♯13:足き伝導。


     †


 水墨画で殴り書きしたような漆黒の炎を纏う——巨大な蜘蛛。


「——デカ……!」


 脳がバグったのかと思うほどの、大きさ。

 この蜘蛛は、人間ひとの感情や記憶などに干渉た〝蠧魚シミ〟が具現化したモノ。


 本来ならこの世界にはあるはずのないモノ。


 蜘蛛といえば——

 タランチュラや熱帯のジャングル的な場所に巣喰う、やたら脚の長いやつなどもいるが、いくら大きいと言えどその多くが手のひらサイズだ。


 ちいさな蜘蛛が家に出ただけで大騒ぎするひとだっているのに、この禍々しい巨体に異様な風態。


「ヤバ……ッ」


 無意識に足がすくむ。


 㐂嵜さんが百六十センチくらいだとすると、この蜘蛛は三、四メートルはある。

 それが㐂嵜さんの身体を突き破って出てきたように見えたのだから、なんとも縮尺がおかしすぎる。


 やはり〝蠧魚〟はこの世ならざるモノなのだ。


「コイツが〝糸〟の正体」


 いやでも目に映る禍々しく巨大な蜘蛛。


〝糸〟と〝蜘蛛〟は組み合わせとしては分かりやすいイメージの具現化だ。


 最初期は、平埜さんから伸びる〝糸〟そのものが、〝蠧魚〟であると考えらた。


 しかし、ヒバナが、


「今回の蠧魚は自堕落なヤツで〝糸〟だけをこっち側に伸ばしてきてるとしたら」


 と気づいた。


 だとすると、〝糸〟は平埜さんから伸びているのではなく、平埜さんにくっついている。


 平埜さんから〝糸〟が伸びているとするなら、蠧魚が記憶や想いを喰らい寄生しているのは、平埜さん本人である。が、


 蠧魚の本体はまだあっち側にいて、〝糸〟だけをこちらの世界に送りこんできているのなら、宿主は——㐂嵜さんの可能性がある。


 ここまではヒバナと僕の仮説。


 そのため正体を注意深く探り、こっち側へ引きずり出すために魔法陣を描いて結界を張ったのだが、たいへん大がかりでなんとも派手な仕様になってしまったのだ。


 蠧魚は人間の感情や記憶など目に見えないモノに干渉する。


 だから、㐂嵜さんと平埜さんが強烈な印象を持つように派手な舞台を用意したし、非情にふたりの感情を思い切り上下左右縦横ななめに振り回し乱しまくった。

 こうして〝蠧魚〟の本体をあっち側から引きずり出すことに成功はした。

 したが、結果的に、ふたりの感情を弄ぶような状況になってしまったのは反省すべき点だ。


「でも、反省するのはまだだ」


 まだ、仮説が証明されただけ。


「結局、これだと平埜さんか㐂嵜さんのどっちが宿主か分からないな」


〝糸〟はふたりから出ていた。

 というか、ふたりは〝糸〟でつながっていた。


 それが意味すること。

 それが、ふたりを蠧魚から解き放つカギになるのではないか。


「ふたりともに〝糸〟が干渉してたんなら、どうして〝糸〟は㐂嵜さんにだけ見えて、平埜さんには見えてなかったんだ?」


 考える。


 ここでヒバナの言葉が思い出される。


「ひとは見たいモノを見たいように見る」


 㐂嵜さんは〝糸〟を見ていた。

 平埜さんに〝糸〟があるように見た。


 それが〝蠧魚〟の影響で、可視化され具現化した。


「でも、それが平埜さんには見えてなかった」


 㐂嵜さんがそれを見ようとしたから㐂嵜さんに見えてた。

 本来はそこに存在しないモノだった?

