豚肉と白菜の重ね蒸し

 ぐい、にゅー、と伸びるいぬ。

 あの子の帰りをお待ちかねだ。

 ぐい、にゅー、と増えるわかめ。

 こちらもあの子をお待ちかね。ほどほどのところで水から引き上げてやる。


 おなべの中に、豚肉と白菜を重ねて、お酒をちょっと入れてやる。だしのもとはお好みで少し。

 あとは蓋をしてコトコトと。白菜がくったりして豚肉に火が通るまで放っておくのだ。


 いぬは、キッチンをうろつきにきた。

 だけど、結局玄関でおすわり。あの子が来るのはそろそろだろうか。


 お味噌汁はとうふとわかめで。

 おこめもせっかくだから、時間を合わせて炊いておく。炊きたてごはんはそれだけでうれしい。

 切ったきゅうりに塩を揉みこんで。


「ただいまー」

「おかえり」


 お米が炊けて少しあと。

 あの子が帰ってくる。

 いぬは、ちぎれんばかりにしっぽをふって、玄関のあの子に飛びついている。

 あの子がくすぐったそうに笑っている。


 ほやほや湯気たつ、白菜と豚肉の簡単重ね蒸し。

 あの子の帰りを待って、なべからたっぷりよそってあげる。

 炊きたてごはんに、豆腐とわかめの味噌汁。きゅうりの塩もみを添えて。


 つかれたよーと伸びるあの子。

 いぬは、大きなあくびをしている。


「いただきます」

「めしあがれ」


 おゆはんを食べるあの子を眺める。

 ほっと一息つけていたら良い。

 今日も一日おつかれさま。

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