第8話 柔道の道場で総合格闘技?

私は、お兄ちゃんを取り戻さないといけない。

そのためには、私の体を好きになって手放したくないと思わせないといけないのだ。


私の体になって一番楽しいのは、高い身体能力を活かしたスポーツをすること。ただ、どの分野でも、私に勝てる相手はこの人以外、存在しない…。


それは、世界最強の腕力を秘めている怪物生徒会長の桜庭 聖奈のみだ。


この聖奈ポンコツは天然怪力美女で付き合った男まで破壊する。隠れ性欲モンスター。

そして、放課後になり、私は妹を連れて柔道部の道場にやってきた。

柔道部員はもちろん、聖奈パワーを知る人間たちの観客で埋め尽くされていた。


「来たね、純ちゃん。私は生徒会の存続をかけてあなたに挑むけど、負けたら、私のいう事、何でも聞いてね?」

 生徒会が掛かっている事が今の異常な態度に出ているみたいだ。


「私に勝てる女性が存在するとは思えませんけど…。」妹は自意識過剰だ。


 他人目線で見た私ってあんなに、狂った戦闘マニアだったんだ。

 モテないよアレじゃあ…。(私がモテない理由を知りショックだよ。)


 勝負は総合格闘技で決める事になったが、私は妹に、

「純ちゃん…、捕まったら終わるよ?聖奈さんの腕力で骨が折れて、怪我じゃすまなくなるよ?分かった?」アドバイスをすると、


「美優お姉さま、貴重なアドバイス、ありがとうございます。ただ、あなたもいずれ私と戦ってくださいね?」

 純の体にいる、もう一人の私は美優になった私とも戦いたいらしい。

 (狂っているね、純は。だって…変態の美優お姉さまの妹だもの…ね。)


 前の世界でも本気で戦うことがなかったし、どっちが強いのかな?聖奈さんは、武道の知識はなさそう。きっと天然だから、腕力でモノをいわして来ると思うけど…。


二人とも制服のまま、戦うのかな?まあ、いっか、絵になるし。


 そして、戦いは始まった。

まず純はスピードを活かして相手の腕を持とうと試みている。柔道技をかけるのかな?捕まったら終わりって行ったのに…。

対して聖奈さんは笑みを浮かべて難なく掴もうとする手を交わしているが、攻撃の一瞬の隙を突いて腕を掴んで…そのまま純を投げ飛ばした。

(聖奈さん、それ?なんと言う技なのかな?アームスルー?)

 だって漫画でしか見たこと無いもん片腕で相手の腕を掴んで遠くに投げるなんて…。


 純は受け身を取りながら普通に着地したけど、着地の衝撃を考えたら少しは痛いはず…。どうするの?相手は人間じゃないよ?


 すると彼女は顔以外の部分に蹴りを入れようと下段と中段のに蹴りを入れたりフェイントで逆回転蹴りを加えるが、後ろに下がられて交わされている。


(聖奈さんには格闘術の知識はない。ただ体が勝手に避けているだけだ。)

 純は先読みして蹴っているはずなのに、不規則な体の動きで読みきれずに当たらないみたいだ。でも、二人とも楽しそう。笑顔で戦っているよ?


 もう一度、純が蹴りを入れた時に、今度は純の足を掴み、そのまま一回転して遠くに投げ飛ばした。(片手ジャイアントスイングだ。)


 純は受け身を取ったが、さすがに盛大に転んでしまった。このままでは負けるな、私の妹は。その時に、

「痛って~。なんなんだよ!あの生徒会長は!」

 あっ、私の中から、お兄ちゃんが出てきた…。呼んでみよう。


「お兄ちゃん!手を貸そうか?」私がそう言うと、


「純…。俺と聖奈さんの戦いだから、邪魔しないでくれ。」

 私の体にお兄ちゃんが帰って来ていた。(よし!作戦通り、あとは。)


「ふふっ。降参して、私の後継者になりなよ。純ちゃん。」

 聖奈さんは余裕みたいだ…。


「俺はまだ負けてないよ?聖奈さん。今は女同士だからな、容赦しない!」

 やっぱり、男の子は戦いが好きなんだよ。優しいお兄ちゃんでも一緒だ。


 純(兄)が考えた次の作戦は接近して相手の力を利用する投げ技を決めようとしている。捨身技だな~。捕まったらチョーク食らって沈められるよ?


 よし、手伝うか…。


右腕を掴んで内巻き込みをしようとする純に対して、空いた左腕で一気に絞め殺そうとする聖奈さんの左腕を、私は左足で上段蹴りをする形で払い除けて横やりを入れた。

蹴りの衝撃で体を取られた聖奈さんに純の投げ技が決まった。倒れた聖奈さんの腕を純が固めて勝負が決した。


「二人がかりなんて聞いて無いよ~。」腕を固められた聖奈さんは、

 逆の腕をバタバタさせて文句を言いながら、降参を認めていた。


「一対一とは、言ってないですよ?それに…私の可愛い妹を勝たせてあげたく、なっただけですよ?聖奈会長。」どのみち、こうする予定だったし…。


学校の格闘マニアたちが見届けた世紀の一戦は、

横やりの反則をした、私+純(お兄ちゃん)の反則勝ちで幕を閉じた。


しかし、姉妹の勝利をみんなは歓声と言う形で祝福してくれていた。

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