非文明期 2

遺跡の奥深くで少女を見付け育てることになったマグススは、何も知らない言葉も話せない少女に最初は苦労させられたものの立派に育て上げ、少女は、マグススを師と仰ぐ少年をパートナーとして子を生し、その子も一緒になって育て、手が掛からなくなった頃、満足げに静かに息を引き取った。


そのようなこともありつつ、やはり<文明>とまでは言えそうにない期間が過ぎていく。


この間、邪神クォ=ヨ=ムイは、自身の些細な楽しみとして、他の惑星などから人間を転移させたり転生させたりして、その人間達がどのような振る舞いを見せるかを眺めていた。ノエ文明期にクォ=ヨ=ムイが送り込んだ人間は、与えられた強大な魔法の力に溺れて世界を混沌へと突き落したが、その<遊び>を再開したのである。


そうして転移や転生させられたりした人間の中には、ククリ文明の時代に植民惑星に入植し、魔女ケシェレヌルゥアに唆されクォ=ヨ=ムイへの反抗作戦に加担したことで文明も技術も記憶も奪われてリセットされた後に、<地球>と名付けられ、ざっと六百億光年ほど離れた同じく<地球>と呼ばれる惑星の歴史をコピーされた世界で生きるエヴリネートス人も数多くいた。


そのエヴリネートス人らは自らを<地球人>と称していたが、そもそもエヴリネートスという名前そのものが彼らの言語で<地球>という意味なので、実は間違ってはいなかったりもする。


このようにして転生させられた十五歳の少年<館雀かんざく陽一よういち>は、<神>として世界をより良き方向に導くように言われ、事情も分からないまま放り出される。


陽一は、戸惑いつつも<神としての力>を用い、いくつもの集落で起こる人間同士の諍いや事件を裁定。<悪人>を懲らしめていく。


そんな自身の絶対的な力に高揚していた陽一だったものの、徐々に人間の世界というものが単純に善悪だけで判定できるものでないことを思い知らされ、やがて<神としての役目>を放棄、世界に干渉しなくなっていった。


しかし、陽一が見ていたのはこの世界のごく一部。フォルゴル大陸の一地方でしかなく、実は同時期にさえ惑星エヴリネートス上のあちこちで同様に転移・転生させられた人間達が同様に暮らしていたりもした。


中には、前の世界での過酷な暮らしに疲れ果て、強大な能力を与えられつつも転移・転生先の牧歌的な空気に感化されて、ただただ穏やかな暮らしを満喫する者も少なくなかったようだ。


とはいえクォ=ヨ=ムイはそれはそれで楽しんでいたようである。


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