4 夏が終わる!:怪人ニンギョウアミモトあらわる!

1 ルルウラ=レイの探し物

「しまったなあ」


 ルルウラ=レイが、公園近くの森をうろうろしている。


「ここから最後の発信が来たと思ったんだけどなあ」


 先日。

 プラニスファーの格納先が決まるまで彼は定位置を離れられず、例のおもちゃのような義体で活動していた。

 マモルたちが危険を省みず守ってくれた、あのボールのようなロボットだ。

 今日、彼はその義体であることを試みていた。


(機動性を高めたつもりだったんだけど)


 もっと素早く動けるように。


(逃げ足速くしよう、って、そういうことなんだけどね)


 ところが。


「僕としたことが、まさか木にぶつけるなんて」


 おそらく破損したのだろう。

 早く回収して、修理しなければ。

 幸い最後のプラニスファーへの通信は完了しているので大帝国レムウルに追跡される恐れはない。


「あれ?」


 丸いものが落ちていたのだが。


「……何かの競技のボール?」


 正確にはサッカーボールを拾った。


「すみません」


 ユニフォームを着た子供たちに声をかけられる。


「やっと見つかった」

「君たちの?」


 青い髪に紫のキャップをかぶって、深緑のパーカーに砂色のハーフパンツ姿のルルウラ=レイではあったが、おそらくダンスを習っている子だと思われたようであまり驚かれなかった。


「そうなんです。森に入っちゃうと、なかなか見つからなくて」

「このあたりなんて下手するとゴミ置き場まで落ちて、今まで何個もなくしてるよな。なんでかすぐ下にゴミ置き場があるんだよな」

「そうか。見つかってよかったね」


 ルルウラ=レイはボールを返すと、走り出した。


「ゴミ置き場だって?」


 そこに転がり落ちていたら。


「回収されちゃう?」


 急いだ。

 坂道をかけ降り、星町高専が見えてくる。


「ゴミ置き場は……」


 かけ降りてすぐ右手にあった。


「あった」


 表側から見える損傷はほとんどなく、衝撃を受けたことにより内部に不具合が起こったようだ。


「逃げて!」

「え?」


 ほっとしていたところの背中に、声が飛んできた。


「危ないよ!」


 子供たちが大勢何かから逃げている。


(おもちゃ?)


 ロボット。戦闘機。ぬいぐるみ。

 みな、空を飛んで追いかけてくる。


「君のロボットは、まだ平気なんだね? でも気をつけて!」


 ルルウラ=レイもつられて義体をかかえ走っていると、五年生くらいの男の子が話しかけてきた。


「何があったの?」

「なんか、変な笑いかたするヤツが現れて、おもちゃに光を浴びせたら、この通りだよ」


 大帝国レムウルの怪人だ、と、ルルウラ=レイは察した。するとおもちゃをあやつるほかに……


「僕の弟なんて、さっきおもちゃ病院から戻ったばっかりの飛行機だったのに」


 泣きながら走っている男の子がいる。


「ひどい」


 ひどい。

 子供たちにこんなことを。

 ルルウラ=レイは、そっとプラニセイバーへ信号を発信した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る