6-5

 どうしたものかと、エメがうつむいたときだった。

「あ~やっと見つけた」

 その声とともに誰かに肩に担ぎ上げられた。

「人混みでお友達から手ぇ離しちゃだめだよ」

 それは見覚えのない人物だった。鮮やかな赤色の長髪を一括りにした、赤みがかった黒の不思議な色の瞳の青年だ。

 エメは見覚えがなくて首を傾げる。青年はニッと笑い、エメを両腕で高く持ち上げた。

「見える~?」

 高くなった視界で辺りを見渡すと、人混みの中で駆け回っているラースとリカルドの姿を見つける。エメは精一杯に手を伸ばし、ぶんぶんと振った。ラースがそれに気付く。人々を突き飛ばさないようにしながら、エメのもとへ駆け寄って来た。エメはようやくホッとする。

「ちゃんと見てなきゃダメですよ、お父さん」

 青年がそう言って笑うと、ラースは顔をしかめた。

「お前――」

「じゃ、俺はこれで」

 エメをラースに押し付けるように渡し、青年はそそくさとその場をあとにする。そこへニコライも来て、ラースとともに眉根を寄せてその背中を見送った。

「小隊長、あいつ……」

「ああ」

 ラースが振り切るようにきびすを返す。エメの姿を認めらリカルドが。ほっと安堵に胸を撫で下ろした。

「ごめんよ、エメ。アランが手を離したばかりに」

 エメはかぶりを振った。悪いのはアランではない。

 噴水広場に行くと、ラースは辺りを見渡した。まだエミルとアランの姿はない。どこかを探し回っているのだろう。

「エミル!」

 ラースが大声で呼び掛ける。周囲を歩いていた人々が目を丸くした。ややあって、アランの手を引きながらエミルが人混みを脱して来た。

「見つかりましたか」

「ああ」

 エメの姿を認めて安心したのか、アランが泣きそうに顔を歪める。自責の念に駆られているのだろう。

「ごめんな、エメ……」

 アランが力なく言うと、大丈夫、と言うようにエメは微笑んで首を振る。ラースはアランの肩に手をやった。

「悪いのはこちらです。エメに握力がないことを我々は把握しておかなければなりませんでした」

「…………」

「まあまあ」と、ニコライ。「無事に見つかったんスから。気を取り直して祭りを楽しみましょうよ」

 アランは相変わらず泣きそうだったが、ニコライの明るい声に頷く。微笑みかけるエメに、明るく笑って見せた。

 それからエメもアランも祭りを心行くまで楽しんだ。

 リカルドとアランと別れる頃には、エメはうとうとし始めていた。はぐれてしまったこともあり、疲れたのだろう。

 帰路についているあいだに、エメは眠ってしまった。

「……調査しますか?」

 声を潜めてニコライが言った。その女装姿には似つかわしくない低い声だった。

「気取られるなよ」

「はい」

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