属させた相手の思考が念話のような形である程度分かるらしい。
私はレッドスライムの不安を除いてやるために、できるだけ明るい笑顔を作った。
「はじめまして。私の名前はクウだよ。怖いご主人様じゃないと思うから、大丈夫」
そう言って頭を撫でてやった。
レッドスライムに笑顔が認識できるのかどうかは分からなかったが、少なくとも安心はしたらしい。
そしてその次には、ご主人様に対する愛情があふれてきたのを感じた。
レッドスライムはいったん縮み、それから跳ねて私の胸に飛び込んできた。
「キャア!」
私は悲鳴とともに、押し倒された。
レッドスライムは嬉しそうにその顔を私の胸に押し付けてくる。
ぬるぬるのスライムローションを身にまとったまま。
「ちょ、ちょっと待って!待て!待てってば!」
レッドスライムは私の命令を聞き、離れてくれた。
しかし服はすでにローションまみれで、シャツが透けて下着が浮かび上がっていた。
(やだ……私いやらしい格好になってる……)
私は自分の格好に自分でドキドキしてしまったが、サスケとネウロイさんは全く気にした様子もなく隷属魔法の成功を喜んでくれた。
「おめでとう、クウ!使役モンスターの第一号だね!」
「一度で成功とは素晴らしい。初めての魔法とは思えませんよ」
そうですか、私は下着が透けててもいやらしさの欠片もありませんか。
男二人の反応になんとなく悔しさを覚えたが、隷属魔法が成功したことはもちろん嬉しい。
それに、自分のレッドスライムだと思うと妙に可愛く思える。
「よし、君の名前は……レッドだ!レッド、これからよろしくね」
これは後で聞いた話だが、私が初めての使役モンスターにそう名付けた時、男二人は全く同じことを思っていたらしい。
(名前……安直すぎないか?)
***************
「やったぁ〜、イエロースライム、ゲット〜♫」
私は目の前の黄色いスライムに青く光った指を挿し込みながら、上機嫌に声を上げた。
イエロースライムは一度光ってから起き上がり、こちらを向いた。
レッドの時もそうだったが、隷属魔法をかけた後は体力が回復するらしい。すぐに元気に跳ね始めた。
「はじめまして、今日から君の名前はイエローだよ。レッド、ブルーとも仲良くしてね」
私はレッドとイエローの間に、ブルースライムのブルーとも隷属魔法を交わすことに成功している。
順調に三匹のスライムたちをゲットできたのだ。ご機嫌にもなる。
(しかも、三匹ともこの辺じゃレアなモンスターらしいし。ラッキー♫)
レッドのスライムローションには温度上昇の効果があったが、ブルーには温度低下、イエローには電流の効果があるということだった。
上手く使えばいろいろ便利になりそうだ。
ちなみにブルーはレッドの時よりも順調に捕まえることができた。というのも、レッドがなかなか良い動きをしてサポートしてくれたからだ。
だからイエローの時にはブルーも参戦して、より楽に倒せた。
隷属させたモンスターは念じるだけで動かすことができる。
しかも細かい動きをいちいち念じなくても、大まかな目的を伝えれば自分で考えて動いてくれるので楽ちんだ。
「よ〜し、三匹整列!」
私が念じると、左からブルー、イエロー、レッドの順で並んだ。信号機カラーだ。とってもかわいい。
(いや……信号機よりもアレを目指したいな)
私はそう思ってサスケに聞いてみた。
「ねぇ、緑とピンクのスライムはいないのかな?」
「え?……あぁ、いるよ。グリーンスライムもピンクスライムも」
(やった!ということは、スライム戦隊ができる!)
