第2話 いやあああああああぁぁぁぁ!! 僕のスカートの中を覗こうとしないでええぇぇぇぇぇ!!

 ある日の事、『フレッシュプリティー喫茶店』にて……。


鉄也

「いやあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!? ビルお爺さん!? なんで這いつくばっているの!?!?」


ビルお爺さん

「ふっふっふっ。それはな。鉄也ちゃんのスカートの下を覗く為じゃ!!」


 這いずりながら喋っているお爺さんの名前は『ビル』。通称『ビルお爺さん』。彼は僕が出勤する日は毎日ここでブラックコーヒーを飲んでいる。


鉄也

「いやあああああああぁぁぁぁ!! 僕のスカートの中を覗こうとしないでええぇぇぇぇぇ!!」


ドワイト

「んっんー!! ビルお爺さん!! ずるいぞ!! 僕も這いつくばって鉄也ちゃんのパンツを見る!!」


鉄也

「ど、ドワイトさん!?!?」


男友達

「俺もいるぜ!!」


鉄也

「貴方もいたのかよ!?」


男友達

「ほほぅ。今日は苺パンツか。やりますねぇ」


ドワイト

「苺パンツとかお客様のサービス提供を忘れない!! さすが鉄也ちゃん!! グッジョブだよ!!」


ビルお爺さん

「おふっ。長生きはするもんじゃなぁ……。こんな桃源郷を見る事が出来るとは……。ありがたや、ありがたや」


鉄也

「いやあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!? 僕のスカートの中を覗こうとしないでええぇぇぇぇぇ!! 男のパンツを見ても楽しくないでしょう!?!? なんで3人揃って這いつくばってジリジリ迫って来るの!?!?」


ビルお爺さん

「そこにパンツがあるからじゃよ……」


ドワイト

「そこに鉄也ちゃんを見る事が出来るチャンスがあるからだよ!!」


男友達

「パンツは男のロマンだからだよ!!」


鉄也

「な、なんだ!? この人達!? 意味がわからないよ!?」


男友達

「なら問おう!! 何の為にメイド服を着る!? 何を成す為に男である君がメイド服を着て働いている!? それは客である我々に対してのサービス精神ではないのか!?」


鉄也

「お給料アップの為だよ!! 何!? パンツを見る事が貴方達の目的なの!?」


男友達

「俺だけの望みじゃない!! これが人の夢!! 人の望み!! 人の業!! 他者より鉄也を見て、他者より鉄也の関係を深めて先へ、他者より鉄也との親密度を高めて上へ!!」


鉄也

「意味わからないよ!!」


コウ

「……なんだ……?……このカオス的な状況は……?」


 コウが来店して、僕の近くに這いつくばる男3人を見つめて言う。


コウ

「……鉄也。説明よろ」


鉄也

「僕も意味わからない状況だよおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」


ビルお爺さん

「そこの若者よ。おぬしも這いつくばってみんか?」


コウ

「断る。俺はいかなる理由があろうと戦いと睡眠以外で地べたに這いつくばる事はしない。てかこれマジでどういう状態?」


鉄也

「僕が1番聞きたいよおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


店長

「そこのお客様には理解できぬか?」


 低い声が下から聞こえ、真下を見ると僕のスカート下で筋肉質で赤いタキシード姿をしたウチの店長が寝転んでいた。


鉄也

「いやあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!? 店長おおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?!? そんな所で何をしているんですか!?」


 店長は腕を組んでマジマジと僕のスカートの下を見る。


店長

「ふむ。苺パンツか。なかなか良いパンツを履いておるわい」


 僕は素早くコウの背後に回り、コウの後ろに隠れる。


鉄也

「ガルルルル!!」


コウ

「あーあー。鉄也が怒っちゃった」


ビルお爺さん

「さて、鉄也ちゃんを揶揄うのはこれくらいにして注文を頼もうかのう。鉄也ちゃん、ブラックコーヒーを1つ」


鉄也

「ガルルルル!!」


コウ

「あーららー。マジで警戒してるじゃん。お前等、鉄也を虐め過ぎだろー」


ビルお爺さん

「ほっほっほ。愛した婆さんに先立たれてやる事がなくてのぅ。こうやって鉄也ちゃんを揶揄うのはこの老ぼれの楽しみの1つなんじゃ。ここは大目に見てくれんかのぅ」


鉄也

「……まぁ、今回だけですよ。ビルお爺さん」


ビルお爺さん

「ほっほっほ。すまんのぅ」


ドワイト

「チョロインだ」


男友達

「チョロインだ!! いや、あれは俗に言うツンデレか!? ツンデレなのか!? 鉄也の萌えポイントが高過ぎるぜ!! アミーゴ!! 俺の心を何回ときめかせれば気が済むんだよ!!」


