第10話 矛盾だらけの美優と恋歌の改変能力

ヤンキーの純(兄)は家に帰って早速、

「おい!てめえ!昨日はよくも嫌がる俺を犯しやがったな!今すぐにぶっ殺してやる!」

 そうなるよね。ヤンキーに生まれ変わったもんね、お兄ちゃん。


「すまかった、俺を美優を許してくれ!」

 悟吏(美優)が土下座で謝っている。


「待って、お兄ちゃん。美優お姉さまは記憶を失ったらしいの。」

 私は事情を説明すると、


「じゃあ、こうしようぜ。俺は純、姉さんは美優、お前は悟吏だ!もうお互いの体で生きよう。その方がいい。」

 お兄ちゃんはもう記憶はあるけど、別人になってしまった。


「それで美優だった俺を許してくれるなら…。」お姉さまも別人だった。


「分かった。もう今日は帰るね。」

 私に出来ることは無いと判断して柏野家に帰る事にした。


 恋歌お姉さまに伝えて今日は休もう。



柏野家に戻った私は、恋歌お姉さまに報告していた。

「すまかった、我が愚妹が引き起こした事でつらい思いをさせてしまった。」


「いえ、私たち三人が起こした事ですから…。」

 私なりに恋歌お姉さまへ謝罪していた。


「お前が望むなら、私が兄を救ってやれる。」お姉さまは提案したが、


「恋歌お姉さまを巻き込む訳には行きません。また罪を重ねる人を増やすことになります。」何をするかの予想は付いたからお姉さまを止めた。


 私はまだ、あの美優って言う人物がよく分からないのに、動くのは止めた方がいいと恋歌お姉さまに言うと、


「愚妹の責任は姉の私が背負うべきものなのだ。行こうか、朝倉家に。」

 そう言って無理矢理、私を連れて朝倉家へ行った。


「恋歌さん…俺は…。」美優お姉さまだった悟吏がお姉さまに謝罪したら、


「たわけが、体に意識を呑まれよってだから、愚妹なのだ!貴様は!」

 お姉さまはメチャクチャ怒鳴り散らしていた。


「恋歌さん、俺はこの体が気に入ったんすよ。」

 純(兄)は口が悪かったので、当然、


「貴様は!目上に対する口の聞き方が分からんのか!」

 こちらもメチャクチャ怒鳴られていた。


「お前ら!手を貸せ!」私たちの手を取ったあと、

「ここで怒った事象をすべて無かった事にしてやる。」

 恋歌お姉さまは過去改変の力を使った。


そして私は一瞬だけ意識を失ったが、すぐに戻ってきた。

「あれ?変わっていないですよ?恋歌お姉さま?」

 私の前には、私とお兄ちゃんと恋歌お姉さまがいた。


「しくじったぞ…。何故だ?」

 私(純)がそう話した。


「ん?なにしてんだ?俺は…。」お兄ちゃんがしゃべっている。


「あれ?もしかして私、恋歌お姉ちゃんになっている?」

 恋歌お姉さまは自分の名前を呼んでいた。


「どうやら元に戻ったのは悟吏のみらしい。恋歌の私が純になり、純は美優のまま、そして美優は私、恋歌の体に変わってしまった。」

 やっぱり過去改変は危険な事だったんだ。


「おい!愚妹の美優よ!お前が撒いた種だ責任を取れ!しばらく私として暮らせ。」

 恋歌の体に変わった、美優お姉さまは怒鳴られ、叱られていた。

 

「分かりました、お姉ちゃん。ごめんなさい。」

 恋歌お姉さまになった美優お姉さまはへこんでいた。


「帰るぞ!悟吏!付いてこい!」

 元に戻った、お兄ちゃんは怒鳴られていた。


「はい!純!」従順に付いていった。大丈夫かな?


「美優お姉さま、私たちも帰ろっか…。」

 恋歌お姉さまになったお姉さまを連れて帰って行った。



柏野家への帰り道、

「恋歌お姉さまは何をしたのですか?」

 過去改変の手法が違ったので、知っていそうな、美優お姉さまに聞いた


「恋歌お姉ちゃんはこの世界で起きた事象をキャンセルしたのだ。しかし、入れ替わった人の記憶は戻せたが、体の戻し先が女性の三人でずれたのだ。」

 (恋歌お姉さまには、成功する自信があったなのに…。)


「だから、美優の体から変わっていないお前と、使用者のお姉ちゃんはすべて覚えているんだ。私は自分が何をしていたか忘れたが、目の前にお前たちがいたから、姉のしたことだと、すぐに理解できた。」


私は考えていた。

 (やっぱり、おかしい…。これほどの聡明な人物が男になったからと言って、妹の体を傷付けるか?それに芯があるはずなのに…そんな人は記憶を失う訳が無い。記憶喪失と言う嘘を付いているのか?では、何故?)


「私が自我を失ったんだな…。お前と恋歌お姉ちゃんには申し訳ないことをしてしまった。戻し方がわかり次第、試してみる。少し待ってくれ…。」

 (この人?本当に美優お姉さまなのかな。)


「分かりました。では、今から、恋歌お姉さまと呼びます。」

 私がそう話すと、


「ああ、私の大好きな妹の美優、よろしく頼む。」とお姉さまは答えた。


 (順応性が高過ぎる…。お姉さまなのに、他者に入れ替わるなんて面白いことをまったく楽しまない…。ハイテンション無茶苦茶、喜ぶはずなのに、やはり…いつもの美優お姉さまじゃない。)

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