3 すべて返す!

「ほら、南の空がきれいに見える」


 服を着たマコトがフロントのシュウサクさんを表へ引っ張り出して、空を指さす。


「あれ?」


 人工衛星だろうか。チカチカと見えるものがある。


「飛行機かな」

「なんだろう」


 気が付くと周りでスマホを取り出し、撮影したり検索などをし始めてる人たちがいる。


「なにかなあ?」


   * *


「よっしゃあ!」

「投げ返せ!」


 ルルウラ=レイの言葉通り、受け止めた火球を母艦目掛けて投げる。


「なんだ、撃ち落とされたよ」

「それはそうだろう。なんせ、偉いんだろあの人たち。護るほうも必死だろうよ」

「でも、とりあえず、よっしゃあ!」

「よかった。うちの町内も銭湯も燃えなくて……」


 だが、それで終わらなかった。


「なにこれ?」


 火球はそれからあとも、次々地球に向かって投下されるのである。


「ルルウラ=レイ! なんかないの?」


 マニュアルが叩き込まれたといっても、応用が利くかどうかは別だ。


「プラニスブレイドを出して」

「剣か。

 そうだ、ヘイタ、お前高校までバッターだったよな?」


 マモルの案に、


「よし。交代」


 ユウスケの判断も出て、


「俺か。よし!」


 プラニスファーに、光の剣が備わった。


「右打ちでいいか?」

「どっちでもいいよ! とにかく打ち返して! 全部!」


 火球はあくまで〈星の湯〉を狙っているらしい。軌道が変わらないのはよいのだが、


「変化球が来る!」

「でも、一球も外しちゃだめ!」


   * *


「……驚いた。すべて返していますよ」


 母艦ではランダ=ガリアが高みの見物である。


「こちらに返された火球を打ち落とす弾が惜しいですな」

「みみっちい話を出さないことね」

「やはりプラニスファーの性能は……」

「いずれ我々側におさめるべきものだわね」


 そして、できればあの五人ごと。


「どうした幸運かしら?」


 ルルウラ=レイのいた地球を攻略するための作戦で重要とされたもののひとつに、プラニスファー適合者の暗殺があった。


「生き残りが、あの坊やひとりになってね」


 適合者の選抜には通常時間を要する。そこを突かれ、最終兵器であるはずのプラニスファーは、万全の働きができなくなった。

 それが、こんな。


「ひょっとして、こちらの地球人は」


 適合しやすい何らかの特性を備えているのか?

 七つの地球のうち、最も未開であるとされ、等閑視されていたのだが……


「一旦、引く」

「なんと?」

「こちらの地球人の特性につき、検討されていない部分が多い。

 利用価値の可能性につき、ひとつ大帝国に至急報告を」


 ランダ=ガリアはそうして一時退却を命じようとした。

 そのとき。


 母艦に衝撃が走り、けたたましく警報が響いた。


「何事?」

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