4 町を、人々を守る!

「おー、大したもんだ」


 ユウスケは、手元のスクリーンでヘイタの打撃を分析している。


「打率の精度と飛距離が上がるばかりだこりゃ。

 甲子園に行き損ねた学校なだけあるな」


 こんな状況でよく落ち着き払っていられる。


「これも強化服の作用なんだろうか?」


 ルルウラ=レイに尋ねると、


「そうだね。短期間の訓練で、目的の動きの精度を上げることが可能なんだ」

「それは、狙いの精度も?」

「もちろん。銃撃でもかなり使えるようになるよ」

「よし、ヘイタ!」


 ユウスケが何か思い付いた。


「ちょっと、狙い通り打つの、意識してみて」

「狙い?」

「たとえば……母艦から右に三隻目の戦闘機」

「よっしゃ、ライト!」


 少し行きすぎた。

 右にかすめて、他機が撃ち落とした。

 ユウスケは落ち着いて、


「そんじゃ、次は左」


 球の中心をよくとらえ、まっすぐに目標へ向かう。


「ヒット!」

「よし。

 それじゃ次はね、」


 上、右上、左下、と、ユウスケの指示通りにヘイタは撃つ。


「よおし、調子に乗ってきた」


 母艦より撃たれる火球を見つめるうち、ヘイタの目には銃口の位置がくっきりと見えるようになっていた。これも強化服の性能なのか。


「ようし、そろそろ行ってみるか。

 ヘイタ」

「あいよ!」

「銃口目掛けて、ひとつやっちゃって!」


 とりわけ大きな火球がプラニスファー目掛けて飛んでくる。


「もらった!」


 ヘイタは、たしかに手応えを感じたのだが。


   * *


「何事?」


 ランダ=ガリアは、ついぞ聞いたことがなかった母艦の警報音を、まずは何かの間違いと思っていた。


「申し訳ありません、ランダ=ガリア様!」

「これは?」

「あ奴らの打撃を避けきれず!」

「なんだと?」


 何度も火球を地上目掛け撃ち込んだのは、寄せ集めの地球人が操るプラニスファーを、まずは消耗させるためであった。傷はつけたくないのだ。

 標的を〈星の湯〉としたのは成り行きで、とはいえはずみでつまらない町が燃え尽きてしまったとして、心が痛むわけもない。

 ガンダ=ガンダがそこに、


「強化服相手に同じ軌跡で撃ち込むことは、よい手ではなかったのでは?」


 まさか。

 今の今まで七つの地球も、強化服の存在も何も知らなかった未開の地球人が。


「……この短期間で、そこまで動きを高めたというのか?」

「同じ軌跡で撃ち込んだのはよくなかったですな。いい練習材料とされてしまった可能性」


 話し終わる前に、二度目の衝撃がきた。


   * *


「あっちゃあ、外した!」

「ドンマイ!」


 マモル、アオイ、ナミから声援が飛んでくる。


「敵さん、また来たよ」

「あいよ!」


 二度目の銃口狙い。


「よっしゃあ!」


 プラニスブレイドが火球をとらえる。

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