第4話

scene4 八雲先生


和かな笑みを浮かべた先生。

私に軽く会釈をして、近くのカウンターに座りました。

 

「この子、先生のとこの学生さんだって」


「あゝ、あなたは。先ほど校門にいましたね」


「はい。でもどうしてそれを?」


「だって物珍しそうに僕を見ていたでしょ」


そういうなり、悪戯っぽく笑った先生。


思わず顔が赤くなる私。


「先生はね、うちのカフェのオーナーさんなのよ」


「オーナー?」

  

「いえいえ、おいしいお昼に、おいしい夜。二食もいただいてますからね。私のほうがお世話になっていますよ」


「もちつもたれつなのよねー」


コロコロと笑う店長さん。

店長さんが私に尋ねます。


「えーっと何ちゃんだっけ?」


「日本史学科、山上瑠璃子です」


「瑠璃ちゃんね。そういや瑠璃ちゃん、あなた仕送りは充分?アルバイトは決めた?」


「へっ?決めて、、ないです」


「じゃあさ、うちでバイトする?」


「はい?」


突然のことにびっくりする私。


「時給は格安、でも授業に合わせて時間も融通しよう!しかも昼と夜の賄い付き!どうだ!」


「いやナナ君、今どきそんなブラックでは、、」


八雲先生が笑って言いますが。


「はい、お願いします」


立ち上がって頭を下げて、即答した私です。


「おぉ〜!交渉成立ね。

改めまして。カフェ神楽坂の店長兼料理長兼お掃除係のあたしはナナ、あっちはオーナー兼瑠璃ちゃんとこの八雲先生よ」


「さっきも言われましたけど、先生がオーナー?」


「そう、行く宛がなくってたまたま迷いこんだわたしを拾ってくれたが、先生。

先生はここの2階に住んでるのよ」


「ここは前のオーナーが私の友人でしてね。田舎に帰る彼が、わたしに託したのがこのお店なんですよ。で、そのとき、偶然にもお店にいたのがナナさん。」


「そう、今の瑠璃ちゃんみたいにね。たまたまタイミングが素晴らしく良かったのよねー。私を雇いませんか?っていきなり言っちゃったんだから」


コロコロと笑うナナさん。


「いえいえ、おかげで賑やかなお店をやってもらってますし、しかも賄い付きですから、わたしのほうこそ感謝してますよ」


八雲先生が笑います。

大きなカボチャを頬ばりながら、


「今日のシチューも抜群だ」


と。


「では、山上瑠璃子くん。学校でもお店でもよろしくお願いしますね」


「はい。こちらこそよろしくお願いします。先生?オーナー?」


「いや、そこは先生でしょ」


ナナさんが笑います。

釣られて先生も、私も笑いました。


こうしてカフェ神楽坂のアルバイト兼先生のお手伝いという私の立ち位置が決まったのでした。

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