第3話 家に帰ると妹がキノコ料理を食べさせようとした

 ある日の犬島家にて……


鉄也

「……」


 僕の名前は『犬島 鉄也』。かつて国の裏側事情を知る者達から『地上最強の能力者』と呼ばれた男です。そんな僕には弱点がある。


 僕の弱点とは、『キノコが食べれない』という事だ。


 別にアレルギーがあるわけじゃない。口の中に入れると気持ち悪くなって気絶するというだけだ。僕は以前もキノコを食べようとした事がある。


 最初は6歳の頃だ。キノコグラタンを出されて美味しそうだなと思い食べたその瞬間に気を失った。あのぐにゃっとした感触が嫌い過ぎて気絶した。


 次にチャレンジしたのは10歳の頃。バター醤油の焼き椎茸を食べようとした。僕はその当時、好き嫌いを無くそうと思いチャレンジしたが、口の中に入れた瞬間にまた気を失った。その時、僕はすぐに意識が無くなっちゃったから知らないが気絶しながら僕は嘔吐をして、痙攣して1週間生死の境を彷徨ったらしい。


 そしてここ最近、マリーちゃんは何故か僕にキノコを食べさせようとする。


 『犬島 マリー』。彼女は僕が組織にいた時代に僕が救い、引き取る事にした少女だ。彼女は両親に売り飛ばされ、とある悪い施設で実験動物にされそうになったところを僕が救出した。彼女にとって辛過ぎる過去だった。可哀想に思った僕は彼女の記憶を僕の能力で封じ込め彼女には『交通事故で記憶喪失になった』と適当な言いわけをした。


 彼女は記憶を封じ込めてからドンドン明るく元気な女の子になっていった。そんな彼女の好物がキノコ料理らしい。


 そしてここ最近、何故か彼女は僕にキノコ料理を食べさせようとする。


マリー

「兄貴。今日の献立はなめ茸のみそ汁、椎茸をたっぷり使った五目ご飯、松茸のバター醤油炒め、マッシュルームと椎茸、ほうれん草をたっぷり使ったグラタンだぜ」


鉄也

「……マリーちゃん……。あのね、忘れてないかなぁ? お兄ちゃん、キノコ料理は食べれないんだよ……」


マリー

「好き嫌いしていたらいつまで経っても大きくなれねぇよ」


鉄也

「あのね……お兄ちゃんは……キノコだけは体が受け付けないんだよ……」


マリー

「……私の好きな物を……一緒に共感してもらいたかったんだ……。兄貴にもな……私の好きな物をもっといろいろ知ってもらいたくて……」


 マリーちゃんは俯いてぽつりと言った。その顔は少し悲しげに見えた……。


 マリーちゃんに悲しい思いをさせないと決めたのは僕自身じゃないか!!


 キノコ如きに負けてなるものか!! 覚悟を決めろ!! この僕『犬島 鉄也』は今までに様々な苦難を乗り越え!! そして『地上最強の能力者』と呼ばれたり『銀色の鬼神』と言われて恐れられた男!! これぐらいの試練に負けはしないはずだ!! 死を恐れるな!! 覚悟はいいか!? 僕は出来ている!!


鉄也

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! マリーちゃんの作った料理に感謝を込めて!!!! いっっただきまああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁすっ!!!!」


 僕はキノコグラタンを一口食べた瞬間、意識を手放した。覚えているのはキノコを噛んだ時のぐにゃっとした嫌な感触だけだった。


 目を覚ますと病院のベッドの上だった。


鉄也

「こ、ここは……?」


美女看護師

「っ!? 先生!! 鉄也ちゃんが意識を取り戻しました!!」


お爺ちゃんの医者

「鉄也ちゃん!! もぅ!! あれほどキノコを食べるなと言っていたのに!! もぅ!! バカッ!! 心配したんだからね!!」


 後で聞いた話によると僕はまた1週間ほど生死の境を彷徨っていたらしい。あと数分病院に運ばれるのが遅かったら死んでいたかもしれなかったらしい。


 後日談、マリーちゃんはあの後、姉さんにめちゃくちゃ怒られたらしい。そして『犬島家』では『いかなる理由があろうとも食卓にキノコを出してはならない』という掟が出来てしまったのだった。



ーオマケ1ー


アルト

「マリーには罰を与えます。マリーが持っている鉄也のパンツを全部没収します。そして1週間、鉄也のパンツを集める事を禁じます」


マリー

「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 私のコレクションがああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!? アルト姉さん!! 頼む!! 兄貴のレアパンツのサクランボパンツだけは見逃してくれええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!! 私の!! 私の宝物なんだよおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


アルト

「っ!? 鉄也のサクランボパンツ!? 私の知らないパンツの柄!? これは鉄也が自分で買ったパンツって事ですか!? 衣類にあまり興味を示さない鉄也が自分の意思で買ったパンツって事ですからこれは確かにレアパンツですね!!」


マリー

「アルト姉さんなら分かるだろう!? このパンツの貴重性が!! これは兄貴にしては珍しく自分の意思で選んで買ったレアパンツなんだよ!! だからこれだけは見逃してくれよ!!」


アルト

「だが断る!! これも没収します。鉄也のサクランボパンツは私の宝物にしておきます」


マリー

「こんな……!! こんなはずじゃ……!! こんなはずじゃなかったんだぜ……!! 畜生おぉぉぉ!! 兄貴のパンツを全部!! アルト姉さんに持って行かれたぜええええええぇぇぇぇぇ!!!! うわあああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ーオマケ2ー


鉄也

「コウ。一緒に買い物行こう」


コウ

「いいけど何を買うんだよ?」


鉄也

「パンツ」


コウ

「この間、買いに行ったばかりじゃねーかよー」


鉄也

「この間、買ったサクランボパンツと鬼柄パンツ、虎模様パンツ、亀柄パンツ。この全部無くなった……。どこに行っちゃったんだろう?」


コウ

「……お前、今すぐにでも一人暮らしした方がいいんじゃねーかー?」


鉄也

「む? なんで?」


コウ

「その内、パンツが全部無くなっちまうぞ……」


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