第5話 帰宅

「はぁ……疲れた」


 下校途中に夕食の買い物もついでに済ませ、アパートの部屋へと帰ってきた俺。

 ある程度さかえているとはいえ、都会からすればこの地域はじゅうぶん田舎いなか。一旦帰宅すれば近所のスーパーへの往復はかなり手間だ。かといって、便利なコンビニや飲食店がポンポンと都合よくあるわけでもない。何か出かける用事があるついでに、買い物も済ませるというのが非常に効率がいいのだ。


 机にかばんを置き、まずスーパーの袋から買ってきたレトルト食品を取り出す。勉強の前に夕食の準備に取り掛からねば。俺はせまいキッチンでまず米をとぎ、炊飯器のスイッチを入れた。部屋の間取りは1K……すこし窮屈きゅうくつさを感じるが、一人暮らしだからどうにかなっている。とりあえず、受験までの勉強小屋だと思うようにして、あまり気にしないようにしている。


 米が炊き上がるまで、ベッドに寝転がり、物思いにふける。実家から引っ越して数日……交通手段の少なさや学校の授業の進行度など、色々と悩まされることが多い。


 そんな中でも、今日会ったあいつ。なにかにつけて俺にかまってくるが、ああいう奴が一番苦手だ。なにかしら思惑があるのかもしれないが、びを売ってくる奴にはロクなのがいない。こっちが親切にしてやっても、いつ寝首をかいてくるかわかったものじゃないからな。前の学校でだって……。


(いや、よそう)


 あれはきっと環境が悪すぎたんだ。どいつもこいつも、俺の不幸を喜ぶ奴らだったんだ。そんな奴らを見返す為にも、俺は俺のやり方で一流大学へ進学してやる。そして一流企業へ就職して、誰も俺を馬鹿にできないような人生を送ってやるんだ。


『ピーピー』


 ご飯が炊き上がったようだ。俺はレトルトのカレーを温め、インスタントスープと共にそれを食べる。食べざかりの高校生にしては少し物足りないが、腹8分くらいの方が丁度いい。食器を片付け、進学塾のオンライン授業動画を流し、勉強へ取り掛かる。


 一人暮らしになったメリットがあるとすれば、家族のことなど、しがらみを何も気にせず勉強に取り掛かる点だろう。生活費や塾の費用、家賃などは親が仕送りで面倒を見てくれる。なにより都会から離れたことで、夜はとても静かだ。これなら心置きなく勉強に集中できる。

 こうして、少し不足していた今日の分、いつもより多めに参考書を進め、本日の勉強を終える。


(明日からどういう高校生活になるのだろうか)


 まさか歓迎までしてもらえるとは……。

 教師も言っていたように、あからさまに悪い奴がいないことはわかった。あとはいかに自分のペースを守ってこの2年間を過ごせるかどうかだ。


(とりあえず遅刻みたいな悪目立ちするようなことは避けねば)


 今日あったことを教訓とし、本日は就寝した。

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