 でも、それだと流石に見えないモノが視えるヒバナにも可視化は不可能だ。

 見えないだと、そこに無いのは違う。


「だったら、どういう……——」


 そういえば、平埜さんからヒバナが〝糸〟を抜いたとき。


「返して」


 と言っていた。


 ゾンビのようになってしまっていたから、本能だけで自分を支配していた〝糸〟を求めたのかもしれない。


「ん? 支配していた糸? 支配していた意図?」


 僕は腕に抱えた平埜さんを見て、そして㐂嵜さんを見た。


 巨大な蜘蛛が、㐂嵜さんの身体の上に鎮座している。


 㐂嵜さんの身体がバカデカい図体に押し潰されないのは、重さという概念みたいなモノを〝蠧魚〟が人間から取りこんでいないからだ。


 つまりたとえば、僕が〝蠧魚〟の干渉を受けた宿主だとする。

 頭に、その蜘蛛の図体のデカさに比例した重さについて思い浮かべた時点で、すぐに〝蜘蛛アレ〟が重さを得るのである。


 繰り返しになるが、僕らが〝蠧魚シミ〟と呼ぶ〝アレ〟は、ひとの感情や想い、記憶など目に見えないモノに干渉する。

 そして、その姿は、宿主や周囲の人間の感情や記憶を読み取って具現化されるのだ。

 ようするに、巨大な蜘蛛の姿は、㐂嵜さん、または平埜さんの感情や記憶によって形成されたということになる。


 そして、


「蜘蛛の姿には意味がある」


 僕はそう思った。


 蜘蛛は、やけに鋭く長すぎる脚を折りたたんで、たったいま脱皮してカラダを脱ぎ捨てたように、じっとしていた。


 対峙するヒバナをやけに警戒しているようにも見える。


 巨大な漆黒の蜘蛛が、図体に似合った非常にゆっくりゆったりとした動きで脚を広げた。

 㐂嵜さんの身体の上から、地面へと脚を下ろす。


 途端、どぉおん、と重さを感じさせる音と地響きが、地面を伝って僕の脚を震わせた。


 地面に降りた途端、質量と重量を感じさせるなんて。


「僕がそうやって見たから?」


 僕自身が重量と質量を巨大な蜘蛛に感じたから。

 だとしたら、僕も〝糸〟の干渉を受けていることになる。


 ふと、足もとを見た。


 魔法陣の結界の薄紫色の淡い輝きに隠れて、黒い光が何本も走っているのに気づく。


「〝糸〟!?」


 無数の〝糸〟が地面を張っていた。


「コレって、蜘蛛の巣か」


 巨大な蜘蛛は具現化し、こっちの世界に出現すると同時に『蜘蛛の巣』を魔法陣の空間に張りめぐらしていたのだ。


 それに気づくのが遅れた僕は、急に焦り出した。

 いまさら、焦ったとしてもどうしようもないのに。


 僕が気づいてることは、もうすでにヒバナも気づいてるはずだ。


 ヒバナの、その手にはまだ、鈍い黒い光を発する〝糸〟がしっかりにぎられていた。


 蜘蛛の出現に呼応して〝糸〟は、元気を増してニョロニョロとうごいている。

 たいへんキモチがワルかった。


 しかしカノジョはまるで動じることなく、巨大な蜘蛛を観察するように、薄紫色の瞳を淡く輝かせる。


 僕にはカノジョの背中が大きく大きく見えて、緊張感と恐怖感と高揚感といろんな感情がないまぜになったせいで、


「ヒバナぁ〜〜っ!」


 僕は用もなく考えになく反射的にカノジョの名を叫んでしまった。

 ヒバナはとても花車きゃしゃだけど、その立ち姿にはもう頼りがいしかない。


「え、なにー?」


 が、場を支配する張り詰めた緊張感とはかけ離れた、ひどくゆるい表情と声でヒバナが振り返った。


 巨大な蜘蛛に背を向けて。


 まさにその瞬間とき——


 蜘蛛が音もなく動いた。


 僕が呼びかけてしまったせいで、ヒバナに隙ができてしまった。


 巨体が水中のクラゲのような動きで、ふわりと浮かび上がる。


「ヒバナ! うしろうしろ!」


 と呼びかけるも、もう遅い。


 すでに、巨大な蜘蛛の身体はヒバナの頭上にあった。


 結界の天井スレスレまで飛び上がった巨体が、突然重さを取り戻したように重力に導かれ、即座に地上への降下を開始した。


 鋭く尖った八本の脚がヒバナを襲う。



 ——どぉぉぉおぉぉん!


 鈍く派手な音が鼓膜を打ち破ろうとする。

 巨大な蜘蛛に押し潰された空気と地面が爆煙と衝撃波を発生させる。


 僕は平埜さんを庇いつつ、その場に伏せた。


「——ヒバナ!?」


 爆風が駆け抜けてすぐ顔を上げた。

 ヒバナの姿を探したが、巻き上がった土煙で一メートル先ですら視界が失われた。


 ところが、である。


「ミサキ、呼んだ——?」


 すぐ傍で、ヒバナの声が鳴った。


 あまりに近くにヒバナの顔があったので、


「おおぅ!?」


 びっくりしてのけぞってしまう。

 さらに驚ろかされたのは、


「ミサキ、こっちもよろしく!」


 言って、ヒバナがひょいと投げてよこした。


「ちょ! ぐへぇ!」


 それを僕のぺらぺらの貧弱な身体では受け止めきれなかった。

 砂糖ザラメがパンパンに入った袋どころではかった。


 だって、それは人間ひとひとりだったんだから!


 ヒバナが僕に放ってきたのは、㐂嵜さんだ……!