そう、レッド・ブルー・イエロー・グリーン・ピンクが揃えば戦隊ものヒーローの出来上がりだ。
私は密かにこの世界での目標を一つ立てた。
が、今はそれよりも気になることがある。
「サスケ、どうかしたの?なんだか難しい顔してたけど」
私から質問を受けるまで、サスケは口元に手を当てて何か考えているようだった。
「いや、レッドスライムに続いてブルースライム、イエロースライムなんていうこの辺にいないはずのモンスターが立て続けに現れたから、ちょっと気になって……」
サスケはチラリとネウロイさんの方を見た。
ネウロイさんはサスケの言わんとすることがよく分かったようで、コクリとうなずいた。
「そうですね、気にかかるところです。私の方で評議会へ報告しておきましょう」
どうやら何かしらの問題があるかもしれないらしい。
私がそれを尋ねようとした時、股間にビリビリとした刺激が走った。
「ひゃあっ!ちょっとイエロー!何してるの!?」
イエローが私のスカートの中へ侵入して跳び上がり、体を押し付けて来ていた。
その特殊効果である電流のせいもあって、私は尻もちをついて倒れた。
そこへレッドやブルーも擦り寄って来る。
サスケがその様子に笑い声を上げた。
「ははは、三匹目ともご主人様にじゃれたいんだよ。可愛いやつらじゃない。応えてやらないと」
「いや、確かに可愛いけど……ちょ、ちょっと……!」
スライムたちのローションで、私の体がぬるぬると擦られる。
しかも熱い、冷たい、ビリビリするという微妙な刺激まで加わって、私の背筋はゾクゾクとした。
(これはマズい……何かまた、妙な扉が開いてしまう気がする!)
私は快感とともにそんな危機感を覚えたが、ご主人様としては使役モンスターとのコミュニケーションも大切な気もする。
止めるべきなのかどうなのか。
そう思っている間にも、三匹のぬるぬるスリスリ行為は続く。
「熱いっ、冷たいっ、ビリビリするっ!熱いっ、冷たいっ、ビリビリするっ!」
しばらくの間、森の中に私の妙な嬌声が響いていた。
***************
☆元ネタ&雑学コーナー☆
ここから先は筆者が話の元ネタなどを気の向くままに書き記しているコーナーです。
本編のストーリーとは関係ないので興味ない方は読み飛ばしてください。
〈体位と妊娠率〉
他の作品内でもちょっと触れているんですが、筆者は三度の流産と不妊治療を経て子供を授かってます。
そういう経験があるので、ちょっと真面目な視点から体位の話を書きたいと思います。
『妊娠しやすい体位はどれ?』
というのは、不妊治療を行う人なら一度はネットで検索したことがあるでしょう。
その答えは、
『どれでも変わらなさそう』
というのが今のメジャーな結論になっています。
一部で『この体位がいい』とか『膣の形状による』とかいう意見もあるのですが、それを肯定するに足る十分なデータは無いようです。
まぁ今後大規模なデータを取れば一定の傾向は見られそうな気もしますが、現状では気にしても仕方なさそうですね。
不妊治療経験者としては子作りを無理なく続けられるよう、お互い楽しめるやり方が良いと思います。
不妊治療って経験しないと分からない過酷さがあるので、出来るだけ負担を減らしていくのが大切だと思います。
〈人狼とネウロイとルー〉
ネウロイというのは黒海の辺りに住んでいた民族で、狼男の格好をして祭祀を行っていたそうです。ちょっと仮装パーティーみたいで楽しそう。
かの有名な歴史家であるヘロドトスも『ネウロイ人は狼に変身するって話を聞いたよ。俺は信じてないけどね』とか著書に書いています。
ルーの方は、フランスでは人狼のことを『ルー・ガルー』と呼ぶらしく、そこから取りました。
ちなみにこの人狼伝説、世界各地に色々な話があってちょっと面白いんですよ。
満月で変身して暴れるモンスターというのが一般的なイメージですが、中には悪い魔法使いや悪魔を退治するなんてものも。
狼は基本的に害獣なんですが、神秘的な良いものという認識の土地も多いようですね。
モンゴルの人々なんかは自分たちの祖先を『蒼き狼』だと言っていたりします。
蒼き狼、カッケェ。
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