第12話



「……嘘、だろ?」


 亮太の家の前に停まっていたトラックが走り出したのが遠くから見えた。


「ハア……ハア……待って」


 息を切らしながらようやくたどり着いた。


「亮太……」


 俺は恐る恐る玄関のドアを開けた。


「ハア……亮太……?」


 静まり返った家の中にお邪魔しますと言って入った。


 家の中は見事に空っぽだった。


「そんな……」


 俺はその場に崩れ落ちた。


「ハア……ハア……」


 自然と涙が溢れてきた。


「亮太ぁ」


 後悔が押し寄せてきた。


 俺はなんてバカだったんだ。


 自分に腹がたっていた。


「ごめんな亮太……」


 亮太の顔が、あの唇の感触がよみがえる。


「好きだ。初めて見た時からずっと。ずっとお前のことが好きだったんだ」


 今さら言っても遅いことはわかっていた。


 わかっているのに涙と一緒に想いが溢れ出て止まらなかった。


「そんな前から俺のことが好きだったの?」


 えっ?


 目を開けて涙をぬぐった。


 目の前には亮太の顔があった。


「うわぁぁ。り、亮太ぁ?」


 俺は体を起こした。


「ははは……」


「本物?」


「ふはっ、本物だよ」


 亮太は笑っていた。


「何で……?」


「親父を説得して、一人で残ることにした」


「は?」


「片瀬と離れたくなかったから」


 亮太の顔が赤くなっている。


 それって……。


「ちょっと待って、俺混乱して……」


「本当はずっと気付いてた。片瀬が俺のことをそういう目で見てるってこと。最初は俺も戸惑ったけどさ、男が好きな片瀬が俺以外の男と付き合ってるとことか想像したら、なんか俺、耐えられなかった」


「でもお前、いつも彼女作って……」


「片瀬がやきもちでもやいて告白してくれないかなって思って。……悪かったよ」


「そんな……」


「あの夜の告白も気付いてた。嬉しかったけどやっぱりどうしても直接聞きたくて」


「……そうだよな。俺本当にウジウジ考えすぎて。ごめんな、亮太にそんな想いさせちまって」


「はは、もういいよ。さっき盛大な告白聞けたから」


「ちょっと待って。ちゃんと、……俺にちゃんと言わせてくれ」


 俺は亮太の手を握った。


「俺、お前が好きだ。俺と付き合ってくれないか?」


「うん」


「……はあぁぁぁ」


 俺は安心したのか力が抜けて床に倒れ込んだ。


「ありがとう亮太」


「ん?」


 亮太が俺の顔を覗き込んだ。


「こんな俺のことを待っててくれてありがとな」


「はは。俺のことで真っ赤になったり動揺したりしてる片瀬を見てるの楽しかったぞ」


「はあ? お前……」


 亮太の顔が近付いたと思うと亮太の唇が俺の唇に触れた。


「ちょっ……」


「はは、顔真っ赤……」


「お前もだっつうの」


「ははは……」

「はは……」


 二人で床に寝転んで笑った。


 俺の手はしっかりと亮太の手を握りしめていた。





            イチャイチャ編へ続く




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