 数秒で巨大な蜘蛛のボディプレスをくぐり抜けて、十メートルをダッシュして倒れていた㐂嵜さんを抱えて、そこから二十メートルほど離れた僕のところまでやってきたというのだ。


「……すごすぎっ!」


 興奮で鼻息を荒くしたが、


「はいはい、これくらいでいちいち驚かないの!」


 ヒバナにたしなめられてしまった。

 まだまだこれからってことか。


「はい!」

「ふたりは?」


 反省してる間もなく、ヒバナにふたりの様子を訊ねられる。


 すぐに㐂嵜さんと平埜さんの状態を確かめる。


「ケガはしてないみたいだけど、ふたりとも意識が……」


 完全に意識がないのか、朦朧としているのか、この状態では分からなかった。


「大丈夫だといいんだけど……」


 ふたりの呼吸と体温を感じる。

 同時になんともなさけない気持ちになる。


 いま僕はふたりのことを心配するしかできなかった。


「どうする、ミサキ」


 としかし今度はヒバナが僕に訊ねてきた。


「ど、どうするって?」


 なぜ、ヒバナが僕に訊いたのか、すぐには分からなかった。

 なにもできずにいる無能の僕に。


「ミサキはどうしたい?」


 もう一度、ヒバナが問う。


「と言われましても?」


 ワケが分からずただ丁寧に返した。


「こんなときにボケてんの?」


 こんなときにプッとヒバナが吹き出した。


「ミサキがやりたいと思うことをやればいいんだよ」


 ヒバナが言う。

 いつになく優しい声だった。


 巨大な蜘蛛に襲われてる最中じゃなければ、僕は泣いちゃったかもしれません。


 と、その刹那、


 巨体が音もなく動き出した。

 再び、巨大な蜘蛛が宙を舞う。


「ヒッ!」


 僕が悲鳴を上げる前に、


「——ひとがまだ話してる途中でしょーがッッ!」


 ヒバナは蜘蛛に向くやいなや、こぶしを振るっていた。


 そして、その拳は——特大だった。


 結界内を飛びかう薄紫色の粒子が発光した。

 かと思うと、ヒバナの右腕に集まり出し、蜘蛛の巨体に匹敵する大きな大きな『拳』を形成する。


 ヒバナは、光をまといし特大の拳を振り下ろしたのだ。


 ズゴァァァオァァァァァァァアン。


 と派手な音を立てて、巨大な蜘蛛が地面に叩きつけられる。

 蜘蛛が突撃してくるのを逆に空中で叩き落とした!


 巨大な蜘蛛が風に吹かれるゴミ袋くらいやすやすと転がる

 魔法陣の障壁に激突した瞬間、


 バリバリバリバリッッッ!


 巨大な蜘蛛と障壁に漆黒と薄紫のスパークが同時に起こった。


 蜘蛛はスパークの衝撃にのか、そそくさと障壁から離れたる。


 その巨体と禍々しい姿に似つかわしくない妙にコミカルな動きを「かわいいな」とか、不覚にも思ってしまったんだけど。


 体勢を立て直し再びヒバナへ向き直った巨大な蜘蛛の——異形の姿容すがたかたちに、自分のゆるい感想をすぐさま撤回した。


 蜘蛛はヒバナへの敵意を放出するみたいに、漆黒の巨体を炎のごとくゆらめかす。

 異様な空気がピリピリと泡立ち皮膚を刺激した。


 蜘蛛は巨体を揺らし、前方の脚を高々と上げた。

 動物や虫によくある自分を大きく見せる威嚇行動に似ていた。


 ただコイツはもう十分すぎるくらいにデカイ。

 逆に、巨大な蜘蛛と化した〝蠧魚シミ〟は、それほどまでヒバナを『脅威』の対象としてるということかもしれない。


 そして、その敵意はすぐにカタチとなって、吐き出されることとなった。


「……ん!?」


 一瞬めまいがしたのかと思った。


 違う。


 巨大な蜘蛛の漆黒の輪郭が陽炎カゲロウのように揺らいだのだ。

 同時に、その揺らぎは実際にドクンドクンと鼓動となり地面を揺らした。


 ギギギギギギギギギギギギギギギギギギッ!


