第16話「変態、そけい部をなでる」

「早坂さん、気持ち良くオシッコを出す方法を、もう少し詳しく教えてもらえますか?」

 武田が早坂さんに頼む、少し興味があるようだ。


「そけい部を揉む方法ですか?」

「そうです、それです」


「これは、立って行うやり方と横になって行うやり方があるんですが、日常的にやるには、私は、立って行うやり方の方が効くと思いますよ」

 早坂さんが立ち上がって武田の方を向いて股関に手をあてる。

 もちろんズボンははいている。


「これは素肌の上を軽く押して、下から上に撫でるんです。股関節の曲がる所から×××のきわまでですね。手で触ると血管を感じるので違和感のある所を丁寧になでるんです。病気は恥ずかしいとか関係ないですから」

 早坂さんはズボンの上から実際に手を動かしてやり方を見せた。


「なるほど、目の前でやられたら変態ですね。これが行法だと知らない人だと逃げていきますよ」

「泌尿器の導引は、人には見せられませんよ。女性なら旦那さんにも見せない方がいいでしょうね」

「そうですね、奥さんのそんな姿は見たくないですね……」


「膀胱炎の人は、横になって弱い力で気長にそけい部をなでてやるといいですよ」

「膀胱炎ですか、僕の部隊の幹部で膀胱炎の人がいましたが、病院に入院しましたよ」


「膀胱炎は、いい薬があるようですが、やはり自分でケアするのが大切だと思います」


「膀胱炎はオシッコを我慢することでなるんですか?」

「どうなんでしょうね、一般には大腸菌が尿道に入ってなるって言われてますが、私は体験的に座る時の姿勢が重要だと思ってます」


「姿勢ですか」


「あぐらをかいて低いおぜんや机で長時間作業をすると膀胱に圧迫があって膀胱炎を起こすんじゃないかと思います。戦前の人は多かったんじゃないかな?」

「低い机であぐらをかいてパソコンをする人もいますね」

「私は、長時間のあぐらは体に悪いと思いますよ。足の循環が悪くなるから膀胱や腸にうっ血ができて炎症になるんじゃないでしょうかね?」

「そういう人は、そけい部をなでる? そけい部というのは股関節のことではなく、ビキニのパンツをはいたら隠れる前側の全体のことですか?」


「そうです。ふとももも座ると圧迫されるし、男性なら玉も圧迫されるので、ふとももも、もんでやるといいですよ、玉は優しく握るようにですね」


「いよいよ変態になってきましたね」


「竿の導引もあるし、さらに、肛門の導引もあるんですよ。これは、さらに人には見せられないですね」


「肛門もあるんですか……」

 武田も時々お尻が切れるので、これも聞きたかったが学校ではまずいなと思い聞かなかった。


「血管は圧迫に弱いんですよ。足のふくらはぎに血管が浮き出ている人を見たことはありませんか?」

「……お袋の足に血管が浮き出てましたよ。親父の足にもあったかな?」

「あれは、血管の逆流を防ぐ弁が壊れて、血液が心臓にうまく戻れなくなっているんです」

「血管って壊れるんですか?」


「壊れるんですよ。心臓からでる太い血管が破れることもあって、これは最悪らしいですね。数分であの世行きです」

「それ、僕の部隊の奴でいました。ジープを運転中に突然お腹の太い血管が破れたらしくて病院に着く前に亡くなりました」


「血管の病気は、あっと言う間ですよ、心臓や脳の血管が破れたり詰ったりしたら3分くらいでアウトですよ。ガンと診断されても数ヶ月は余命がありますからね」

「怖いですね! 血管を治す方法はないんですか?」


「お風呂がいいようですよ。体を温めることで血管も広がり、血管のストレッチになるそうです」

「それは簡単でいいですね」

「これは、日本だから簡単らしいんですよ。海外では飲み水の確保にも苦しむ国は多いそうです」

「そうですね、水って外国では意外と無いみたいですね」


「日本は島国です。言い換えると山のすそ野に暮らしているようなものです。山は雨を溜めるタンクみたいなものだから一年中、川が流れるので水に困らない。私は日本人が長寿なのは水が豊富で簡単にお風呂に入れるからだと思っているくらいです」


「それは、あるかもしれませんね。外国に行った奴は土地が真っ平らで山が無いって言うんですよ。車で走っていてトイレに行きたくなっても、トイレなんてあるわけないし、隠れる木も無いって言ってました」


「中国なんかも平原で隠れる所がないので、トイレとかは意外と恥ずかしいという感じは薄くて、大便でも仕切りのない公衆トイレが多いそうです」

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