第17話 世界を変えても、人間の愚かさは変わらない

 あの美優の中にいた悪魔は男性に強い恨みがあったのか、やたらと男性を中傷していた。そして男性蔑視の世界を作り上げたのだ。


私と同じ学年全体で300人くらいだから、男子生徒は全部で15人くらいか…。

恋歌が私と悟くんの力を利用して作った世界は捻れ過ぎていた。


「私のクラスに男子を集中させているから、半分よりちょっと少ない感じに見えるけど…この人たちだけしか、同級生の男子はいないのよね…。」

 悟くんに私が話すと、


「本当に俺でいいの?俺は男だから、美優が変な目で見られてしまうよ?」

 この世界の男性たちは数も体格も負けているから、女性に怯えている。


「悟くんは私が守るよ。大丈夫だから…。」私が言っていると、


「お前は幸せだろ?私は妹の事が可愛いからな。すべての願いは叶えたよ?」

 恋歌が私に話し掛けてきたので、


「全部は叶っていません。優しくて大好きな美優お姉さまがいない世界。あなたの中にいるお姉さまを返して下さい!」

 私は恋歌を睨み付けた。


恋歌は、

「美優?なに言っているの?私は恋歌よ。じゃあ、美優じゃないあなたは誰なの?」(私は、私は、ダメだ。思い出せないよ。)


「あなたは私に何をしたの!記憶がおかしいの。私は美優じゃなかったのに前に誰だったかが思い出せないの!」私は誰なんだ…。


「私には、美優にしか見えないけど…。ほら。」恋歌は鏡を見せてきた。


 私が覗き込むと、鏡には美少女の美優が映っていた。でも、この顔は私じゃない。じゃあ、何故…前の私の顔が思い出せない…この女は私に何をしたの?


「きっと、悪い夢でも見たんだよ?美優。お前は私の妹だよ。」


 この人が何をしたのかは分からない、でも、私は決めたんだ、優しいお姉さまを取り戻すことは忘れないから。だから今は、

「ごめんなさい、恋歌お姉さま。私、どうかしてた。」


「いいのよ。美優。大丈夫?」恋歌が心配してくれた。


仕切り直した私はこの世界について聞くことにした。

「恋歌お姉さまはなぜ、男を減らした世界を作ったの?」

 一番の理由が聞きたいのだ。姉はこの世界に何を求めたのか?


「お前は世界の独裁者がすべて男性なのは知っているよな?戦争が起これば負の感情は全部、弱い者にぶつけられる。女や子供は虐げられ、道具のように扱われる。お前は、平和な国に住んでいるからまだいい。だが、紛争地域に行けばお前も私も無理矢理、男にレイプされて、逆らえば殺される。美人なら尚更だ。」


恋歌はさらに続けた。

「美少女の美優は何もしなくても男が寄ってくる。一日中言い寄られるんだよ?対して容姿が良くないと思われると、何もしなくても、蔑まれる。なんでこんな事が起こるか分かるか?男女比率が平等だからだ。この比率で男が弱くなったら、どうなる?女がパートナーに求める事を女で補うのだ。」


「女が求めることは女でできる事ばかりだ。子供を持とうとする場合も、精子さえあれば男など必要ない。むしろ、女性同士の方がいい。痛みや苦しみを共有できる点を考えれば、この世界の男は相当の努力をしないと女性を手に入れる事ができない。」


「男を家畜として飼わないだけ、まともな世界だと思え、と言いたい。」

 怒りを込めた恋歌は私に本音を話してくれた。


 確かに世界はこの場合が平和なのかもしれない。でも…こんなやり方は違うと思う。だって…見てよ、お姉さま…。あの男の子たちを…。あんなに私たち、女を見て怯えているんだよ。あの子たちは、この世界に生きる希望を持っていないよ?


 やっている事は、前と一緒だよ?

 男が牛耳る世界を女が牛耳る世界に変えただけだよ?


 決めたよ。お姉さま、私は女だけど、男の子に味方する…。

 だから、お姉さまが作った世界を妹の私がぶっ壊すよ?


 姉の過ちを正すのは妹の私しかできないから…覚悟してね、恋歌!

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