 蜘蛛が空気を軋ませ啼いた。

 と次の瞬間、


 蜘蛛の口あたりから、巨体を形成する漆黒と同じ闇色のカタマリが飛び出してきた。


 蜘蛛の巨体よりもひと回りほどちいさいが、それでも直径が二、三メートルはある。

 まるで漆黒の〝糸〟でできた球体だった。


「伏せて!」


 ヒバナが言う。


 その声で反射的に僕は、㐂嵜さんと平埜さんに覆いかぶさり地面に伏せた。


「よっこらショーイチ!」


 元気いっぱい声に出しながら、ヒバナが両手を縦に広げて前に突き出す。

 広げた両手を時計と反対周りに半回転させながら、頭上に掲げた。


 刹那、結界内に充満した宙を舞う薄紫色の粒子が反応し、頭上に直径三メートル弱の魔法円サークルが出現した。


 直後、目の前を黒く炎耀かがやくスパークが走る。

 ゼロコンマ何秒か遅れて、激しい落雷のような爆発音が鳴った。


 間近で鳴った爆音に鼓膜がブチ破れそうだった。


 そんな爆発と爆音にさらされながらも僕らが無傷だった。


 もちろんヒバナのおかげ。


 たったいまヒバナが出現させた魔法円は、《防盾シールド》だった。

 蜘蛛が吐き出した〝糸〟の球が到達する前に、シールドを展開して僕らを守ってくれたのだ。


 シールドに弾かれた〝糸〟は、先ほどの爆発と爆音を発生させたあと、グチャッグチャッとひどく耳障りの悪い音を発しながら地面に飛び散って霧散していった。


「ふつう蜘蛛は爆弾なんか吐き出さないよねぇ」


 あきれたふうにヒバナが僕に言った。


「だね。でも〝蠧魚アレ〟に常識を求めるのは難しいよ」


 やたらカラカラの喉に唾を飲みこみ、僕は声を詰まらせながら返した。

 アレがたとえ人間の感情や想いを喰らってカタチを得ているとしても、。


容形すがたカタチが似ているだけのまったくのバッタモンだわ、やっぱ。って、蜘蛛なのにバッタはややこしい」


 ひとりごちてヒバナが、いつものひっひっひっひと似合わない奇妙な笑い方をした。


 ヒバナのいうバッタは昆虫のバッタではなく、『偽物』『紛い物』『粗悪品』などで使われる『ばった』の意味。

 そもそも『ばった』は偽物ではなく、正規品ではない物や安売り投げ売りの品のことをあらわすらしいが、言葉の意味は常に変わっていくものである。


 こんなときに場違いではあるが、そのくだらないジョークとヒバナの変わらぬ調子にすこしだけ、ほんのすこしだけだけど、ほっとした。


 それも束の間。


「——追撃もいっちょ、くるよ!」


 ヒバナが言う。

 巨大な蜘蛛が脚を上げ、黒い〝糸〟の塊を放出してきた。


 ヒバナが再び頭上にシールドを展開する。


 僕もふたりに覆いかぶさった。

 僕のひ弱な身体は肉の盾としては申し訳程度。

 黒い塊が直撃したらひとたまりもない。


 それほどの炸裂破裂爆発スパークが爆音で入り乱れる。


 耳も塞がず鼓膜をくれてやる覚悟だった。

 たとえ僕の体がベニヤ板ほどの防御力しかないとしても、ちょっとでも衝撃を減らすことができれば!


 軍や警察が使うスタングレネードのような強烈な爆音のせいで、ひどい耳鳴りが襲ってくる……!

 眩暈がして一瞬意識が遠いた。


「————……ッ!」


 ヒバナが僕に向かってなにか叫んでいる。

 けど、まるで聴こえない。


 とヒバナは、一瞬シールドを解いた。

 僕のほうに向いて、なにかを放ってよこす。


 今度は、土嚢のごときザラメでも人間でもなく、


「——……?」


 軽かった。

 軽すぎて、ヒバナがなにをしたのか、もしくは、なにかをしようとしたのか分からなかったくらいだ。


「ん?」


 しかし、


 ヒバナの声が聴こえてきた。


「——ミサキ、イケてる?」


 なにがイケてるのかイケてないのか、分からないが、はっかりとカノジョの声が聴こえてきたのだ。


 と同時に、黒い塊が飛んでくるのが視界のなかに入ってきた。


 糸の塊に見える爆弾である。

 一発目よりもデカイ塊だ。


 それも一発、二発と連発してきた。


 もはや蜘蛛というか蜘蛛のカタチをした大砲である。


 展開されたシールドに黒い〝糸〟の塊が着弾し、その爆風と爆音ですべての音という音がかき消される。


「——どすこいっ!」


 しかしやっぱりヒバナの声だけがやけにはっきりと聞こえた。


 と、すぐに衝撃と音の波が身体にずしりとのしかかってきた。

 振動した空気が、肌どころか骨身をぎしぎし軋ませる。

 内臓をエグり出されるような気持ち悪さが襲いかかってくる。


 またも意識が遠のきそうになった。


「——しっかりしろ、ミサキ!」


 その声で、一瞬にして意識が引き戻された。


「……なんで?」


 やっぱり聴こえる。

 ヒバナの声だけが。


 僕は呆けた顔をして、ヒバナが両手を天空にかかげシールドを展開するその背中を見つめてしまった。


「こんなのただの時間稼ぎだから!」


 ヒバナの声が言う。


 声がはっきりしすぎているというか、イヤホンで聴いてるみたいな、

 むしろ、耳の奥で、頭のなかに、声が心に直接語りかけてくるような。


 テレパシーというものがあるのなら、まさにこんな感じかもしれないと思った。


 ということは、である。

 ヒバナがそんな能力を持っているとしたら?


