第9話 私の体で記憶を取り戻した兄
私の体で派手な立ち回りをしたお兄ちゃんが、
「純、迷惑を掛けたな。大丈夫だ。」記憶を取り戻した兄。
「どう?私の体、楽しいでしょ?」私の身体能力の高さを聞いてみた。
「おう、最高だな、部活に入って本格的な格闘技を始めようかな。」
兄はものすごく上機嫌だった、若干、前の人格を失ってハキハキした体育会系になってしまったのは誤算だったが、もう本人の記憶が消えることは無いだろう。
聖奈さんが私たちの元にやってきて、
「私、純ちゃんが気に入ったよ?生徒会に入らないかな。」
純(兄)を誘っているみたいだ。
「聖奈さん、俺は戦いたいんです。この体で最強を目指すんです。」
私…やっちゃったな~。男らしくしすぎたよ…。お兄ちゃんを。
「生徒会長の席、私を倒してから、欲しくない?」
聖奈さんが謎の勧誘を始めた。
(聖奈さん…生徒会は格闘集団ではありませんよ?)
「あんたを倒せば、俺は最強になれるのか?」
「私に付いてきたら、世界最強になれるよ?」
聖奈さん…さっきから何を言っているの?生徒会に
「いいだろう!生徒会に入って俺がお前を引きずり落としてやる!」
兄が私(純)の体を使ってヤンキー漫画の世界へ旅立ったよ。
「美優ちゃん。そう言うことだから、純ちゃんをもらうね?」
どこでも連れていってください。体に心が吞まれるバカの面倒は見切れませんよ。
ハイテンションの純(兄)と嬉しそうな聖奈さんは二人で出て行った。
道場に残された私は、「う~ん。上手くいかないな…。」と呟いていた…。
兄が悟吏だったと認識出来てるだけ、まだましか。
柏野家に帰りたかったけど、美優お姉さまが心配になり、朝倉家に帰る事にした。
家に帰ると、悟吏(美優)が料理を作っていた。
「美優お姉さま?どうしたんですか?今朝の事を反省なさって、そんな事をしているのですか?」
変態の姉が取っていた行動はある意味、奇行だった。
「美優、何の話だ?それに純はどうした?」(はっ?)
(あなたまで記憶をなくしたとか、舐めた事を抜かす、おつもりですか?)
「純に何をしたのか覚えていますか?」襲った事を覚えているか聞いてみた。
「覚えていない、今朝に蹴られて気を失った事までは覚えているが…。」
大事なことを忘れるなよ。妹を強姦しただろ?
お姉さまにも話してあげよう、
「あなたは男の欲望に負けて、妹を無理矢理襲った。そして記憶を失わせて、あなた自身も何故か、そこの記憶を失ってしまった…。」
昨日の事で純の処女を奪った事と記憶が美優だった事を伝えた。
「そんな…、もしかして純が帰って来ないのは、俺のせいなのか…。」
「許してくれ!純!美優だったとは言え、大切な妹をそんな目に遭わすなんて、兄失格だな…。」
「もういいよ。だけど記憶は取り戻してよ。じゃないとまたややこしくなる。私にできる事なら、なんでもするからさ~。」
美優お姉さまが元に戻らないと話が進まないからな。
「俺は純(悟吏)にも恋歌さんにも謝罪してくる。」
この人は謝罪ツアーでも始めるつもりか?
とりあえず止めたが、どうすればいいんだろ?お姉さまを目覚めさせる方法は刺激を与える事だ。お兄ちゃんの本当に好きなものは何だろう…。
本人に聞くか、二人いるし。
「お兄ちゃんが好きなことって何?」私は、
美優だった頃の記憶を失ってしまった。一人目に尋ねた
「平穏で平和な生活かな?」って答えた。
意味が分からないよ?なんで真逆の事をしてんだよ。この人は、
「男の欲望に負けたのにそれは無いでしょ?他には?」
ずっとおかしいよ。まるで真逆の性格…。この人は…。
「俺は美優に常に振り回されていた。なのに、アイツを嫌いに慣れなかった。許嫁だからって最初は思っていたけど…。それも含めて好きなのかもな。」
そう言えば、お兄ちゃんの体はドMだったよね…。体は痛め付けられる事を何よりも望んでいた。なのに、何故?強姦をしたのだろう?
この頃から…いや?最初からずっと思っていた。私は目の前にいる、美優お姉さまはいったい誰なんだ?体に負けない精神を持っているはずなのに、記憶を失ってしまっている…。矛盾だらけの人間だ。
私はこの頃にこの人の真意を見抜いていたら、後に起こることを回避できたのに…と後悔していた。
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