エピローグ

 朝、いつもの時間のバスに乗り、学校前のバス停で降りる。


 朝のバス停はいつもなら人がバラけているが、バス停脇にある広いスペースには人だかりが出来ていた。


 昨夜、芭月さんから届いたメール。一緒に登校お願いしますとの内容に、もちろんオッケーと返信をした。


 人だかりのせいで、身長の低い芭月さんを見つける事が出来なかったが、人だかりの向こうに、健流の姿を見つけた。


 俺が人だかりの中に入ると


「転校生か?」

「めっちゃ可愛い子だったぞ」

「俺、声かけてこようかな」

「やめとけ、金山が睨みきかせてるぞ」

「雷帝金山かよ!」


 といった声が耳に入る。金山は中学生の頃にだいぶヤンチャだったらしく、ヤンチャな人達の間でも恐れられているらしい。


 人だかりを抜けると、そこには金山健流、星野朱美さん、そして………。


「えっ」


 長い髪が、小春日和の優しい風に揺れている。


 その女の子を見て、俺は人だかりを抜けた先で動けないでいた。



 髪の長い小柄な少女が、俺の前まで歩いてきた。少し怯えを含んだ透き通る様な瞳で、俺を見上げている。


「桐笆君……」


 2年前のあの日。忘れられない微笑み。その微笑みの少女が今、目の前にいる……。


「……………」


 極太赤縁眼鏡を外し、三編みのツインテールをしていない少女……。


「あの日、助けてくれて、君も頑張れよって言ってくれた言葉。……私の宝物です」

「……………」


「その思いを書き綴ったお手紙です。受け取ってもらえますか」


 長めの袖で少し隠れる小さな両手で、小柄な少女は一通の手紙を俺に差し出した。


「はい」


 その少女から手紙を受け取った俺は、少女を抱きしめていた。


「頑張ったんだね……、強くなったね……」

「………はい。桐笆君……、わ、私とゆっくりと……、い、一緒に歩いて貰えますか」


「ああ、俺も……ゆっくりがいいな」


 俺は少女の手を優しく握り、少女と共にゆっくりと歩きはじめた。



    〜〜〜〜fin〜〜〜〜





 

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【完結】ハズキ 花咲一樹 @k1sue3113214

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