第6話 それから幾年……
※
それから幾年。
アスランの露店は敷地が横に二倍広がり、周りには板の囲いができていた。頭上には日光を遮る簡易な屋根まである。
今まで支払えなかった税を納めたことで、露店を永続的に設置する許可が下りたのだ。
これにより、設置と撤去の日課から解放されて、その分仕事にも精が出た。
近くの通りから、アスランの雇った客引きの声が間断なく聞こえてくる。
店の端に並べた椅子には、順番待ちのお客が数人座っている。
――今日はまだまだ忙しくなるぞ!
汗を拭く暇もなく働くアスランを見て『貧しき者である』と下視する者は、そうはいない。
仕事が軌道に乗ったおかげで、生活にも大分ゆとりが生まれていた。
兄を捜すだけの手掛かりも、色んな客から断片的に収集し、時には人伝から人伝に東奔西走して、それらしい纏まった情報に昇華させることができた。
すべての準備を整えたアスランは、家のドアを開ける。
「ワォ」
座った状態で背筋を伸ばしたクールが、今か今かとアスランを待ち伏せていた。
言葉は通じなくとも、日々のアスランから何かを感じ取っていたらしい。
「クール、行こう」
「ワォ!」
低く短く、そして今までにないくらい鋭く吠えて、クールはアスランに立ち並ぶ。
「兄さん……どんな姿になっていても必ず見つけるから」
※
お読みいただきありがとうございます。
アスラン主体のお話は一先ずここまでとなります。
次ページからは『踊り子のシルク』主体のお話になります。
アスランの兄については、他キャラ主体の話の中で少しずつ迫っていくつもりです。
ここまでで楽しんで頂けましたら、応援、レビュー、一言でもコメント戴けると嬉しいです。引き続きよろしくお願いします。
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