心を照らし、暗がりに寄り添ってくれる物語

愛情でも信頼でも依存でもなく、「共依存から始まる成長と愛の物語」。この小説のストーリーや魅力がギュッと詰め込まれた、大好きなキャッチコピーです。

奏澄はある日海に突き落とされ、異世界へと転移してしまう。そこで出会った傷だらけの海賊を助けたことで海賊は奏澄の用心棒となり、元の世界へ帰るための旅が始まる。

鮮やかな導入、無理なく噛み合う様々な要素、それらを描き出す筆力。小説の最初から最後まで全部が好きで、名場面だらけなので、魅力を挙げ出したら切りがありません!

現代社会で生きづらさを抱えていた奏澄は、異世界に転移し、メイズや仲間と関わる中で己の内面と向き合い、様々なことに気づき、考え、成長していきます。
また、一生懸命な奏澄の生き方は周りを惹き付け、彼女は次第にたくさんの仲間に囲まれていきます。
メイズとの関係、そしてその他のメンバーとの関係が徐々にしっかりとして、お互いが信頼で繋がれていく様は、読者にも勇気や希望を与えてくれます。
しかし、作中で大事に描かれているのはそういった正の面だけではありません。負の面にも角度を変えながら丁寧に寄り添っています。
己を形作っているもの。自分の価値観という殻を割り、他人や世界に馴染もうとする様。アンビバレントな感情、等々。影になっているところに光を当て、漠然としていたものに形を与えるように、一筋縄ではいかない人の心が絶妙に描き出されています。
その切り込み方の下地には、経験と観察だけでなく、知識もあるのではないかと感じました。

成長と愛には光ばかりではなく闇の面もある。明るい気持ちにも暗い気持ちにも寄り添ってくれる、希望や感動に溢れた物語です。
是非たくさんの方に読んでいただきたいです!

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