店長

「チョロインじゃのぅ。ワシも同じ手を使ったら尻を触らせてくれるかのぅ」


コウ

「……この店は変態しかいないのか? てか鉄也。気になっていたんだが、何でメイド服を着てるんだよ?」


鉄也

「メイド服を着ると店長が給料上げてくれるんだ。時給80000円くらい出してくれる」


コウ

「……お前……メイド服を着るのに抵抗とかなかったのかよ?」


鉄也

「……もう慣れましたよ。それにマリーちゃん、金遣い荒いから……」


 マリーちゃんは、僕の義妹だ。


 僕が組織に所属していた時代に彼女を助け出した。


 彼女は両親に売り飛ばされ、とある悪い施設で実験動物にされそうになったところを僕が助け出したのだ。


 その可哀想な過去があり、放っては置けなかった僕は彼女を引き取った。そして彼女の悲しい記憶を封印して現在は平和に暮らしている。


コウ

「あー。あの口の悪いガキかー。懐かしいなー。お前が記憶を封印してからアイツは随分と明るくなったが口が悪くなったよなー」


鉄也

「……まぁ、マリーちゃんが明るく元気に過ごせるのならそれでも良かったんじゃないかなって思っていますよ。あんな辛い過去に縛られて生きるなんて酷ですから」


コウ

「……まぁ、そうだなー。鉄也にも似たような過去があったしお前としても放っては置けないよなー。あのガキを実の両親のところに返したらまた売り飛ばされるかもしれないしなー」


鉄也

「僕は大切な人達を護る為ならどんな事でもやってみせますよ」


コウ

「……その結果がメイド服か……」


鉄也

「……仕方ないじゃん……。……だって……時給80000円だもん……。……女装を我慢するだけで時給80000円貰えるのはここしかないんですよ……。……マリーちゃんすぐに僕のバイト代を使い切るから困るんですよ……」


コウ

「……お前も苦労してるな……。……いろいろと……」


店長

「うむ。時給80000円出す甲斐があるのぅ。今度はチャイナ服でも着せてみるかのぅ」


男友達

「あっ!! 店長さん!! 俺からのリクエスト!! 鉄也にビキニに着させましょう!!」


ドワイト

「僕としてはあのスラっとした体ならセーラー服も似合いそうだと思うんだ」


コウ

「……ここはいろいろと大丈夫なのか?」


鉄也

「……もう僕は慣れました……。……ちなみに先月はウェディングドレスを1週間着させられました……。……ウェディングドレスは動き難いから困りました……」


コウ

「……そういう問題なのか?」


鉄也

「ははは……。僕が女装我慢すればお給料アップだからね……。マリーちゃんのお小遣いや学校での授業料、衣類代とか年頃の女の子はお金が必要だから……」


コウ

「家の方でも出して貰えばいいじゃねーかー?」


鉄也

「……マリーちゃんを引き取る時の条件の1つだからね」


 マリーちゃんを引き取る際、犬島家の当主に犬島家の養子として引き取る時に僕が『マリーちゃんの事で掛かるお金は僕自身がなんとかするのでマリーちゃんをどうか引き取らせてほしい』と頼んだのだ。


 だからマリーちゃんの事で掛かるお金は僕のバイト代と組織に所属して働いていたいた時に貯めた貯金を使ってなんとかしている。


 僕はその事を後悔してはいない。もしもマリーちゃんの事を引き取っていなかったきっと後悔していたと思う。


 なんで自分と似たような境遇の彼女を放っておいたのかって悩んでいたと思う。


 僕やマリーちゃんと似たような境遇の子供なんて探せばもっといるだろう。ただマリーちゃんは僕が遭遇した唯一同じ境遇の女の子だった。そんな女の子を放っておけなかった。


 人に恐れられた僕にも誰かを笑顔に出来るのだと思いたかった。彼女にはもう裏側の事情とは無縁な穏やかで優しい日常を送らせてあげたかった。そんないろいろな気持ちがあったから彼女を引き取る事にした。


 完全な僕の自己満足だと思う。偽善だった思う。


 けど、僕は後悔はしていない。


コウ

「まぁ、メイド服を着て頑張ってー。あ! 俺はレモンティー頼むわー」


鉄也

「了解。アイスで構わない?」


コウ

「おー。頼むわー」

オマケ


鉄也

「苺柄のトランクスを見て楽しいのかなぁ?」


コウ

「…まぁ、少なくとも世界最強の能力者が履いてなさそうなパンツだよなー」

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