第24話 捻れた世界で見つけた奇跡

 私は久しぶりに自分の体に戻り、眠れた。美優お姉さまの体は足も遅いし、体のキレも無さすぎて、動き回るのには向かない。私の体は動きが違う。

今日も朝から面白カップルの観察をしている。


 こんな調子で朝を過ごし、登校中も変わらず。ずっと引っ付いて離れない。

すると、恋歌が登校してきたので、

「恋歌お姉さま~。」私はわざと呼び止めた。


「なんだ、自分の体に戻ったのか、せっかく美優の体をくれてやったのに。」

 恋歌は私の行動にガッカリしていた。


そして今の美優を見て、

「我が元姉は美優の体に呑まれているな、愚かな女だ。」

 自分をコントロール出来てない姿を見て愕然としていた。


でも、私は、

「そうでも無いですよ?見てください。あの幸せそうな美優の姿を。」


 私が指を差すと、ベッタリ引っ付いて離れない美優お姉さまとお兄ちゃんの姿がそこにはあった。時より、理不尽な要求をしているお姉さまに私のお兄ちゃんは優しく答えていた。

「愚かでは無いんです。今までのどの美優よりも幸せなんです。恋歌お姉さまが作りあげた世界はイビツでしたが、男性と女性が最も幸せに過ごせる世界だったんです。それにほら、あそこの男女も。」


少し向こう側に、昨日に恋歌が入れ替えた男女が一緒に歩いていた。

男子になり不安いっぱいの元女子の隣に寄り添う元男子の女子生徒がいた。


「恋歌お姉さま、今ならあの男女を元に戻しても問題無いはずですよ。」

 私がそう話すと、


「ふん、そんなわけないだろ。試してやる。おい!」

 その男女を止めた恋歌が話し掛けて、


「反省をしたなら体を元に戻してやってもいいぞ?」と話し掛けたのだが、


「出来れば戻りたく無いです。」女に戻りたいはずの元女子が答えた。

「僕は彼女にまかせます。」と元男子の生徒は答えた。


「なぜだ?」恋歌が疑問に思い、二人に聞いている。


「前の私の体はいつもイライラしていました。だけど、彼の体はとても穏やかな気持ちでずっと過ごせるんです。それに元の私の体にいる彼がいつも優しくしてくれるんです。」と理由を話している。


「僕は彼女の気持ちが分かったんです。彼女の体は不快感がスゴいんです。心と体のバランスが悪くてイライラしているんだと思いました。元に戻ってそんな辛い思いを彼女にさせたくないんです。」

 元男子生徒はやはり相手を思いやる優しい人だった。


その後、恋歌は二人を元に戻さず、そのまま二人は学校に向かっていった。


恋歌には理解できなかった。そんな彼女に私は、

「この世界の男性には長年の積み重なった歴史のせいで、怒りや憎しみの感情が欠如しているんです。虐げられて蔑まれる存在のはずなのに、そこには負の感情がなく反対に優しさが増したんです。」


「つまり、女尊男卑の世界を作って虐げたはずの男でいる方が幸せに暮らせるんです。怒りや憎しみを感じないんですから…。あなたが罰として入れ替えた女を男の体した結果が、彼女にとっては最も幸せな結果になったんです。」


 この事実が分かれば、誰も女になりたがらないよ?だって怒りと憎しみを感じないんですよ?男になれば、いつも幸せな日々を過ごせるんです。


「これが?お姉さま。」と脅してみた。


「そんな訳が無い!お前ごときの頭で理解できる事を私が理解できない…そんな事が存在するわけがない!」

 恋歌は私に負けた事を認めずに自分が正しいと言い張る。


「実は私が最初に気付いたんじゃないんです。一番早く気づいたのは聖奈お姉さまなんですよ?」

 もっと、怒らせるように言ってみた。


「あの天然怪力ポンコツ女が気付く訳が無い!嘘を付くな!」

 (ひどいな~。聖奈お姉さまはそこそこ頭良いですよ?)


「あの性欲モンスターは男性と性行為ばかりしているんです。その時、男たちが自分の事を一度も否定して来ずに、ずっと優しく愛し続けてくれる事に気が付いた。だから、無類の男性好きになったんです。」


「男を下に見ているあなたじゃこの事実に気付かないんですよ。なんなら、男になって試してみればいい。それで恋歌も毎日、幸せに暮らせるよ?」

 挑発を加えてさらに完璧主義の女を精神を揺さぶる。


少し考え込むと恋歌は冷静になって

「どのみち私の協力なしじゃ、世界は変えられないわ。そんなに幸せな世界なら変える必要は無いよね?」

 いや、恋歌の考えは甘いよ?

 一人の人間が出来ることなんて、高が知れている。


 もう、すでにこの世界の崩壊は始まっているよ?恋歌?

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