第42話 孔冥と秀吉 テクノロジー


「孔冥、ジャバラに関するリモート・ミーティングは好評だったらしいな」

「別に僕が企画したわけじゃない。世界中の科学者が参加して意見を言い合った。それらを総合し、こういうことではないか?という考えを述べただけだ。それよりも秀吉。インターネット回線を確保してくれてありがとう。そもそも回線確保ができなければ、ミーティングには参加できなかった」

「大したことではない。これでもしジャバラの兵器に関するデータが少しでも揃えば、がっつり元が取れるからな。で、結論はどうなんだ? 奴らの兵器は、われわれでもコピーできるのか?」

「そんなとこまでこの短時間で解析できるわけないだろう」さすがに孔冥は呆れた声を出す。「われわれが知り得たのは、ジャバラの侵略機械は、われわれ人類の考える機械とは基本的発想が全然違うということくらいだ」

「じゃあ兵器のコピーは?」

「たとえば、ニトロ・アジャテイターを奴らの機体から引きはがしても、われわれがそれを発射するのは難しい。というより、おそらく引きはがせない」

「とは?」

「くっついているんだ。ジャバラのブシもそうだが、ロシアで手に入れた八脚の多脚戦車シュンビンも、分解しようとしてもわれわれの技術では難しい。内部にスペースがいっさいないんだ」

「内部にスペースがない?」

「中までみっしり金属で埋まっていて、全部くっついている。つまり、いくつかの部品を作って、それを組み立てたわけではない。あれらはもう、あの完成品の形で、ポンっと造られたようだ。つまり、あれがあのまま、一個の部品だ。つまり分解しようがない」

「……そんな機械が、あるのか?……あるか。じっさいジャバラがそうだということか。だとすると、敵のシュンビン、シチュウを捕獲してその技術をわれわれが応用するのは、無理か?」

「テクノロジーに開きがありすぎる」孔冥は不機嫌に口を尖らせた。「分解できないのだから、仕組みも分からん。どうにもならん」

「手詰まりということか」秀吉はおおきく嘆息した。「われわれはもう、絶滅を待つしかないのか……」

「ふうむ」

 孔冥はすこし考え、「あまり変な期待はさせたくないが……」

 といつになく、歯切れの悪いものいいをした。

「……もしかしたら、反撃の手がひとつ、ある……かもしれない」

 秀吉はどきりとして瞠目した。

 この天才科学者は、この期におよんで異星人に、反撃する方法を考えている。

 やはり、こいつは凄い。間違いなく、天才だ。


 そう思った。


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