第15話

「セツ、おいちょっと待てよ‼︎何でだよ⁉︎何でいきなりんなことになってんだよ‼︎どうしたらいいんだ⁉︎どうしたら止められるんだ⁉︎」

 

 

 

 

 

 どんどん透ける範囲が広がっていくセツの前を、俺はウロウロした。

 

 

 

 

 

 どうしたって言うんだ。どうしたらいいって言うんだ。

 

 

 何かないのか?止める方法とか。

 

 

 てか、急すぎて頭がついていかない。

 

 

 パニクってるのにパニクってる間にもセツが。セツが透けていく。消えていく。だから余計にパニクってくる。

 

 

 

 

 

「セツ‼︎」

 

 

 

 

 

 名前を呼んだって仕方ないのに、何の言葉も出てこない。

 

 

 

 

 

 急にこんなの、絶対俺のせいだ。

 

 

 でも原因を追求したって今は仕方ないんだ。止める術を。何か。

 

 

 

 

 

「ごめんね、倫」

「ごめんじゃなくて‼︎なあ、どうやったら止められるんだよ‼︎なあ、セツ‼︎」

 

 

 

 

 

 泣けてくる。

 

 

 

 

 

 俺を助けたばかりに。

 

 

 俺に関わったばかりに。

 

 

 命を救ってもらって世話になった挙句にそのすべてをやってくれたセツが消えるなんて。

 

 

 おかしいだろ。意味が分からない。

 

 

 

 

 

「俺のせいでこんなの‼︎ダメだろ⁉︎セツ‼︎」

「倫のせいじゃないよ。僕………嬉しかった。倫とこうして話せて。少しだけだけど、触れられて」

 

 

 

 

 

 笑う。

 

 

 セツが笑う。キレイに笑う。

 

 

 

 

 

 泣きながら、笑いながら、俺に触れる。俺の頬に。透けた手で。

 

 

 でもその手の、多分冷たいだろう感触は、何もなくて。

 

 

 

 

 

「………セツ。セツ、セツ。………やだよ。………消えんなよ」

 

 

 

 

 

 触ったらダメだって思いつつも、引き止めたくて、抱き締めた。強く強く、抱き締めた。

 

 

 消えんなよって。抱き締めた。

 

 

 

 

 

 涙が、溢れた。

 

 

 ごめん。

 

 

 ごめんセツ。ごめんじゃ済まないけどごめん。

 

 

 俺のせいだ。俺が。

 

 

 

 

 

 俺が。

 

 

 

 

 

「………倫」

 

 

 

 

 

 穏やかな声。

 

 

 俺の名前ってそんな幸せそうに呼んでもらえるんだって、そんな声。

 

 

 

 

 

「倫が、好き。でも、忘れていいよ」

「セツ‼︎」

 

 

 

 

 

 そして触れる。一瞬だけ。

 

 

 セツの唇。

 

 

 

 

 

 それは、ひんやりと冷たい、唇だった。

 

 

 

 

 

「セツ‼︎」

「………さよなら」

 

 

 

 

 

 そしてセツは。

 

 

 そして、セツは。

 

 

 

 

 

 最後に最高にキレイに笑って。

 

 

 ひゅるりと吹いた風に。風と共に。

 

 

 

 

 

 ………消えた。

 

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