「まさか、ほんとにテレパシー!? いつのまにそんな能力チカラが、」


 僕の知らないヒバナの能力があってもおかしくはない。

 きょう、魔法陣を発動して結界を作ったのもそう。

 自分の能力の引き出しがいくつあるのか不明だと、カノジョ自身が以前漏らしていたのを聞いたことがあった。


 がしかし——


「テレパシー違うし」


 ヒバナの声が、僕の考えを即時否定した。


「いや、違うんかい……!」


 僕はツッコミ返してしまう。


「じゃあこのテレパスはなんなの!?」


 ヒバナは、巨大蜘蛛が放つ黒い〝糸〟の塊が、途切れたタイミングで振り返る。


「それだよ、それ」


 だと言うヒバナの声が聴こえてきた。

 ヒバナの唇がまったく動かないのにである。


「やっぱ、テレパス!?」


 僕が混乱していると、しかしカノジョは蜘蛛が投じようとしている次弾に備えて、僕から視線を外してしまった。


 仕方なく、


「それ、とは?」


 一瞬こっちに振り返ったヒバナの視線をたどって僕は〝それ〟とやらを探してみることにした。


 で、


 意外とすぐ見つかった。


「え? もしかして、」


 ——〝それ〟って、


 ——〝コレ〟のこと!?


〝それ〟は僕の、


 お腹のあたりでウネウネしていた。


ヒルみたく血でも吸うように。


「いやーっ!」


 声が出た。


 コレってアレじゃん!


「てか、〝糸〟じゃん!?」


 まさに〝それ〟とは〝コレ〟のことだった。


「そ、そういえば、ヒバナが平埜さんから引っこ抜いて〝糸〟が見当たらない……! ってことは、僕のお腹にっついて侵入はいってこようとしてるこのウネウネは、間違いなく〝糸〟だッッ!!」


「——ちょ! ミサキ、さっきからうっさ! そんな大声出さないで!」


「あ。ご、ごめん!」


 咄嗟に謝った。

 どうやら、この〝糸〟を通して、声を出しても出さなくても意思がヒバナに伝わっているようだ。

 心のままに雄叫おたけんだのが、ヒバナに爆音で届いてしまっていたらしい。


 どういう理屈か分からないけど……!


「コレ、こんなことに使っても大丈夫!?」


 である。


 これはこれで問題ではないのか。


「この〝糸〟が原因で、㐂嵜さんは不可思議なレファレンスに相談してきたのに!?」


 そもそもの要因は〝コイツ〟だ。


 それをこんなふうに意思疎通の手段として二次利用してしまっている。


 僕にブッ刺して。


「だいじょぶっしょ!」


 蜘蛛が飛ばしてくる爆破属性の黒い糸の塊をシールドで弾き飛ばしながら、ヒバナが返した。


「だって、こうやって話できてるし。よくない?」


「いや、まあ、それはそうなんだけど……」


 僕の聞きたい本懐ことはべつなのだけれども。


「じゃあ詳しい話はあと!」


 ヒバナの声が爆発の音にも負けず、はっきりと頭のなかに直接響いた。

 それにしたがって考えるのを一旦停止した。


「と言いつつ。このままこうしてるだけじゃ、詰む」


 ヒバナが言った。

 このままシールドで爆弾を受けつづけるのは、


「フルパワーであと二分って感じだから、それ以上はどうなるか」


 ヒバナの能力チカラをただ浪費するだけになる。


「あと、二分……」


 あと二分もある。

 と考えるより、あと二分しかないという焦りが僕を支配しようとする。


「まあ。あっちは、一分もあれば余裕かな」


 としかし、ヒバナの自信に満ちた声が頭のなかに鳴る。


「そっか!」


 ヒバナがそう言うならきっとそうなのだ!


 でも、


「ん? いま『あっちは』って言った?」


 あっち、って?

 

 ヒバナの視線の先。


 あっちには、巨大な蜘蛛がいる。


「ってなワケで、そっちは任せた」


 ヒバナが言った。

 僕に。


「そっち? っていうと?」


 僕は自分の周囲を見回す。


「あ、うん! もちろん、ふたりのことは任せて!」


 僕にはヒバナのようなチカラはないけど、


 身を賭して、ふたりを護ると誓う。

 この肉体が爆発とともに飛び散ろうとも……!


