第21話 看護師になって冒険に?!

 免許皆伝を貰ってから、私はルカさんと一緒に忙しい日々を送っていました。

 

 ナースステーションに居る時

「院長先生はスパルタだったろう?それでも、200年強でここまでできるとはね、ビックリしているよ。わたしが居なくなっても大丈夫じゃないかい⁉」

「それは無理です。私に皆をまとめられるとは、とても思えません。ルカさんに人望があるんですよ。私はまだまだ新人なんですからね」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。」

 

そう言ってから声を潜めて

「君の心の傷が未だに院長先生の魂の中にあるように、わたしは砕けた核が院長先生の中にあるんだ。だから実はやめられないのさ」

「え、私よりずっと前からですよね。まだなんですか?」

「五つの違う核を融合させて(もちろん皆承諾済みだ)わたしという天使がいるんだ。まだ院長先生の中から出たら、バラバラさ」


「そんな状態なのに、眠らずに働いているんですか?」

「核たちが私の行動を元に融合してってるからね」

「なるほど………」

 そんなことを話していると、天使課の緊急ベルが鳴った。

 

 これは、患者さんの到着だ!

 私とルカさんは、小走りに搬入口に向かう。

 今回の患者さんは、全身が呪いで爛れていました。

 このままでは命がないのは明白でした。呪いが解けていないので。

「まずいな………」

 ルカさんが呟きます。

 私は呪いを逆探知を試みますが、異界でした。逆探知も消えます。

「確か、この手の呪いの解呪には、特殊な触媒が要りましたよね」

「そう。向こうも特殊な触媒を使ってるからね。それを無効化しないと。だけどそれが今ないのさ。リリジェン、採ってきてくれない?どういうものかは知ってるよね?」

「はい」頷きます


「この人は時が止まった部屋に入れて、呪いの進行を止めておくから、急がなくてもいいから確実に採ってきてもらえるかい」

「はい、行く準備をしますね」

 そう、この呪いを解くための触媒には、特殊な花が必要になります。

 それは、採って来るのがとても手のかかる場所―――巨大なダンジョンの最深部なのです。抜け道はなく、冒険者としてそこに潜るしかありません。

「じゃあ、準備にかかって、出来たら報告してから行きます」


「ルカさん、準備出来ました」

「よしきた、出入り口をどこに調節する?」

「ヤスミン王国へ半日ぐらいの街道で、人気のないあたりをお願いします」

「了解!………よし、出来たよ!」

「わかりました、では行ってきます!」

「待ってるからね」

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「聖なる花を求めて」でリリジェンのお話が進みます

こちらからどうぞ

https://kakuyomu.jp/works/16817139554518450674

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「帰って来ました!」

「ご苦労さん、花をそこに置いといて。戻っていいよ」

「?ナースにですか?もちろん―――」

「違うよ、エルフの寿命ぐらい、外で過ごしていいって言ってるんだ」

「―――私は居なくても平気ですか?」

「そんな訳ないでしょう!すっごく忙しいんだぞ?」

「なら―――」

「付き合って貰ったんだ、付き合ってやりなよ」


 私はハッとしました。恩返し、してませんよね………

「わかりました、行ってきます!」


「人生を少しは楽しんでおいで………」

ぼそりと漏れたルカの台詞は、院長以外、誰にも聞こえなかった。


♦♦♦


そして私がみんなと年月を過ごし―――

精霊になったベリルとは再会の誓いを立て、他は最期を見送って。

私は異空間病院に帰って来ました。

今度は、抱き着いて帰還を喜んでくれたルカさん。ありがとうございます!


それぞれの棟に帰って来たと挨拶をして回りました。

「歌い手」に「院長先生にご挨拶を」といったら、いつもの隠し部屋を示されます。


そーっと入って―――あれ?院長先生?


「大丈夫、ヴァンパイアの「解脱」というものを行って、本来の姿に戻ったの」

雷ちゃんも1緒ですが、こちらも12歳ぐらいになっています。

やっぱり誰か分かりませんでした

「リリ姉、お帰り!最近では、表にもよく遊びに来て「雑用」の仕事やみんなの手伝いをしてるんだよ!」

ああ、その声は雷ちゃんですね、安心しました。


「おかえりなさい、リリジェン。しばらくはナースをやってて頂戴。

 治療的な事で、また呼ぶかもしれないけれど」

「はい!あ、雷ちゃん。私の方へも遊びに来てね!」

「うん!」


♦♦♦


 それから2億年が過ぎた。

 雷ちゃんは、大きくなった。耳に開けられた穴に大量のピアス。

 腰からジャラジャラと下げている遺髪アクセサリー、大量の宝石で作られた指輪。

 それ全部、仲のいい人が死の間際に「覚えておいて」というから、物にして覚えているそうだ。まだ増えるだろうね、とは本人の弁。


 一番驚いたのはヴァンパイアになった事。

「姉ちゃんと同じ道を歩みたいから」だそうです。

 多分「解脱」したらいつかは生者に戻るだろう、多分。とも。


 その頃私は院長先生に呼び出されました。そーっと入ります。癖ですね。

「リリジェン、治療の仕上げだよ」

「は、はいっ」

「惑星ガイアのミッション系スクール(高校)に入って過ごしてきなさい。

 その後の人生も送って来るのよ。それで異常がなければ治療完了。

 あの………終わったらまた医師兼看護師として働けますよね」

 

「そこで、何があるか次第ね。私は多分、あなたは光に導かれて、ここには帰ってこないんじゃないかと思っているわ」

「光………ですか?」

「そうよ。さあ、持って行くものと場所はここに開いてあるもので事足りるはずよ」

「は、はい」

私は退出した。

みんなに挨拶だけはしよう、戻ってくるつもりで。


♦♦♦


結論から言おう。私は戻らなかった。


このわたしが!?

聖女と認められて天に昇る―――即ち天使化―――事になったのだ!

これからはお慕いする天帝陛下の元で、お役に立てるのだ!


END

またどこかでお会いしましょう

(白と黒が聖女の周りで踊る旅、聖なる花を求めて、参照)

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リリジェンの半生 フランチェスカ @francesca

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