返答



 『….8月15日午前8時ごろ、通報が入り……』


 病室にの天井に設置されたテレビから音声が流れる。不味い食事に口をつける。大したカロリーはないだろう、噛み締めれば、そのまま消えてしまいそうな薄味だ。しかし、野菜を食べる機会が出来たのは嬉しい事だ、最近は食べてなかったからな。


 『軽傷者一名……重傷者一名……』


 俺のことだ。気がついたら病室に運ばれていた。薙は既に姿を消していて、別れの言葉も言えなかった。あんなに刺激的な体験をしたというのに、彼女の事をもう忘れてしまいそうになっている。多分、もう会う事もないだろうし、人生の流れは早い、このことも遅かれ早かれ片隅に置いていかれるのだろう。


 病室の扉が開き、見慣れた矢がテレビに突き刺さった。一枚の紙と一緒に。


 『まずは友達から』


 どうやら、また会うことが出来そうだ。前言撤回しよう、彼女のことを忘れることは


 「ないだろうな」

 「……全部口に出てたのか」



 血飛沫とポニーテール 完


 

  

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血飛沫とポニーテール カナンモフ @komotoki

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