十分に練り上げられたセカイは世界と区別がつかない!

 まず驚くのが、正確な科学的な考証に裏打ちされた異世界に関する考察であり、その異世界が「何」なのかという謎が物語をぐいぐいと引っ張っていく点です。

 6進法、形態学、万有引力、緯度の割り出し方、火山からの年代測定、各地の神話など、著者の教養の広さと深さ、それを物語として落とし込める力量に脱帽です。

 また、題材に東西世界をつなぐ要所であるアナトリアを持ってくる歴史的、地理的センスも素晴らしいです。読んでいる最中、イシュタルやアシェリアが確かにこの世界の延長として存在しているかのように感じました。

 また、ファンタジー要素の設定も論理がしっかりと立っており、できることとできないことの境界が分かりやすく、想像力を掻き立てるものでした。
 ただ、そうした点が垣間見え始めるのは10話を越えた辺りになるので、ぜひそこまで読み進めて欲しい物語です。

 ヒロインのアシェリアとの関係性は古き良きセカイ系の系譜でありながら、圧倒的なファンタジーに対して現代の洗練された科学的知識で立ち向かう異世界の系譜でもあり、「イセカイ系」と呼称したくなる新しい物語を描けています。

 序盤の異世界考証や中盤の異世界探訪、ラストの怒涛の展開も見事でした。

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