激しい戦いの後に訪れる心地いい休息という余韻

『ボックス!(下)』百田尚樹(講談社文庫)  


 これほどすぐに読みたくなる衝動に駆られる本も少ないのではないでしょうか。それが下巻です。恐らく上巻を読み終えた方なら下巻は間違いなく手に取るはず。これは断言しても良いです。


 短くて物足りない。あるいはシリーズ化されたかのように何巻も出て、長いだけで話に飽きてしまうということもない。いうなればちょうどいい長さとも言えるのではないでしょうか。


 ボクシングの話というと食いつきの悪い人もいるはずです。ましてや文章ですからね。映画や漫画のように映像や絵で見ることが出来ない分、文字でイメージするのは容易ではないと思うでしょう。それが不思議と読んでいるだけで絵が浮かんでくるんです。もちろん描かれているのは試合だけではありません。



 努力家の木樽優紀はそれまで運動音痴と思われたのが嘘のようにめきめき腕を上げて来る。これは本人も周りの人間ですら感じていることでもあった。親友で憧れでもあった鏑矢義平は無敗の六十二連勝というモンスターと称される稲村に勝つため階級をライトに変更する。


 木樽もライト級だった。国体予選の準決勝では鏑矢は全日本社会人チャンピオンの鍵谷と対戦。大口を叩いて注目を集める鍵谷に鏑矢は激怒し、リング外でもひと悶着を起こす。そして木樽の相手となったのは稲村だ。いつかは戦ってみたいと思っていた木樽は果敢に稲村に挑んでいき稲村からダウンを奪う。


 この辺りまで来るともうページを捲る手が止められない。互いのパンチや汗までもが見えるような気がします。そのため、正直なところ寝る前にはあまりお勧めできません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る