「——いや、そうなんだけど。ちょっと違うよ、ミサキ」


 しかし、ヒバナの苦笑いが〝糸〟を通して、伝わってくる。


「……え、違、う、の?」


 そう違った。


『そっち』はふたりのことで間違いない。


 でも『そっちは任せた』の『任せた』は、ちょっと意味が違ってたんだ。


「ミサキ、あたしたちはなんのためにこんなことしてる?」

「ふたりが〝蠧魚〟の影響下から抜け出して、自分たちの『解答』にたどり着けるように」


 ヒバナの問いに返した。


「そうだよ、ミサキ。〝蠧魚〟が化けただけのでっかい蜘蛛をブッ倒したとして。それで解決じゃないでしょ」

「うん」


 そうだ。


「ふたりが答えを見つける。僕らはその手伝いをするだけ」


 僕は言った。

 僕の答えは必要ない。


 不可思議なレファレンスの相談者である㐂嵜さん、そして、平埜さんが、


 ふたりが答えが見つけられるように。


「——だよねー」


 ヒバナが僕の返しに満面の笑みを浮かべた。


 その間も蜘蛛が吐き出す糸塊爆弾を平気で防ぎながら。


 爆発音がもはや、遠くでなる花火のように聴こえる。

 耳がやられすぎてるというのもあるし、ヒバナがシールドで軽減してくれてるのもあるだろう。


 でも、爆音とシールドにぶつかって、散っていく糸の破片がやっぱり花火のようにも見えてきた。


 それは、この世の終わりのような、ひどくうつくしい光景だった。


「じゃあ、あらためて——」

「はい」

「そっちは任せる」

「うん」


 あらためてヒバナが僕に『そっち』を任命した。


「任せられた……!」


 でも、いったい僕はなにをすれば?」


 僕がいい返事をしたわりに、きょとんと間の抜けた顔してたからでしょうか。


 ヒバナはやれやれと苦笑する。


「だから〝コレ〟を使うんだって」


 言ってヒバナが、シールドの展開を止めた。

 こっちに振り返りつつ、なにか手でもぞもぞとやっている。


「ヒバナ?」


 シールドを解除してるときに蜘蛛が爆弾を飛ばしてこないか不安だったが、それ以上に、


 ぶちぶちぶちぶちぅ。


 耳障りが悪すぎる音がした。


 ヒバナは〝糸〟を引きちぎっていた。


 それを飴細工みたいに伸ばしたり重ねたりして、


「はい。コレ、使って。はぁと」


 聴診器みたいにした黒光する〝糸〟を渡してきた。


「んにぃ、なばんばなの!」


 びっくりしすぎて噛んだ。


「聴診器みたいにした黒光〝糸〟で、僕になにをしろというんだ!?」


 僕の頭のなかの声が直接鳴る。

 まだヒバナと僕も〝糸〟でつながれていた。


「だから、おっきな声出さないで」


 むっとした顔でヒバナは言った。

 でもすぐに僕に背を向ける。


「しゃー!」


 そして、飛んできた糸塊爆弾を跳ね返す。


 そう。

 爆発させずにボールを打ち返すみたいに、爆弾を巨大な蜘蛛に向けて跳ね返したんだ。


 跳ね返った爆弾は、蜘蛛のもとに戻って、


 爆発した。


 予想外だったのか自分で吐き出した糸塊爆弾の反撃を受けて、失神KOされたみたく地面に這いつくばった。


「よし、いまのうち」

「ヒバナ、あんなのできるんだったら最初からやって」

「できるかな、っていま思ってやってみたら、できた」

「ああそうなんだ、すごい天才じゃん」


 不毛な会話だった。


「それよか、」

「それより、」


 ヒバナと僕がおなじタイミングでしゃべり出してカブった。


「さっすがミサキ。気が合うね」

「ありがと。じゃなく。それより、コレでなにをどうすればいいの?」


 僕は渡された黒光〝糸〟聴診器を目の前に持ち上げる。


「この〝糸〟、人間ひとの意志や思考とかに干渉するでしょ?」

「みたい、だね」

「それを逆に利用して、ふたりの心のなかに——入る」


 ヒバナが言った。


 僕はぎょっとした。


 そんなこと——


「で、でも、〝糸〟のせいで、ふたりはこんな目にあってしまったのに……。それを使ってふたりの意識に入るなんて……やっていいことなの……?」

「ほんと真面目で素直だよね、ミサキは」


 とヒバナはちいさく笑った。

 とてもやさしい表情で。


「ま、ミサキのそういうトコ嫌いじゃないよ。いやいや、むしろ好きかな」

「な、なにを言って!?」

「こんなのいつも想ってるよ。信用してる。信頼してる。いつだって言葉にも出してるでしょ」


 そういえば、ヒバナはこんな〝糸〟につながれてなくても心の声がダダ漏れなひと——じゃなくて、正直すぎるひとだ。

 冗談も多くて、ちょっとどう受け取っていいやら分からないこともあるけどさ。


「ミサキならできる。ううん、ミサキだからできるんだよ」


 ヒバナがまっすぐに僕を見て、そう言ってくれた。


 こんな異様な状況じゃなかったら、僕はたぶん、泣いちゃってたな。


「うん、やってみる!」


 僕は決心した。


 こうすることが最善の方法かは、分からない。


 自分なんて無能で無用で無意味な存在だとかつて何度も思っていた。

 いまでもちょっと思ってる。


 だけど、ヒバナが言ってくれた。

 

