八. 誓

かいり

「えっ──何……ミ、ミルクが喋ったあ──」

「浬、ボクはたった今、言葉をもらったみたい」

「ミルク、どうしたんだよ? 俺、夢でも見てんのかあ?」

 猫が突然話しかけたりしたら、そりゃあ驚く。

「落ち着いて聞いて、浬。ボクの本当の能力。本当はずっと人の話す言葉を理解していたんだ。それは生まれた時からずっと。猫だから話す言葉がもてなかっただけ。君のことも理解している」

「それ、ほんとなのか?」

 夢でも見てるんだよな、と全く信じられない様子の浬。

「いきなりで信じられなくてもいい。でも聞いて、浬。ボクは君に伝えなければいけない」

 浬はダラリとしていた体を起こした。

「浬にこうして言葉で伝えるために、ボクはこの世に生を受けたように思う。ボクを助けてくれた萌音ちゃん家族との出会いだって偶然なんかじゃなくて必然だったんだ」

「ミルク」

「萌音ちゃんは浬のことを大切に想ってる。君のことが大好きだよ」

「萌音も俺のことを──」

 ごくりと唾を飲み込む音がした。

「そうさ、浬。だからもっと自分を偽らないで自信を持って。君は君でいていいんだよ。他の誰にも染まらなくていい。萌音ちゃんは、そのままの君が大好きなんだからさ」


 浬は言葉をもったボクを抱きあげる。

 君が正気に戻った時、ボクが話した記憶は消えてしまうかもしれない。

 君はこうして、ありがとうって何度もボクに囁いてくれたのだからそれでいい。




 ──ボクは目覚めると浬の布団の中にいた。

 浬はまだ夢の中にいるようだ。


「……ん、ミルク。起きてたんだ。おはよ」

「ニャアア(今起きた)」

「よく眠れたか?」

「ニャアア(いえす)」

「それにしても不思議な夢だったなあ。しかもリアル過ぎた。夜、ミルクにあんな話したからかな。お前、言葉話すんだもんな。驚いたぜー」

浬、覚えていてくれた。夢を見たと思ってるようだけど。

「俺、萌音に気持ち伝えることに決めた。だから、ありがとなミルク」


 ボクの頭を優しく撫でる。つい気持ちよくて耳を横にたたみ目を細めた。もっともっと──って、浬におねだりしたくなった。
















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