第7話

 かなりの時間をかけて、なんとか指紋の採取が出来た鑑識は、屋上へ上がると、足がガクガクと震え、まともに立てない様子だった。

「大丈夫ですか?」

 消防士の一人が、声をかけると、引きつった笑顔で、

「大丈夫です。ご協力に感謝します」

 と言った。


「指紋の採取が出来ました。これから署へ戻ります」

 鑑識の警察官、似顔絵描きの女性警察官、岡崎、榊原、消防士、その他の者も、全員、現場から引き揚げていった。


 水を飲んで、チョコレートを食べて、蓮宮も落ち着きを取り戻したようだ。


「今夜は、この部屋で寝るわ。ボディーガードは私のそばを離れないでちょうだい」

 そう言って、一度自分の部屋へ戻ると、荷物を持って戻って来た。

「どうします? 五十嵐さん」

 須藤は困った顔で聞いた。

「一人には出来ない。俺はソファーで寝る」

「え? 三人、一緒の部屋で寝るんですか?」

「あら、何かご不満かしら?」

 蓮宮は文句を言う須藤を責めるように言った。


 この状況では、仕方ない事も分かっていた。須藤は見ていないが、確かに、外には何者かがいた事には間違いない。指紋が出たのがその証拠だ。


「シャワーを浴びてくるわ。覗かないでね」

 蓮宮が言うと、

「覗きませんよ!」

 須藤が過剰に反応した。それを蓮宮は楽しんでいるように笑っている。


 シャワーを浴びて出て来た蓮宮は、キャミソールにショートパンツ型ペチコート姿だった。

「ちょっと! 下着姿じゃないですか!」

「だって、服がシワになるじゃない」

 泊りの支度はしていないようだった。ショーツを洗って、タオル掛けに干して、ジャケットとパンツはハンガーにかけた。

「僕らがいる事、もっと気にかけて下さいよ」

「あなた、下心でもあるのかしら? 刑事なのに」

 蓮宮に言われ、須藤は口をつぐんだ。何を言ってもどうせ、やり込められるだけだった。


「明日に備えて、もう寝ろ」

 五十嵐は二人のやり取りを横目に、部屋の明かりを消し、自分はソファーに横になった。

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