第41話
4人はギャル2人を自分たちの仲間にしようと説得している。
でも、その説得も長くは続かないだろうと直感していた。
どちらにしても6人ともすでに洗脳状態にあり、繁殖機であるのだ。
理性を保つ戦いはいつか破たんする。
「クラスなんて関係ない。あたしたちは自分の女王様を信じる」
ギャルがそう言い、敵へ向けて唾を吐きかけた。
吐きかけられた方は頬についた唾に絶叫する。
「早く洗い流せ! 感染するぞ!」
慌ててトイレへ駈け込むが、絶叫は聞こえ続けている。
どうやらすでに感染している生徒も再び感染するみたいだ。
となると、何度でも感染した人間にとっての女王様が入れ替わると言うことだろうか。
そうやって、自分の勢力を伸ばしていくのかもしれない。
「くそ! こうなったら無理矢理にでも仲間にしてやる! アイリさんから、仲間にして戻ってくるように言われてるんだ!」
男子生徒がギャルの体を押し倒す。
砂ほこりが舞う中、二人の唇が荒々しく重なるのを見た。
ここにいちゃいけない……。
不意にそんな恐怖心が湧いて来て、あたしはカバンを胸に抱きかかえるようにして公園から逃げ出した。
公園内からは言い争いの声がまだ聞こえてきている。
あたしはその声から耳を塞ぎたくなる思いで走ったのだった。
☆☆☆
公園から随分と離れた頃、あたしは学校の近くまで来ていた。
方向を気にせず走っていたからついここまで来てしまったみたいだ。
灰色の校舎を見上げるといろんな窓から生徒たちが行き来している姿が見えた。
スマホで時間を確認してみると、ちょうど休憩時間だ。
自然と2年A組のクラスの窓へと視線を向ける。
今日もみんな大西さんの机に群がっているのだろう。
窓から見える生徒の姿はほとんどなかった。
もう二度と、前みたいなクラスに戻る事はないんだろうか……。
そんな思いが過ってチクリと胸が痛む。
校舎から目を背けて歩き出そうとしたときだった。
1人の女子生徒が昇降口から出て来るのが見えて、視線を向けた。
「え、ヒナ……?」
あたしは驚いて目を見開き、口をポカンと開けてヒナを見つめた。
ヒナの後ろからは遊星がついてくる。
ヒナは今日休んだんじゃなかったのか?
そう思うが、よく思い出してみれば休む決断をしたのはあたしと柊真だけだと気が付いた。
ヒナはそのことについてなにも言っていなかったのだ。
ヒナはたったひとり、洗脳されたあの教室に入っていたのことになる。
嫌な予感がして咄嗟にヒナと遊星の後を追い掛けた。
追い掛けながらスマホを操作し、柊真に電話を入れる。
『もしもし?』
気だるそうな柊真の声が聞こえて来る。
「柊真! 今すぐ学校に来て!」
あたしの叫びに柊真が『どうした?』と真剣な声色できいてきた。
「ヒナが一人で登校してたみたい! 今校舎裏に向かってる!」
あたしはそれだけ言うと電話を切った。
「ヒナ!」
後ろからそう声をかけるとヒナはビクリと体を震わせて立ち止まった。
そして、ゆっくりとこちらを振り返る。
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