4-5

 情動的なナレーション、蠱惑的な輝きを見せる星々の輝き。


 星や宇宙、惑星なんかに全く興味がない俺であっても、ロマンチックな気持ちになったりもしたものだ______最初のうちは。


「やすみ。これあと何回見るつもりなんだ?」


 同じ映像を、繰り返し何度も見せられる事で、うんざりさせられる気分に陥っている。

 現在三回目の視聴を終えた所だ。


「閉園まで」


 そんな俺の気持ちは知ってか知らずか、やすみ。


 高揚とした気持ちを隠すことなく、瞳を星々の輝きの如く瞬かせながら、終身刑のようなものを俺に突き付けてきたのだ。


 料金はやすみ持ちだったから、そこに関しては文句はないのだけれど、ぶっ通しで同じものを何度も見えられていたら俺の精神が持たない。


 だから、少しでも自我を保つためにこんな提案をした。


「ちょっと休憩しないか?」


 俺の提案を受けてやすみはポシェットから携帯電話を取り出すと、それとなく待ち受け画面を確認する。


「……お昼の時間、大分過ぎちゃってるね。うん。わかった。一旦お昼にしよう」


 大分過ぎてしまっている?時間を知る為にやすみが持つ携帯の待ち受け画面を覗き混む。


 時間は、14時過ぎだった。

 しかし、それよりも大事な物を目撃してしまったから、お昼の時間が過ぎてしまっている事なんてどうでも良くなってしまった。


「なあ、その待ち受け変えてくれないか?と言うか、いつの間に撮ってたんだ?」


「えー?なんでー?良い写真だと思うんだけどな」


 やすみには悪気なんて全くないようで、あっけらかんとした口調でそう言った。


「それにー、心配しなくても大丈夫だよ。私、限られた人にしか会わないから!」


 やすみ曰く誰にも見られる心配はないと告げる。


 でも、問題はそこじゃないんだ。やすみが待ち受けにしている事が問題であって……


 まあ、いいか。

 待ち受け画面を見つめる、満足そうなやすみのしたり顔を見ていたらそんな事がどうでもいいように感じた。


 そんな事でやすみが満足してくれるなら、まあ良いだろう。



「恥ずかしいから、なるべく誰にも見られないようにしてくれよ」


「うん。当然」


 言って指鉄砲で俺をい抜くような仕草を見せると、やすみは一人でふらふらと歩き始めた。


「どこ行くんだ?」


「ん?ご飯行くんでしょ?涼君の奢りで!」


 そうか、ご飯だったな。不意に目に入ったもののせいで、すっかり忘れていた。俺の奢りだっていうことも……


 すぐにやすみの横に追い付き


「何にするか決めてるのか?」


「ううん。決めてない。涼君はなにが食べたいとかある?」


「いーや特には。やすみに任せるよ」


 俺の答えを受けて、やすみは一瞬小難しい顔を浮かべた物の次の瞬間には笑顔を取り戻すと、ハキハキと言ったのだ。


 ピクニックがしたい。と

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