第2話 兄の女子高生デビューと野獣の駆除

 さっきからお兄ちゃんが女の子の体で学校に行くのを躊躇っている。


「昔の私はそんな感じだったのかもしれませんね。妹が好きなら出来るでしょう?お兄ちゃん。」

 この際ですから、妹、純の悩みを味わってください。


「分かったよ。俺、ガンバるよ。」お兄ちゃんは向いてるね、女の子。


二人で家を出た。

「まさか、本当に純になる日が来るとはな…。」

 私とお兄ちゃんの出会いは新学期の入れ替わり風の騒動だったらしい。


「私の体は動きやすいでしょ?体力あるし、足は長いし。」

 私は同じ女子でも、ここまで体力差があるとは思わなかった。


「性別の違いで違和感はあるけど、俺の体より、体力あるな、ここまで鍛えてるなんて、スゴいよ純は。」

 私はお兄ちゃん(私)を見上げながら話す日が来るとは思って無かったよ。


「純の方は美優の体で不便はないか?大丈夫なのか?」

 お兄ちゃんは優しい、いつも他者心配なのだから…。


「ありがとう。ちょっと非力なだけで他は大丈夫だよ、お兄ちゃん。」

 私は性別が同じになり、お兄ちゃんとより仲良くなった気がした。


しかし、あの変態お姉さまはどこに行ったのだろう…。

まさか、すでにどこかの女性を襲ってしまったのでは?と考えてしまう。


「大丈夫だよ。純、俺の見た目はあまりモテない。」

 お兄ちゃんが自虐を言い出したけど、モテは関係ないよ?

 だって強姦するなら力ずくだもん。


意外と簡単に変態の姉を見つけた。根回しした、罠にかかっていたからだ。

あの変態の美優はお兄ちゃんの体で親友の桜庭さくらば 静香しずかさんを口説いていたからだ。


「なあ、静香さん…俺の事、好きか?」

 あの姉はバカだからほぼ身内に壁ドンを試しつつ、口説いていた。


「朝倉くん…。ダメよ、あなたには美優さんがいるじゃない…。」

 浮気設定の演技が上手いな、静香さん…。


「本当はお前の事が好きなんだよ。静香さん…。キスしてもいいか?」

 美優お姉さまはお兄ちゃんの容姿ではモテないのを知っていたため、

 ほぼ親友みたいな関係の静香さんに向かって、口説いていた。


 そんな姉の背後に学校最強の生徒会の会長、桜庭さくらば 聖奈せいながいた。

「あなたが二年の朝倉くんね。私の妹に何をしているのかな?」

 聖奈さんは妹を口説いていた、美優お姉さまに向かってそう言ったが、


「聖奈。嫉妬かい?かわいいな。」

 目標を切り替えて次は会長の聖奈さんに変わった。


どれだけ、その体で盛っているんですか?美優お姉さま。

「お兄ちゃん、あれでも、許すの?美優お姉さまのせいで、お兄ちゃんの評判は浮気ぐせのクソ変態野郎だよ?」


浮気ぐせ……

「あっ!でも、前のお兄ちゃんも浮気ぐせのクソ兄貴だったね。」


私がそこまで言うと、

「純、俺は四六時中、女性を口説く事をした覚えは無いぞ。」

 きっぱり否定してくるので、


「もしかして、あの異常な性欲、お兄ちゃんの体に問題があるのかな…。」

 私は美優お姉さまの精神より、お兄ちゃんの体がおかしいと言うと、


「そうなのかな…。俺の体が変なのかな…。」急にへこみ出した。


メンタルが弱すぎの兄に私はこのあと起こる出来事を予想して言った。

「でも、美優お姉さまは知らないんだ、桜庭 聖奈と言うポンコツの本当の恐ろしさを…。」


手を握られて変態に迫られた聖奈さんは、

「朝倉くんは私が好きなの?」男になった美優へ尋ねていた。


すると変態は案の定、

「もちろんさ。好きに決まっているじゃないか。」と告白すると、


聖奈さんは、

「嬉しい。私をこんなに求めてくれるなんて…」

 と言ったあと、聖奈さんはお兄ちゃんの体に思いっきり抱き付いた。


その瞬間、美優お姉さまは抱き付かれたまま、気絶していた。


「聖奈お姉さま、見事なベアハッグでした。野獣の駆除をして下さりありがとうございました。」

 天然怪力美女の力を知っていた私は、暴走した性欲モンスターを倒してくれた彼女にお礼を言った。


「あれ?美優ちゃん?どうしたの?」彼女は私を見てびっくりしていたので、


「本物の美優お姉さまは先程、あなたが抱き付いて落とした…それです。」

 私は聖奈さんが抱えている男を指してそう言うと、


「どういう事?」

 聖奈さんが首を傾げていたので、入れ替わりした事情を説明していた。


すると聖奈さんは、

「ちょっとショックだな…。彼氏が出来たと思ったのに…。」

  相変わらず、彼女は少し重い女性だった。


「要ります?それ?」気絶した元美優の変態男を指差すと、


「純!俺の体なんだよ。勝手に引き渡そうとしないでくれ。」

 もう、良いじゃん。優柔不断なお兄ちゃんには向かないよ?その体。


すると静香さんが話してきた。

「どうするの?これから三人は…戻れるの?」聞かれたので、


「恋歌お姉さまの話だと多分、無理、体が構築された時点で魂が固定化したみたいだから…。」

 私は恋歌お姉さまの言っていた事をみんなに話すと、


「そんな~。俺。ずっと、このままなの…。」

 私の体のお兄ちゃんは崩れ去って、女の子座りして、メソメソしている。

 (お兄ちゃん…やっぱりヘタレだし、男性には向かないよ。)

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