 僕だからできる。


 僕だからできることがあるのなら、


「ヒバナが信じてくれる僕なら、僕も信じてみるよ」


「そうこなくっちゃ」


 すると、ヒバナは、僕のつながった自分の腹部にっついてる黒光した〝糸〟を手につかんだ。


「こっちの〝糸〟にあたしのチカラをこめてあるから、先に渡したほうと合体させて」


 たしかによくみると黒光しつつも、うっすらヒバナの紫色の光を帯びているようだ。


「合体って?」

「合体はロマン」

「うん。じゃなく」

「はいはい。もうそろそろ、蜘蛛あっちが起きてきそうだから、手短に」

「うん」

「二股になってるほう、さきっぽをミサキのこめかみにっつけて、」

「こ、こう?」

「そう。つぎに反対側の尖端をふたりのどっちかにっつけ、」

「うん、じゃ、じゃあ、すみません。㐂嵜さんから」


 他意はない。

 ただ、相談してきてくれたひとだからという。


「そしたら、ミサキとつながってる〝糸〟をあたしから外して、渡したほうと合体させる」

「くっつければいいの?」

「どこでもとりあえず勝手にくっつくはず。元は一本の〝糸〟だし」

「で?」

「最後に、おトモダチのほうにっつける。そして、あとは意識を集中」

「それで?」

「あとは、いつもみたく行き当たりばったりの出たとこ勝負よ」


 ヒバナはひどく簡単に言った。


 僕はあまり勝負なんかしてなくて、ほぼヒバナがやってることだけど。


「分かった!」


 時間がないので、僕はうなずく。

 決心は固まってるのだ。


「あたしのほう、〝糸〟を抜いたらこの会話できなるからね」

「あ、そっか……っ」

「じゃあ、抜くよ」

「……お、お願いします」

「なにかしこまっ……——」


 プツリと聞こえた気がして、ヒバナの声が聴こえなくなった。


 キーン……、と遠くで耳鳴りだけがしてる。


 ヒバナが自分から抜いた〝糸〟を無言で僕に渡してきた。


 実際は唇が動いていたけど、聴こえないだけだ。


 読唇術があるワケじゃないけど、たぶん。


 ヒバナはこんな感じで言ってたんじゃないか。


「——ほいじゃ、ま、あたしは、あっちを」


 そして、ニパーッと笑った。


「——ヒバナ!」


 僕は自分の声がちゃんと発声されたのかすら、あまり聴こえなかった。

 だからか、僕の声には振り返らず、カノジョは地面を蹴った。


 全身から淡い薄紫色の微粒子をほとばしらせ、ヒバナは宙に舞い上がる。


 自分の放った爆弾で反撃され、ノックアウトしてた巨大な蜘蛛が立ち上がろうとしている。


 その姿は生まれたての子鹿のようによたよたと、しかし確実に敵意をヒバナに向けていた。


 巨大な蜘蛛との距離は、数メートル以上あった。

 しかし先に動いたヒバナは一瞬にして、距離を詰めていた。


〝糸〟の塊を吐き出す態勢に入った蜘蛛の頭上に躍り出る。

 さっきまでとは逆の構図。


「よっこらしょーぃ!」


 たぶん、いつもみたく気の抜けたかけ声で、でも超絶強力な一撃を巨大な蜘蛛に見舞った。


 ヒバナは両手を組んで、それをハンマーのように振り下ろす。


「——ギャリックハンマー!!」


 とヒバナが勝手に呼んでる技である。


 薄紫色の閃光が走り、刹那、巨大な蜘蛛の複眼が配置された頭部をハンマーが打ち抜いた。


「すごっ」


 もう心の声も自分の声も聴こえないが、僕はうっかりつぶやいていた。


 ギャリックハンマー、エグい威力である。


 ヒバナ以外には『オルテガハンマー』または『ベジータがよくやるアレ』と通称されている技だそう。

 ギャリックハンマーのギャリックはガーリックつまりニンニクのこと。


 ちなみにプロレスには『ダブルスレッジハンマー』という類似技があるそうだ。


 ヒバナらしい分かるような分からないネーミングセンスだけど、その威力は絶大。


 三メートルほどの巨大な蜘蛛の体躯がへしゃげて地面に突っ伏す。


 さらに追撃を浴びせる。


 着地するやいなや地面を蹴って、また空宙ちゅうへ。

 体操選手のようにひねりを加えて縦に横に回転する。

 一回転二回転三回転四回転五回転六回転……目にも止まらぬ速度で回転する。

 それが渦を巻き起こした。


 その渦に魔法陣内を満たす薄紫色の粒子が吸いこまれていく。

 やがて渦は大きな大きな『スパイラルステージドリル』と化して、


 ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅるるるるる!


