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「協力……とは」


「あなたにお願いしたいのは、私とメノーラ用の軍服を用意してほしいのよ」


 リーリエの突拍子もない話に、アンドレアが「何を考えていらっしゃるんですか?」と声をあげた。


「あなたは戦争を止めたいんでしょう?」


「……それは。ですが、あなたに出来るはずがない」


「誰も武力で止めるなんて言っていないわ。だけど、止めるためには私も現地に行く必要がある」


 アンドレアは席を立った。


「ばかばかしい話です。あなたの戯言に振り回されている時間はありません」


「アンドレア。あなた、ミーナに戻って来て欲しいでしょう?」


 アンドレアの動きがピタッと止まった。


「……」


「ねえ、アンドレア私知っているのよ。人を使って調べたから。あなたがずっとミーナに片思いしていること」


 アンドレアは、過去に二度ほどミーナに告白して振られている。


 それでも諦められずに、何度もデートに誘っているのだ。 


 ミーナが城を辞めてしまえば、接点がなくなるのでアンドレアはミーナにアプローチする機会を失ってしまっているはずだ。


「ミーナは解雇されたんです。もう私には関係のない話」 


「そう。じゃあ、王宮にこの噂が広められても問題はないわね。しばらくゴシップに困らないわ」


 リーリエがわざとらしく笑うと、メノーラも合わせて一緒に笑った。

 本当は面白くもなんともなかったが、アンドレアを挑発するためには必要なことだった。


 貴族達に噂が広まれば、瞬く間に笑いの種になるだろう。


 貴族に知り合いの多く、さらにはプライドの高いアンドレアには、耐えられないはずだ。


「軍服二着、ご用意させていただきます。クノリス様には内密で」


 振り返らず、アンドレアが淡々とリーリエに言った。



***



 作戦をクノリスに知られる訳にはいかなかった。


 現地に行くために騎士団の協力が必要だったが、メノーラがいくら探してもマーロとガルベルの姿がアダブランカ王国にないのだと聞いて、リーリエは愕然とした。


 一体どこへ消えてしまったのだろう。


 まさか、処刑されているなんてことは……と考えて、リーリエは首を横に振った。


 クノリスに限って、そんなことをするはずがない。


「お父様にも確認したのですが、牢屋にもどこにもいなんですのよ。何かおかしいと思いませんか?ミーナのことも一緒に調べたのですが、三人とも消えるだなんて……」


 メノーラの言う通りだった。


 リーリエもこの事実に動揺を隠せず「どうしよう」と呟いた。


 クノリスの出発は、明日だ。


 既に王宮では、物資の調達が完了しており、グランドール王国へ攻め込むための準備は万端だった。


「馬の準備はできますし、他の者に頼むしかなさそうですわね。私の方から人を雇っておきますわ」


「分かった。ありがとう。メノーラ」


 本当だったら、信用できる人間の方が心強いが彼らがいないのであれば仕方がない。


 今から全力であの三人を探すよりも、クノリスを止める方が先決だ。


 リーリエの作戦も、一か八かの作戦なのだ。


 この戦いが終わったら彼らを探すことを心に誓って、リーリエはメノーラに人の手配を頼んだ。


 イーデラフト公爵によると、クノリス軍はグランドール王国へ入国し、一度レオポルド三世と話をする予定なのだそうだ。


 仮にレオポルド三世が話し合いを拒否することになれば、城に押し入ることになるそうだが。


 グランドール王国の城の中の構造は、リーリエはよく知り尽くしている。


 リーリエの一番の狙いはモルガナ王妃を失脚させること。


 あの国の一番の要は、良くも悪くも、やはりどう考えていてもモルガナなのだ。

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