七. 恋

「俺さ、ほんとは萌音のこと好きなんだ」


 驚きの告白によって、ボクのうっすらピンク色の両耳がピクンと動く。

 いつから好きになってたのか、萌音のことばっか考える──と頭を抱える浬。


「気づいたら、あいつのこと意識してたんだよ。

 萌音、俺の気持ちに気づいてるのかな、どうなんだろ。

 萌音に聞きたいし知りたいし、たまらなくなる。

 でもこんな俺見せたくないから、萌音や友達の前では無理して平気な顔してさあ。

 俺、バカだよな。情けない所、好きな子に見せたくないから隠すとかって。

 萌音は、あいつは優しい。

 小さい頃からそうだったんだぜ、ミルク。

 ひとつしかないお菓子さ、自分も食べたいのに俺に全部くれるんだ。

 自分のことより人のことばっか気にして世話焼いて。

 そんな萌音に当たり前みたいに甘えて。だから俺のこと世話の焼けるめんどくせー奴、とかしか思ってないだろーな。

 萌音、いつも笑ってるけど家で泣いてる時もあるんじゃないかなって。

 ミルクは萌音が泣いてるところ見たことあるだろ?

 ……って言っても分かんないか。

 萌音はさ、俺のことどう思ってるのかな。

 好き──だと嬉しいけど。

 他に好きな奴とかいたら俺、失恋確定だな。

 ミルク。俺、今苦しい。

 人を好きになるって、こんなにも苦しいのか?

 恋ってこんなに苦しいのか?

 ずっとこのまま苦しいままなのかな、ミルク」


 浬の心の叫びを聞いた。

 こんなにも顔を歪める表情の浬、見たことがない。

 ボクは大きな間違いを犯していたと気づく。

 浬は決して恋を知らなかったわけではない。

 むしろ恋に焦がれて溺れてしまうくらいに恋を知っていたんだ。

 浬はボクに助けを求めている。

 助けたい。

 でもどうやって?

 何か伝える方法はないのか。


 ──おりひめさまと、ひこぼしさま。

 どうかボクに言葉を与えて下さい。

 今だけでいい。

 今、浬に伝えたい。

 どうかボクらに夢を見させて下さい──







突然目の前に雷鳴とともに閃光が走る。

何も見えない。

ただ光だけがそこにあった。

浬はそこにいるのか?

だがボクは以前にも触れたことのある温もりを感じていた。









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