第7話 やらかした貴族の末路

 セシリアの近衛騎士就任から5日、非常に不味いことが起こっていることが発覚した。


「不味いわね。」

「そうですな、どう致しましょう?」


 実は、ドカウツ侯爵が自分の嫡子が帝配だと言って色んなところに迷惑をかけているのだ。


「仕方ない。緊急に貴族を集め、不敬による14家の降爵、1家の廃絶。ついでにリー姉ちゃんを子爵に襲名させて、フィリップス卿の内務卿就任をやっちゃいましょう。それに、私の婚約者の件も合わせて言いましょう。」

「は、わかりました。」

「あと、の計画は進んでる?」

「ええ、ほぼ把握できています。いつでも決行できます。」

「じゃあ、まず明日やっちゃおう。そして――――――。」

「――――――ですな。わかりました、準備しましょう。」


 そうして数日後、大広間にて、即位前の大会議を行うことになった。




「皇帝陛下の御成りです。」


 侍従長の言葉で帝国貴族およそ200家の当主、そして一部の子息も来てるのだが、そのすべてが頭を下げ、礼を尽くしている。

 その中、皇帝である私は袖より近衛騎士であるセシリアを引き連れ、玉座へと座る。


「皆のもの、面をあげよ。」


 10歳の少女の声が大広間に響く。その声に全ての者が頭をあげた。


「余が皇帝、フリージア・アメジスト・フォン・フィリア=ベジリアスである。皆のもの、こんな小娘のためによく来てくれた。」


 ちょっとした小ネタを言ったつもりだったんだが、笑い声ひとつ上がらない。というか、笑っちゃ不敬か。まあ、この後、まったく笑えない話をするんだが……。


「さて、本日皆に集まってもらったのは余の配偶者について話さねばならぬ案件が発生したためだ。連れてこい!」


 そう言うと、袖より腕を縛られ、首縄で繋がれた二人が騎士により連れられてきた。


「その者たちは、余の配偶者――帝配を僭称し、この帝都や内府で横暴を働き、政務の妨害をした。よって一族郎党極刑に処す。この広間や帝城が汚れるのも嫌だな。練兵場にて処刑を執行する。」


 その宣告に、一人の男が手を挙げ声を上げる。


「陛下、ひとつよろしいでしょうか?」

「ふむ、フィリップス伯爵か。申してみよ。」

「は、恐れながら陛下、いくら僭称とはいえ、当人以外を処罰するのはいかがなものかと。」


 私の宣告にフィリップス卿が異を唱えてくれた。


「なるほど、では、この者ら一族までは処罰しないでおこう。で、この者の家族はいるのか?」

「はい、ドカウツ侯爵は奥方が2人、令嬢が3人、令息はそこにいる1人でございます。令嬢のうち上の娘は18ですでに嫁いでおり、次女もこの秋に嫁ぐ予定ですな。残った1人は今年7歳になります。」


 その言葉に、侍従長が反応してくれた。


「そうか、では、上はすでに他家に嫁いでいるのでその家の者として待遇を変えないよう。次女は……婚姻は認めよう。嫁いでいると扱い、その家に預ける。ただし、家格を侯爵家令嬢とすること。下の娘は……どういった娘だ?」

「はい、どちらかと言えば活発ですが、しっかり礼儀作法は学んでいるようです。また、侯爵領近隣に家格のあう同じ年頃の嫡男がいなかったため婚約者はおりません。」

「そうか……、フィリップス卿、ドカウツ侯爵夫人たちは子息にこういう教育をしたとして処刑するが、この娘は処罰すべきか?」

「いえ、処罰すべきでないと進言いたします。」

「そうか……、では、その娘は余の侍女としよう。他の家に送っても辛い目に遭うだけだろうからな。」

「仰せのままに。」

「あと、これから告げる家の者は前へ出よ。」


 そういい、14家を呼び出す。みんな怯えた顔だ。


「貴殿らは、前皇帝が崩御された直後だと言うのに余に謁見を求め、婚約者候補として嫡男を連れ顔合わせをしようとした。だが、よりはマシと判断し、1階級降爵とする。元の位置まで下がるがよい。あと、ソレは牢に入れておけ。」


 そう言い、14家を下がらせ、ドカウツ親子を引っ込めさせた。


「まだあるぞ。さあ、入ってきてくれ。」


 私がそう言うと袖から30名ほどの令嬢たちが入ってくる。


「彼女たちは、余が帝位につくことになったに婚約破棄された令嬢たちである。望まぬ婚約を求められたものもおったが、大多数は相思相愛の婚約関係を一方的に破棄されたものだ。何も明確な瑕疵が無いのにも関わらず、ただ、余と歳が近いというだけで婚約破棄するなど言語道断である。だが、望まぬ婚約を求められていたものにとっては、婚約破棄されたのはであっただろう。ならば、余はそれぞれの事情を踏まえ、婚約破棄に関してはこれを認め、その上で再婚約を斡旋しようと思う。なに、彼女たちの事情は先日お茶会を開き、すべて把握しておる。さて、彼女たちの元婚約者よ、前へ来るがよい。ああ、忘れていたとしても余が直々に呼び出すので心配するな。」


 私が名前を呼ぶまでもなく30人の令息が前に出てきた。中には感無量とばかりに涙で前が見えず、ばつの悪い父親に付き添われてきた令息もいた。中には婚約していたことすら知らされてなかってポカンとしている令息を慌てて前に送り出した貴族もいた。


 私は1組ずつ婚約を認めていった。余談だが、祖父同士が友人で、生まれる前から婚約していてしかも相思相愛だったにも関わらず婚約を決めた先代が亡くなっていたので婚約破棄された当人同士が婚約していたことを知らなかったカップルがいたりした。

 いくつか令嬢、令息を残し「皇帝として婚約を祝福する。」と祝辞を述べ、希望する令嬢には帝城の侍女に推薦するのでお茶会の時に言ってねと告げ、皆を下がらせる。


「さて、こういう者が現れたので、余は婚約者をこととする!また、婚約者については、しかるべき時に決めることとする。」


 私の宣言に、大広間は静まり返った。

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