2014年12月4週②
「はい、クリスマスプレゼント。」
「え、今!?これ!?」
「いま。これ。」
「え、だって、今は、わたしプレゼント渡せない。」
「後でいいよ?でもあやちは今渡さないと意味ないから。」
「……。ありがと。」
「どう?」
「……。わたしのキャラじゃないよね?」
「もー!そうじゃなくて! ……どう?」
「どうって……。ありがと。」
「そうでもなくてー!……。着けてられる?」
「あー。……。うん。これくらいなら邪魔にならないかも。」
「苦労したんだからね!ちゃんとポイントになってて、小さめの、ちーちゃんの好みに合いそうなペンダント探すの!」
「ありがと。で、この花って?」
「すずらん。5月の花だから。」
「へー。」
「もー、ちーちゃんは鈍いよね。」
「そんなことないよ?」
「先月ペンダントのことほのめかして。今日胸元が出まくってるドレス着させられて。それで気づかないんだから。」
「いや、わかんなくない?」
「分かる人は分かると思うよ?」
えー。
わたし、鈍いのかなあ。
あんまりそういう認識ないんだけど……。
「ねえ、ちーちゃん!あやちにも何か選んで?」
「えっ。……。あやちはどういうのが良いの?」
「いつもつけてないような奴。」
「ん-。ちょっと待ってて。」
「はーい!」
どうしよっかな。
あやちだって普段着けてないけど。
たまに見るのは、落ち着いた感じの、ちょうどあやちが買ってくれた感じの、ペンダントネックレスだから。
それじゃない感じのが良い?
でも、あやちっぽくないよね……。
色は?
やっぱりピンク系が多いよねー。
じゃあ、青系とか?緑系とか?寒色系?
「すいません?青系のパワーストーンを使ってるペンダントありますか?」
「青系?」
「青が良いと言いますか、寒色系が良いと言いますか……。普段あの子が選ばなさそうな色なんで、逆に良いかなって。」
「んー。あの子の誕生月はいつなの?」
「7月です。」
「じゃあ、アクアマリンが良いわね。」
「どんなのですか?」
「7月の誕生石なの。えーっとね、このあたりのやつね。透明感が強いものから、白っぽいクリーム色っぽいものまで。どれがいい?」
「透明感がある方が。」
「じゃあこの3つくらいかしら。青の強さに差があるわね。」
「ありがとうございます。」
「よし、あやち。目瞑ってて。」
「やだ。見てる!」
「えー、恥ずかしいんだけど。」
「恥ずかしがってるちーちゃん見てたいの!」
「……。はいはい。じゃあつけるね。」
「……。なにこれ?」
「アクアマリンだって。7月の誕生石。」
「……。ちょっと色付いてる?」
「本当は青系なんだけどね。アクアマリン自体は。でもこれは一番青みが薄いやつ。」
「へー。うん、いいかも。」
「気に入ってくれた?」
「ちーちゃんが選んだやつだから!」
「いや、そうじゃなくてさ。」
「青系もいいね!今度買ってね!」
「……。はいはい。」
「はい、ちーちゃん!写真撮るよ!」
「は、はい!」
「……。ちーちゃん?エロいよ?」
「あやちがこうさせたんでしょ!」
「いや、そんな目で見られたら。」
「もー!」
「ねえ、ちーちゃん。」
「なに!」
「一枚だけでいいから、エロい表情してみて?」
「エロい表情って何よ?」
「キスしてるときの顔?」
「ちょっ!」
「……。キスする?」
「は!?ちょっ!今はっ!」
「今は?」
「あっ、いやっ、そのっ!」
「……。したいんだ?」
「したくないもんっ!」
「はいはい。ちーちゃんは可愛いねー。」
「あー!またばかにしたー!」
「おしかったねー。」
「おしかったっていうか、多分あそこ、予約してたんだよね?」
「当たり前じゃん!」
「……。ごめん。」
「また落ち込む!もういいの!ちーちゃんが予約してくれてたって嬉しさの方が強いから良いの!」
「でも。」
「いいから!せっかくちーちゃんが予約したディナーが冷めちゃうよ?」
「うん。」
ドレス着ながらディナーなんて予定があったらしい。
でも、わたしたちなら絶対汚してたよね……。
むしろ安心できたかも。
「でも、凄いとこ見つけたね。こんなクリスマスになるとは思ってなかったよ?」
「ごめんね?」
「なんでそうやってすぐ謝るの?あやちは嬉しいんだよ?こんなところあやちは見つけられなかったから。」
「……。良かった。」
「でも、ここって。こんなコースできるの?」
「ううん、普段やってないって。」
「え!」
「電話したら「『なんとか友達をもてなしたくて!』っておしゃってましたよね?」、ちょっ!?」
「えっ?」
「あら、お邪魔しちゃってごめんなさいね。でも、電話口であんな風に言われちゃったらこっちも腕を振るうしかないわよ?」
「ありがとうございます。……。あの、ご迷惑じゃなかったですか?」
「迷惑かけられた後で言われても、困るわよ?」
「ご、ごめんなさい。」
「だから。」
「え?」
「絶対に成功させなさい?」
「……。」
「ちーちゃん?どんなサプライズするつもりなの?」
「さ、サプライズ?」
「サプライズ。するんでしょ?今の感じだと。」
「…………。する。」
「ここで?」
「ここで。」
「じゃあ、ゆっくり待ってるね。」
「……。うん。」
「あ、お姉さん。あやち、甘い弱めのお酒ください。」
「そうねー。柑橘系?ベリー系?それとも何かほかに好きな果物ある?」
「ベリー系で!」
「そう、分かったわ。あなたは?」
「……。わたしは、強めのベリー系で。」
「はーい。」
「じゃあ、食べよ、ちーちゃん!」
「うん。」
「お姉さん、いただきます!」
「ええ、楽しんでね。」
絶対あの人、わたしで遊んでるなー。
これも迷惑料ってことかなー。
やられてしまった。
…………。
お店に着いたときに気づいたけど、ここ『レズビアンバー』って。
そんなバーあるんだねー。
『学生に優しいバー』ってまとめのページを見てたはずなんだけど……。
…………。
そりゃ、相談も親身に聞いてくれたよね。
……。
あやちとのことも根掘り葉掘りされたけど……。
あ!
『学生レズビアンに優しいバー』か?
あー、なるほど。
こわ。
…………。
どうしよ。
いつ渡そう。
リップ。
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