2015年2月4週①

「ねえ、ちーちゃん。」

「ん?」

「今日は何日か知ってる?」

「え?……何?」

「2月22日。」

「はあ。」

「あのちーちゃんが凄かった日から1年がたったよ?」

「あー、そんなこともあったねー。よく覚えてたね。で?はずかしめようって?」

「ん-、ちょっと違うんだけど。」

「ちょっと違う?」

「ちーちゃんじゃんけん負けたよね?」

「去年負けたせいであんなことになったね。」

「じゃなくて。」

「え?」

「今年も負けたよね?」

「いつ?」

「夜。」

「は?」

「今日になった瞬間に、ちーちゃんに『出さなきゃ負けよ』ってじゃんけんしたのに、ちーちゃん出さなかったから、負けだよ?」

「それ本気で言ってるの?」

「結構本気で言ってるよ?」

「ちなみに、負けた人は何をされるの?」

「去年みたいに猫が良いかなって思ったんだけど、去年結構激しかったから今年はそれを越えないとと思って。」

「は?」

「去年猫耳だったじゃん?」

「そうだね。あれも結構きつかったけどね。」

「あれを越えなきゃと思ってね。」

「頭悪い?」

「……。猫耳だけじゃなくて、首輪を用意してみました。」

「ちょっと、えぐくない?」

「でも、ちーちゃんがつけるならいいかなって。」

「…………。ちなみにだけどさ。あやちはじゃんけん何出したの?」

「え、グーだけど。」

「間違いじゃないね?グーだね?」

「え、うん。」

「絶対に間違いなんて言わないでね。」

「え、何?まって、ちーちゃん何用意してるの?」

「ちょっとうるさい!…………。えーっと。はい、動画送ったから見て。」

「え、なにこれ。」

「見たらわかる。」


『はい、こんにちは。かな?あやちと、未来のわたし。』

『今は21日の夜22時くらいです。』

『あ、2015年の2月の21日ね。証拠に。えーっと。なんだろ。あー、あやちのスマホが良いか。』

『はい、これがあやちのスマホのロック画面ね。日付見たよね?』

『で、何でこんな恥ずかしい動画撮ってるかっていうと、まあ使わないに越したことはないんだけど。』

『明日は憎き2月22日です。あの猫耳付けさせられた日から1年です。』

『別に仕返しってわけじゃないけど、最近あやちが強気に来るのでこういう予防線を張っておこうと思います。』

『もし、あやちが夜中にわたしの耳元で、出さなきゃ負けじゃんけんをしてきたらこれを出してることにしておきたいと思います。』

『ようするに、じゃんけんの予約ね。』

『メチャクチャしっかり日時指定してるんだから有効だよね?』

『あやちってこういう時のじゃんけんってグー出しがちだから、わたしはパーを出します。』

『もしあやちがじゃんけんなんて言わなかったら笑い話みたいに使えるけどね。予防線張り過ぎだって。』

『どのみち未来のわたしのためになるのか。』

『というわけで、もしじゃんけんしてたら、あやち頑張ってねー。たぶんあやちの負けだから。』

『おやすみー!』


「ということです。」

「え?」

「さあ、猫耳カチューシャと首輪を。」

「えー!そんなことあるー!?」

「わたしの方がびっくりだよ?ホントにこれが使えることになるとはね。」

「あのー、お互い様的な感じでさ。今年は無しにしない?」

「それは虫が良すぎないかな、あやち?」

「あー。えーっと。」

「さ、つけようねー。」

「…………。」

「あ、あとで、追加のアクセサリーもあるから。楽しみにしていてね。」

「…………。にゃん。」




「さあ、今日一日はわたしのペットとして過ごしてもらおうか、あやちネコ。」

「にゃ、にゃー。」

「もしかして恥ずかしがってない?」

「そんなこと、ないよ?」

「ないよ?」

「ないにゃん?」

「よし、お利口だね。あやちは。ご褒美は何してあげようかなー。」

「ご褒美?」

「チョコを口移しするか、キスするか、ポッキーゲームするか。」

「それ全部キスじゃん!」

「ん?」

「あー、えーっと、キスじゃんにゃん。」

「それ語尾の使い方あってる?」

「わかんないにゃん。でもメチャクチャ言いにくいにゃん。」

「それが去年のわたしの苦労だね。しっかり味わって、来年はこんなことしないようにしないとね。しつけだね。」

「にゃーん。」

「でさ、猫ってさ、服着ないじゃん?」

「え、ちょっ!?」

「部屋の温度上げてあげるから裸になってごらん?」

「さすがにそれは。」

「嫌とかあるんだ?猫なのに?」

「猫でも好き嫌いくらいあるじゃん!」

「普通の猫は服なんて嫌がると思うけど。」

「えーっと、……。そう!家猫で、ずっと服を着させられてる猫なの!だから服を着てるのが当たり前になってる猫なの!」

「ふーん。じゃあ、嫌でも服脱ぎたくなるくらいに部屋の温度上げとくね。」

「え!」

「わたしは大丈夫。保冷剤とかアイスノンで暑さをしのぐから。」

「ちーちゃんって、鬼だよね?」

「もともとはあやちが仕掛けてきたことだけどね?あと、語尾が取れてるよ?」

「にゃーん!」

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