第10話




チュンチュン



姉「……ん」


姉「……あさ……?」パチリ



姉「…………んぅー」キョロキョロ


姉「……んあ」ガンガンガンガン


姉「みず、みずみず……」フラフラ



妹「あ、おねえちゃん起きた?」


姉「…………ぁー、いもうと?」


妹「うん」


姉「……なんでなんで」


妹「昨日行くって連絡したじゃん」


姉「……えー」ガサゴソ


姉「……」スマホポチポチ



妹:おねえちゃん今日泊まりに行くからね



妹「はいこれ、ミネラルウォーター」


姉「……ありが」キュッキュッ


妹「……」


姉「とう……」ゴクゴク


妹「ほら立ってー、顔洗いにいこー」ギュッ


姉「……やぁー、自分で、立てるからぁー」フラフラ


妹「……」パッ


姉「……」ヘタリ


妹「……」


姉「……」フニャフニャ


妹「……言わんこっちゃない」


姉「……面目ない」



妹「シャワー浴びなよ」


姉「うん」


妹「浴室で寝ないでね、具合悪かったら呼んでよね」


姉「うん」


妹「トマト雑炊作ったんだけど、上がったら食べるよね」


姉「うん、ありがとう」


妹「ううん、べつにいいよ」





(二度寝しようとしたらおもむろに布団に入ってこようとしたので起きました)





姉「……で、どうしたの?」


妹「んー?」


姉「うち来て」


妹「んーべつに理由はないけど。強いて言うなら、暇だったから?」


姉「そう」


妹「テスト終わったし」


姉「……なるほど」


姉(満点……)


妹「この前やろーって言ってたゲーム持ってきたよ」


姉「買ったの?」


妹「もち」


姉「何円だった? 払うよ?」


妹「いいよいいよ。普段使わないから、お金なら余ってるの」


姉「ふーん、あんまり遊びとか行かないんだ」


妹「友ちゃんとは行くよ」


姉「へー」



妹「おーねえちゃんっ」ポフッ


姉「んー?」


妹「んへへ、なんでもない」


姉「あ、もうゲームしたくなった?」


妹「んーん」


姉「……」ナデナデ


妹「……んー♪」ニコニコ


姉(かわいい)


姉「……」ナデナデ


姉(いい匂いする……)


姉「……」スンスン


妹「……?」


姉「……ふふふ」


妹「ご機嫌だね」


姉「そう?」


妹「あー、久しぶり? にお酒飲んだからかー、司書さんが言ってた」ウンウン


姉「……そうかもねぇー」


姉(ちがうけどー)





姉「ゲームしづらいと思ってさー」


妹「うん」


姉「このクッションを買ったのよ」


妹「……どう使うの?」


姉「ちょっとカラダ滑らせて、わたしと妹の間に入れれば」


妹「ん」


姉「これでやりやすいね」


妹「……」


姉「ほらほら、こっち来て」


妹「……」ポスッ


妹「……んー……」


姉「え、もしかして固い? 低反発のやつにしたんだけど……」


妹「ううん、いいねこれ」


姉「でしょでしょー、このまえ司書ちゃんと家具屋行ったときに、妹と座ろーって思って買ったんだ」


妹「あはは、そーなんだ」





(一時間後)



妹「おねえちゃん、交代」


姉「交代?」


妹「場所かわろ」


姉「なんで」


妹「いーからいーから」ニコニコ


姉「えー……わかった」


妹「ささっ──あいだに、どーぞ?」


姉「うん」ポスッ


妹「……んっ」ギュー


姉「……」


妹「クッションにはわたしが座る」


姉「え、でもそれだと」


妹「いーから」


姉「うん……」



姉「……」


妹「……」



ギュム



姉(あっ……)


妹「続きはやくー」ポンポン


姉「う、うん……」


姉(ぎゅむって……、ぎゅむっていった……)


妹「……」


姉(わたしの──)チラッ


姉「……」ペターン


妹「……」


姉(壁……)


妹「……」





妹「おねえちゃん、はい」


姉「ん?」


妹「つなご」スッ


姉「あーうん」ギュッ


妹「……」テクテク


姉「……」テクテク


妹「あそこのお店行くの久しぶりだね」


姉「そうだね」


妹「おねえちゃん何食べる?」


姉「どうしようかなー、やっぱり回鍋肉にしよっかなー」


妹「わたしは麻婆定食にしよ」


姉「美味しいもんねー」


妹「ちょっとずつ分けようね」


姉「うん」


妹「……♪」テクテク


姉「……」チラッ


妹「……?」


姉「……」フイッ


妹「……んー?」


姉「……あー、背、また伸びた?」


妹「わかんない。けど、多分」


姉「ふうん」


姉(やっぱりそうなのかー……)


姉「……」テクテク


姉(こう見ると顔とか表情とかは、昔からずっと変わらず幼げなのに)チラッ


妹「……」テクテク


姉(腕と脚めちゃ長いし、顔ちっちゃいし、チェスターコート似合ってるし、髪さらさらで整ってるし……)


姉(なぜか落ち込む……自分自身に)


姉(わたしのこの運動不足のアレとか、一向に成長しなかったアレとか、手入れを怠ってるアレとか……、並んで歩いていいものか、みたいな)


姉(……いやいや、こんなふうなこと考えてる時点でだいぶおかしいぞ、わたし)


姉(でも、でもでも今日はあんまり──)



妹「おねえちゃん、あぶな──」グイッ



プー!!!!




姉「えっ」


妹「──いっ!」ダキッ



ププー!!!!

キキキーッ!!



妹「信号赤だよ! ぼーっとしてると危ないって」ギューー


姉「……あ」ドキッ


妹「もしかしてまだ酔い残ってる?」ジィー


姉(いや近い近い近い近い)カァ


妹「おねえちゃん今日ずっとふわふわしてるし、大丈夫?」


姉「……」カァァァ


妹「……ねえ、おねえちゃん聞いてる?」ズイッ


姉「……あっ、……う、うん。聞いてる聞いてる」ドキドキ


妹「もー、ほんとに?」


姉「……ほんとに」ドキドキドキドキ


姉(やばいやばいやばい顔見れない……)


姉(妹にこういうこと思っちゃダメだろわたしぃー……)


妹「おねえちゃんがそう言うなら、わたしは信じるけどー」


妹「いちおう、心配だから」スッ


姉「……え、腕?」


妹「つかまって」


姉「なにゆえ」


妹「いーから」


姉(わからんまったくわからん)


姉「いや、自分で歩けるからいい」


妹「……ふーん」ムスッ


姉(なんでそんな不満そうな顔するんだー)


姉「……」


妹「……」



姉「……あー、あれだなー。寒いなー、コート着ててもめっちゃ寒いなー」コホコホ


妹「……」


姉「……まあ、うん」


妹「あんまり寒くないよ、わたし」


姉「えー、わたしは寒い? かなー。寒い気がするなー」


姉(イタいなー、わたし……)


妹「そっか」


姉「てことで、腕貸して?」


妹「……ふふふ、いいよぅー」スッ


姉「しつれい」ギュッ


姉(心臓の音伝わったりしないよね)


姉(めっちゃバクバクいってる気がする、気がするだけ、なんでだ)


妹「……」


姉「……」


妹「……んふふ」ニコニコ


姉「どしたの」


妹「なんでもない」ニコニコ

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