第40話「じゃあ……アレクって……お姫様……ってことよね?」
「アレクが……アダマント様の……孫?」
あたしの呟きにアレクは頬を膨らませて、セドリックさんを見上げる。
「庶子の子供ってだけです。そんな存在はアダマント様にはたくさんいますよ」
アダマント様は……見た目はイケメンの青年だけど、それは不老だからっていうのは、この辺境伯爵領で知らない者はいない。
実年齢がすでに魔女並になっていることも。
アレクが言うには、アダマント様は以前は、正室様以外にも側室、その他もいたらしけれど、今現在は独身。
だけど、その子供や孫はいるとか。
アレクはその中でも最年少。
セドリックさんがいうには、アダマント様はとにかくアレクを溺愛したいけど、ルビィ様に阻まれてる状態だとか。
そしてそんな血縁で、一番幼くて可愛いっていうのもあるけれど、アレク自身の魔力の多さや、ダンジョン攻略においての討伐センスにおいて目をかけてるようだ。
……さすが迷宮の王様。
実力重視なんだ。
二、三年前に、アレクはセントラル・アダマントの学校で、アレクがダンジョン実習に入った時に、実習で組んだパティーメンバーに別ダンジョンに繋がる空間に突き落とされたことがある。
アレクが言うには「多分、いじめ? ルビィの魔女の後継なのかと思われたから」らしい。
突き落とされて、空間が繋がっていたのは、アダマント・ラビリンスの深層部。
アレクはそこから生還した実績がある。
当時まだ8歳だった。
深層部を攻略していたパーティーがアレクを見つけて、保護してもらったと言う。
8歳の子供がこの辺境領最大のダンジョンの深層部にいただけで、よく無事で生きて戻ってこれたと思う。
「アダマント・ラビリンスは、中層階までは結構平和なんだけど、深層部はまだまだモンスターが跳梁跋扈している危険地帯だからね、その時は騒がれたよ」
……その話、聞いたことある。
東側辺境伯爵領でのその年のニューストップ5にはいる事案よ?
アレクのことだから、ただ保護されただけでなく、深層部攻略者との共闘もしたんだ……。
ここにいるオルセンさんやセドリックさん達がアレクを見ても「子供がなんでいるんだ」じゃなくて「アレクだ~」ってフレンドリーなのは、その件があったからか……。
「うん? まって。じゃあ……アレクって……お姫様……ってことよね?」
アレクはあたしを見上げて、ぎゅっと手をつなぐ。
「そうじゃないの、わたしは、わたしで! アダマント様はアダマント様で、なんの関係もないのです!」
「それ言ったら、アダマント様は泣きそう。多分泣くと思うから、面と向かって言っちゃダメだよアレク」
「別にわたしが唯一の孫ってわけではないです。たくさんいますよ。未だに、アダマント様の他の孫とかうるさいから、いいんです」
まあ、その地位においてはそうでしょうけれど。やっぱ多いんだな。
でもアダマント様の後継とかあまり意味とかないだろう。
普通に老いていくなら後継には意味は大いにあるだろうけど、本人があの見た目と実力なまま時を止めた人なんだから。
でも……。
「孫? 子供じゃないんだ?」
「子供は――ほとんど、生きてないですよ」
「は?」
「わたしの父が亡くなった理由と同じなんです。ウィザリア大陸西側に居を構え、子爵位を持つアダマント様の弟様――ご本人様はすでに亡くなり、代替わりしてますが、そこの一族はアダマント様の地位を狙い、刺客を放ちかなりの方が亡くなってます。そのほかにもアダマント様自身が長寿ということもあって、子供が先に亡くなった例もありますけれど」
うむむ、よく聞く貴族の後継争いとかも普通にあるのか……それに……。
「お子様は長寿ではなかったんだ」
「ルビィが言うにはそうらしいです」
なるほどねえ。
あたし、以前アレクを占った時に、過去の事象を示すカードからは、そういうハードな感じは出ていたけれど……。
でも……。
「じゃあアンディもアダマント様の血縁なの?」
雰囲気は似てるんだよね。
アンディとアダマント様って。
髪の色や目の色は全然違うけれど。
アンディは銀髪に緑の瞳。
アダマント様は金髪で紫の瞳だから……。
セドリックさんも興味深そうにアレクの答えを待ってる。
「知らないです」
アレクは即答した。
「血縁かもしれないけれど、わたしにはそういった人をちゃんと紹介されていないし、アダマント様がわたしを孫だと認めてはいるみたいだけど、公式でそれを宣言したこともないし、赤の他人だからしらないです。わたしとアダマント様はムカンケーです!」
おっと。
無関係ね。
アダマント様は……きっと後悔してるだろうな。
あたしから見てもアレクは可愛いもの。
ルビィ様だって、まるで自分の子供のようにアレクを気に入ってる。
それこそルビィの魔女の後継と思われてしまうぐらいには。
「僕も一瞬アンディを見てそう思った。エメラルド様も?」
お、セドリックさんも思っていたんですね。
でもアレクの言葉は素っ気ないものだった。
「ウィザリア大国東側辺境伯爵領は広いですから、わたしみたいなのはきっとごろごろしてますよ。アンディがその一人でも、全然おかしくもなんともないですね」
アレクちゃーん……。
「まあ、あの年齢の割に紳士然とした、胡散臭い感じはアダマント様に似てますけれども」
あなたも年の割にはしっかりしてるよ?
まあね。おっそろしい巨大ダンジョンの深層部から生還した子だからしっかりもするんだろうけど。
けど、アレクがアンディに辛辣なのは、アダマント様に似てるからなのかなあ?
アダマント様……。貴方は一体何をやらかしたんだ……。
孫の好感度が最低値ではないですか。
おじいちゃんにとって、大ダメージでしょう。
おじいちゃんには見えませんけれどね。
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