第48話 聖歴152年7月29日、写真

 冒険者ギルドに魔石を売りに行った。

 情報が掲載されている掲示板を見る。

 期待の新星、ハックル・パーティ5階層制覇とある。


 その時、ハックルが入ってきた。

 噂をすれば影だな。


「すまん」

「きゃっ」

「いきなり何よ」


 俺はジューンとラズを引き寄せて盾にした。

 見つかってなければ良いんだけどな。

 二人の隙間からハックルを見る。

 ハックルは別段、気にしたふうでもないようだ。

 俺達の方を一瞥いちべつもせずに去っていった。


「ふぅ、ひやひやさせやがる」

「どういう事か説明して!」


「ハックルだよ。奴に見つかるとややこしい」

「仇敵だったわよね。こそこそ隠れたり逃げたりするの辞めたら」

「うちも堂々としてたらええと思うけど」


「油断させておいて、背後から一撃ってのが理想だな。戦いに卑怯も糞もない」

「同意しかねるけど、分かったわ」

「人を殺すのは感心せぇへん」


「俺も殺したくはないが、二人の溝は修復不可能だ。どちらかが死なない限りは決着がつかない」


 宿への帰り道、尾行がついているのに気づいた。


「少し回り道するぞ。合図したら走れ」

「はい」

「ええ」


 路地に入って、俺達は合図した。

 全速力で路地の角を曲がる。

 尾行者が角から飛び出したところ、トイレのスッポンで殴った。


「何するんだ」

「ハックルに伝えとけ、そのうち首を貰いに行くってな」


 俺は思いっ切り尾行者を殴った。

 スパコンといい音がして、尾行者が気絶する。


「どうやら、ハックルにばれたようだ。宿を変えるぞ。だが、ダンジョン近くの宿は多くない。しらみつぶしにあたられたら、泊まっている所がばれる」

「じゃあどうするの」


「罠を張る。罠を張って返り討ちだ」

「私もその方が良いと思う」

「そうやね。正当防衛ならしゃあない」


 宿を引き払い、別の宿を取った。

 そして、800円分の魔力で、ドア窓用センサーをつける。

 電池は40個セットで1000円。

 これで当分持つだろう。


「こんなので分かるの」

「ああ、ドアを開けてみな」


 ラズがドアを開けるとけたたましい電子音が鳴り響く。


「これなら、熟睡しても起きるわね」

「トリプルの部屋で当分の間、不便を掛ける」


「仕方ないわよ。同じパーティメンバーなら一緒のテントに寝る時もあるし、このぐらい大丈夫よ」

「うちは同じベッドでも平気よ」


「それは禁止ね。ベッドは二つだから、私とジューンが一緒に寝るわ」

「そうしてくれ。その方が気楽だ。それからこれが秘密兵器の赤外線ゴーグルだ。光がなくても見える。枕元に置いておけよ」


 赤外線ゴーグルはスライム・ダンジョンを攻略して吸い取った魔力で買っておいた。

 こういう装備は冒険者やるなら必需品だからな。

 5万円ほどのそれなりに良い奴だ。


 それに5千円ほどのストロボ。

 フラッシュバンの代わりだ。


 カメラは使い道が色々とあるので、付属品を含めて買ってある。

 この部屋に入られ戦闘になって逃げられても、写真を撮っておけば、後で色々と出来る。

 目潰しと顔を覚えるのと一石二鳥だ。


 見慣れない機械に二人は目を丸くしてた。


「よし、カメラを折角出したんだから、記念撮影しよう」

「なに?」

「どういう道具なの」


「姿を写し取る道具だ」

「へぇ、どこの国の魔道具?」

「うちも聞いた事あらへん」


「遠い国の道具だ。そこに立って笑って。はい、チーズ」


 シャッターを押すと、デジカメにジューンとラズが不細工な顔で映った。

 二人がデジカメのモニターを覗く。


「変な顔。壊れているんじゃないでしょうね」

「恥ずかしい。もう一回や」

「ああ、納得行くまで撮るよ」


 納得行くまで撮り直して、オッケーを貰った。

 ノートパソコンとプリンターを出して印刷する。


「まるで鏡ね」

「鏡より綺麗やと思う」


 写真を撮っている時より、写真を眺めている時の方が良い笑顔だ。

 俺はこそっと二人を撮った。


「写真撮ったでしょ」

「音がするからばればれだな」


 わいわい言いながら写真を撮った。

 こんな写真が増えていくといいなと思う。

-未完-

――――――――――――――――――――――――

 ここで章が終わりで続ける予定でしたが、未完で終りです。

 形を変えて出直そうと思います。

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レベルを上げて通販で殴る【リメイク】~スキルが芽生えず、婚約者から見捨てられ、家からも追放。覚醒した俺に帰って来てくれと言ってももう遅い。異世界のモンスターと追放した奴らを買った商品でぶん殴る~ 喰寝丸太 @455834

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