7.京都駅

 最終の新幹線の発車のベルが鳴った。

 

 僕はあれから瑠香を探してまわった。だけど、瑠香の姿はどこにも見当たらなかった。僕は瑠香の電話番号を聞いておかなかったことを後悔した。


 そして、いま僕は東京行の本日最終の新幹線に乗って、ぼんやりとホームを眺めている。


 ベルが鳴り終わると、新幹線はゆっくりとホームを出て行った。


 そのときだ。僕は人気ひとけのないホームに瑠香の姿を見た気がした。赤い服の瑠香・・らしい女性はホームの一番端で新幹線に手を振っていた。思わず僕は座席から立ち上がった。座席の横の窓に顔をつけてホームを凝視した。


 赤い服が・・あっという間に窓の向こうに飛んでいった。


 あれは、あれは瑠香だったのだろうか?


 また、僕の眼に涙が浮かんできた。僕は涙にくもる眼で、窓の外に流れていく灯火を眺めていた。灯火のオレンジ色が次々と僕の顔の上を流れていった。


 常寂光寺で生まれた僕の恋は、こうして常寂光寺に消えた。


 短い僕の旅が終わった。


                  了

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常寂光寺の恋 永嶋良一 @azuki-takuan

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