第24話(終)



<観覧車>



姉「観覧車に二人で乗るのっていつ以来かな」


妹「遊園地に行ったとき?」


姉「……もう五年以上前だね」


妹「あ、でもあのときはおかーさんとおとーさんも一緒に乗ってた」


姉「なら二人では初めて?」


妹「……むふふふ、そーなるね」ニヨニヨ


姉「……たのしい?」


妹「たのしいよ」ニコニコ


姉「……」


妹「……」ジトッ


姉「……夜景見ないの?」


妹「見たほうがいいなら」


姉「じゃあ見よ、こっち来て」クイクイ


妹「うん」


姉「こっちからだと街が見える」


妹「……」


姉「あそこらへんが駅で、あっちは港だ」


妹「……」


姉「……」


妹「……きれい」


姉「写真撮る?」


妹「撮りたい」


姉「……ん、もっと近付いて」


妹「うん」



パシャッ



姉「……戻るの?」


妹「……ちょっと、いや、なんだろ」


姉「うん?」


妹「正面からおねえちゃんを見たい」


姉「景色はもういいの?」


妹「景色もきれいだったけど、おねえちゃんのほうが綺麗だから」


姉「えっ、またまたー」ニコニコ


妹「……冗談じゃなくて、本気で」


姉「そ、そう……」


妹「……」


姉「……」


妹「……」


姉「……飽きない?」


妹「飽きない」


姉「そっか」


妹「うん」


姉「……」


妹「……おねえちゃんは、わたしのことずっと見てたら飽きる?」


姉「飽きないよ」


妹「どうして?」


姉「今までも数え切れないほど見てたから」


妹「同じだね」


姉「うん」


妹「……」


姉「……」


妹「……じゃあ気持ちは、同じなのかな」


姉「……」


妹「窓、曇ってきてる」


姉「なんでだろ?」


妹「なんでかな」


姉「……」


妹「おぼえてる?」


姉「……おぼえてるよ」


妹「そっか」


姉「うん」


妹「……」


姉「……」


妹「……あのときは、おねえちゃんに言ってほしかった言葉だったけど」


妹「いまは、自分から言いたい」スクッ


妹「……」スタスタ


妹「……」キュッキュ



『すき』



妹「すきだよ、おねえちゃん」


姉「……」


妹「……」


姉「……」


妹「……」


姉「……ん」チュー


妹「……」


姉「これで、答えになる?」


妹「……だめ、言って」


姉「わかった」


妹「……」


姉「わたしも、妹が好きだよ」


姉「家族としても、いもうととしても、女の子としても」


妹「……」


姉「……」


妹「……」ジワッ


姉「……なに泣いてんの」


妹「うれしくて」


姉「……そう、そうだよね」


妹「となり、座るね?」


姉「うん」


妹「……」ポフッ


姉「……」


妹「……ね」



ポーン



妹「あ……」


姉「……」


妹「……」


姉「……」



テクテク


クルッ



姉「……もっかい乗る?」


妹「……うん」


姉「今度はちゃんと景色見ようね」


妹「……それは、約束できないかも」





(二回目)



姉「なんか、へんな感じ」


妹「……ん?」


姉「どきどきが止まらない」


妹「わたしも」


姉「……なんでだろ」


妹「なんでだろうね」ニコニコ


姉「ひとつお願いしていい?」


妹「なに?」


姉「……その、ぎゅってしてほしい」


妹「したいじゃなくて?」


姉「うん」


妹「わかった」ギュッ


姉「……」


妹「……」


姉「こっちのほうがどきどきする」


妹「なにそれ」クスクス


姉「へんかな」


妹「へんじゃないよーだ」


姉「そ」


妹「わたしもこっちのほうがどきどきするし」


姉「……」


妹「おねえちゃんはかわいいから」


姉「そっか」


妹「うん」


姉「……ならいっか」


妹「いいんだぜー」ニコニコ


姉「……」


妹「……」


姉「……」


妹「……あ、あのさ」


姉「うん」


妹「聞きたいことあったんだった」


姉「なんでもどーぞ」


妹「わたしの一番すきなところって、結局どこだったの?」


姉「……ん、あのときの?」


妹「そうそう、おねえちゃん結局ごまかしたから」


姉「あー、あれはね」


妹「うん」ドキドキ


姉「顔」


妹「……えっ」


姉「……」


妹「えっえっ」


姉「こうなるから言いたくなかったんだよなあ……」


妹「顔? フェイス? 顔面フェイス?」


姉「うん」


妹「……」シラー


姉「……引いてるでしょ」


妹「引いてないよ。けど、なんかフクザツ」


姉「……うれしくない?」


妹「うれしい」


姉「ならいいじゃん」


妹「そうかもとはならない」


姉「ちぇっ」


妹「……」


姉「……まあ」


姉「何が好きかとかどこが好きかなんて、あのときはあんまり分かってなかったんだと思う」


妹「……」


姉「でも、妹の顔見てると安心するし、自然と頬が緩んでどきどきするし、守りたいって思うし、……いまは、守ってほしいなともちょっとだけ思ってる」


妹「そっか」


姉「いまは、ちゃんと妹のことを好きって言えるよ」


姉「さっきも言ったし、妹の好きなところだって、一晩で言い尽くせないくらい言えると思う」


妹「そっかそっか……」


姉「納得してくれた?」


妹「うん、……むふふふ」


姉「うれしそうだね」


妹「だってうれしいんだもん」


姉「それならよかった」


妹「……」


姉「……」


妹「……今度はわたしから、してもいい?」


姉「いいよ」


妹「……」


姉「……」


妹「…… 一回目も、二回目も、これからもずっと、わたしの唇はおねえちゃんのものだからね」


姉「うん」


妹「……んふふ」ニコニコ


姉「……」


妹「おねえちゃん、だいすきだよ」

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