 と巨大な蜘蛛の腹のあたりにブチこまれた。


 巨体が回転し、地面に沈みこんでいく。


「なんかコレってアレだ!」


 語彙力がガバガバになるほど、圧倒的にバカバカしい現実の光景だった。


 でも、


 淡い薄紫色の光をまとうヒバナの姿が圧倒的に神々しく、輝かしく、そして、ひどく綺麗だった。


 思わず、見惚みとれてしまう。


 と、ヒバナがドデカい蜘蛛を足蹴にしながら、こっちに向かってなにか言っている。


 まったく聴こえないが、ボディランゲージで僕に伝えてくる。


「はやく、しろ? あ!? はい! そうでした! 見入ってる場合じゃなかったです!!」


 すぐさま、われに返った。


「よし!」


 僕はヒバナから受け取った自分の腹のなかにっついてる〝糸〟に手をかけた。


 ずるずるという感覚がお腹から脳に伝わってくる。

 たぶん〝糸〟が僕の記憶から具現化した感覚の再現だから、なかば擬似的な感覚である。

 だけど、痛みはないがくすぐったくて、むず痒いなんとも気味の悪い感じが長くつづいた。


「キモいとかいまはどうでもいいや:」


 自分から引っこ抜いたそれの尖端を、ヒバナが作った聴診器もどきに合体させる。


「くっついた!」


 磁石のS極とN極が引き合うように、すんなり〝糸〟と聴診器もどきが合体した。


 と、〝糸〟のほうから、聴診器もどきのほうにも、ヒバナが込めた薄紫色の輝きが伝わっていく。



 僕は計一メートルほどになった〝糸〟を両手でにぎる。


 よく考えてみると、


「空中に浮いてたときは、もっと長くてぶっとかったような?」


 ヒバナが引きちぎったとしたら、残りはどこに?


「いま、考えることじゃない……!」


 頭を振る。

 ひとってどうして最優先にしなきゃいけない物事があるとき、べつのことを考えてしまうのだろう。


 気になるけど、僕は僕がやるべきことを果たそう。


 横たわったふたり——㐂嵜さんと平埜さんを交互に目をやった。


「ごめんなさい……!」


 手のなかの〝糸〟の尖端を、片方を平埜さんに近づける。


 今度は「待ってました!」とばかりに〝糸〟が平埜さんの首もとに潜りこんでいった。


 戻っていったというふうにも言えるのだろうか。


 ためしに、ぐいっと引っ張ってみる。

 平埜さんの首あたりに抵抗感があった。


 うまくっついたらしい。


「よしっ。……よしじゃない、ほんとごめんなさい」


 意識のないひとになんてことをしてるんだととてつもない自己嫌悪が襲ってきた。


「ふたりの想いをつなげる……!」


 そのための〝糸〟のはずだ。


 この〝糸〟はもともと、平埜さんだけじゃなく、㐂嵜さんにもつながっていた。


 この〝糸〟は〝蠧魚〟が具現化したモノ。

 で、どうやら寄生した人間の感受性とか周囲から受ける影響を増幅する装置にもなっている。

 で、その感情やらをあっち側、蠧魚にとっての安全地帯から喰らっていた。

 と考えられる。


 ヒバナはその性質を利用して、簡易的に僕との意思疎通に使ってみせた。

 手本を見せるみたく。


「さあ、あとは、やってみるだけだ……!」


 誰に言うでもない、自分自身に向けて言った。


「やればできる!」


 僕は、㐂嵜さんと平埜さんをつなげてる〝糸〟を、聴診器もどきを両手でつかんだ。


 黒く発光する〝糸〟がヒバナの薄紫色の光に完全に変わっていく。


 目を閉じる。


 こめかみあたりに意識を集中する。


〝糸〟がつながった部分に痛みはない。

 じわりと温かさを感じる。

 それはきっとヒバナの温もりだ。


 温もりにつつまれた。


 途端、


 目の前が真っ白になった。

 もしかすると真っ暗だったのかもしれない。


 意識がなにかに、何処かに吸いこまれていった。



 そしたら、


 誰かの『声』が聴こえたような気がした。



 記憶が巻き戻る。

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