第11話
あれからまる二日、俺は部屋にこもってずっと亮太のことを考えていた。
「うわっ。ちょっとあんた何があったの?」
大学で家を出た姉貴が久しぶりに実家に帰って来て俺の部屋に入ってくるなりそう言った。
「姉貴ぃ。俺終わった」
俺はベッドにうつぶせになったまま動く気力がなかった。
「どうせ亮太くんのことでしょ? 話してみな」
俺の唯一の理解者でもある姉貴には、亮太に一目惚れした時から相談にのってもらっていた。
そんな姉貴に俺は今までのことを話した。
「ふんふん。なるほどねえ」
姉貴は真剣に俺の話を聞いてくれた。
「まあ、はっきりしないあんたが悪いんだけどね」
「わ、わかってるよ」
「あんた本当にわかってんの? 亮太くんは何回もあんたにチャンスをくれてたんだよ? それをことごとく台無しにしてさあ。そりゃあ優しい亮太くんだっていい加減怒るの当たり前だよ」
「どういうことだよ……」
「ほうら、わかってないじゃん。あんたの話からすると、亮太くんはあんたの気持ちに気付いてて、それをあんたの口からちゃんと聞きたかったんだと思うよ? なのにあんたはウジウジしてるだけで亮太くんの気持ちはなんにも考えてないじゃん」
「亮太が、俺の気持ちに気付いてる?」
「当たり前じゃん。気付いてないと思ってるのはあんただけだと思うけど?」
「俺、そんなに出てた?」
「出てた」
「……マジ、か」
「まあ、人を好きになるとまわりが見えなくなるのは仕方ないんだけどね」
「じゃあ亮太も俺のことを?」
「はあ? そんなの知るわけないじゃん」
「な、なんだよ」
「人の気持ちっていうのは誰にもわかんないの。相手の気持ちを知りたいなら、まず自分の気持ちを伝えなきゃ。そうしないとなぁんにも始まらないよ?」
「でも……」
「この期に及んででもとか言ってる場合じゃないでしょ? このままの気持ちで二度と会えなくなってもいいの? どうせ会えなくなるんだったら、せめて自分の想いくらいぶつけてきなさいよ」
「……うん」
俺は時計を見た。
三時半。
夕方には荷物を運び出すって言ってたよな?
このまま終わるわけにはいかない。
亮太に会いたい。
「姉貴、サンキュー。俺行ってくるわ」
「うん。あんたの想いは絶対に伝わるから」
「おう」
俺は部屋を飛び出してすぐに走り出した。
頼む。
頼むから間に合ってくれ。
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