オープニングⅡ

 冒険は中々始まらないゲーム本編、そんなオープニングの続きだ。


・無貌の女神の神殿


 集落から少し離れたオアシスの畔には大昔の石造りの神殿がある。

色々あって、色々な物が転がるこの場所は子供達の格好の遊び場だ。

僕も子供の時や子供達に誘われてよく遊んだものである。

 ただ、この神殿は普段は閉じられているんだ、鍵もお爺達が厳重に保管してあって盗んでこっそり忍び込む事も出来やしない。両扉には昔の英傑らしき彫刻がされてるけど、その出自だとか、何を象ったかもわからないし伝わっていない。

 でもまぁ、中を見た事が無い訳ではないよ、年に数回、なにかは定かではないけど慣習と言うか形骸化された祭礼を執り行う為に、中に入る事はある、その時の扉の音の酷さったらたまったもんじゃない、じつに物々しくいかにもと言った音だったね。

 そんな神殿の内部だけど、背筋が冷える程寒いんだ、オアシスの畔だからかな湿気も酷いし、内部は壊されたのをかつての先人が並々ならぬ信仰心の下に修繕したのだろうね、案外とあるきやすいんだ、よくもまぁと幼心にその執念に対して畏れを抱いたものだ、で、突き当りまで進むと彩色硝子ステンドグラスを背負った神像がお出迎えしてくれる。

 高さは父の数倍、でもその神像ってのはさ、フードを目深にかぶった姿に、顔部分は故意か作為的にかは分からないけど、彫刻が施されてないんだ、男か女か、老人か若者か、そんなのも分からない、実に不理解極まりない神像さ、まあ集落の習わしの言葉に「古の無貌の女神」とあるからには女神なんだろうけどね。

 僕はこの神像を始めてみた時に本能的な恐怖を感じ、破壊衝動を呼び起こされた。

あの不安は一体何だったのだろうか。

 だけどそれより僕を愕然とさせたのは、僕の親友にして二つ年上なのもあって兄と慕っていたエルフのニオ兄さん、その人が神像を見て暗澹あんたんたる喜悦きえつを浮かべていたんだ。

 直後、僕達を探して神殿に足を踏み入れていたのであろう最愛の妹マウアーの泣く声が聞こえた。


「マウアー、大丈夫、大丈夫だよ、なぁクロノ」

「…………あ! う、うん、大丈夫、大丈夫」


 あの時の大丈夫はマウアーに対してだったのか、それとも僕が、ニオ兄さんが何事も無く、いつものように溌溂とした思いやりにあふれた笑みを浮かべた姿に安堵した事を、自分に思わせる為に呟いた物だったのだろうか。あの時ニオ兄さんの顔に浮かんだ暗澹たる喜悦は、神殿が纏っていた異様な空気が見せた白昼夢だったのだろうか、それは分からない、いや、分かろうとしなったんだ。

 あれから月日が経ち、子供の頃の出来事はとっくに記憶に埋没した今日この頃、僕が片時も離れる事は無い、自らの骨を埋める場所はここだと決めた場所、そんな故郷から旅立たなければならない事件が起こるのだった。


以下次回! いつになったらゲーム本編が始まるんだって長さね。

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